プレゼント
朝の日差しを浴びながら掃除をしていると、ギルドの扉がノックされた。
私はそばにいたバルドさんとともに
慎重に確認してドアを開けるとお届け物だった。
持ってきてくれた男性は昨日ギルドに来ていた人だった。
「僕は、将来芸術家志願だからこれを書いてみたんです!」
"依頼者と、自分自身を幸せにするために"
"ダンジョン探索では賄えない需要も補います!"
そんな文字が書かれた立派な自立する2つの立て札だった。
しっかりとして、かつ丸みを帯びた優雅な木材に
中央の木の板が黒く塗装されており、
文字が彫り込んである部分だけ白で塗ってあるものだ。
こっそり足の所に"ゲイジャー・ボロム"と刻まれていて
いい森の香りがする。
「あの、これをタダでお渡しするので使ってくれませんか?」
男は私たちを見ながら笑顔で話した。
打算もあるのかもしれないけれど、それにしては文字に力が…。
バルドさんは違う視点で見ていたらしく
驚いたように確認する。
「おいおいおいおおい!これ、いいのか?木の値段は…」
バルドさんは意外とお金に細かいのかもしれない。
後で聞いたら1看板300クランは下らないらしい。そんなに…!
「ええ、あの瞬間へのラブレターみたいなものですから。
一応そこそこの家で人生経験のためにギルドには来ていますから
お金の心配はいりません。」
ら、らぶれたー!!私があれを言った瞬間への…?
思わず胸が熱くなる、自分に対してではないのに。
「それに、ここがもっと繁盛していた頃は治安が良かった気がするんです。
だからこのギルドにはもっと頑張ってほしくて…。」
また、腕輪が鳴動した。
諦神さんに関連することだからかもしれない。
「あの、ゲイジャーボロムさんでいいんですよね!」
「はい、今後ともよろしく!」
そうして、男の人は去っていった…といってもまた始業後に仕事を探すらしい。
このギルドがもし本当にガーネス町の治安に関わっているとしたら…
ギルドを盛り立てるだけでもみんなへの恩返しになるかも!
私たちは看板について、リーファさんに相談した。
「治安も心配だし、それぞれ室内に置きましょう!」
"ダンジョン探索では賄えない需要も補います!"
片方は依頼者カウンター側に。
"依頼者と、自分自身を幸せにするために"
片方は冒険者カウンター側に。
レンさんもリーファさんも、ギルドがさらに明るくなったと喜んでいた。
みんなくらいつらい出来事の後なのに、もう前を向いている。
私も、頑張るぞ!
そうして私たちのギルドの次の業務が始まろうとしていた…。




