ホテルでの食事と就寝
テーブルの上には小さな油ランプが置かれ、
心許ない炎が部屋を薄暗く照らしていた。
油の匂いがかすかに漂い、壁の隅は闇に沈んでいる。
窓は格子状になっておりここは治安が悪いんだなと改めて感じさせた。
ベッドに座っているとおばあさんが塩のかかったパンと芋と煮沸したという水持ってきた。
「ここは郊外だからね、川の水だけど、ちゃんと煮沸しておいたから安心して飲みな。」
水を飲み、パンと芋を手づかみで食べる。
素朴ではあるが動いた後だからか妙に後を引くおいしさがあった。
食べ終わると、またおばあさんが来てナイフを手渡ししてくれた。
短い片刃のシンプルな柄が付いたナイフだった。
てっきり食べる用のナイフだと思って、今は大丈夫ですと話した。
しかしおばあさんは首を振り、胆力のある笑顔をして
ナイフの利用法を教えてくれた。
「はぁっはっは、そのナイフはね。
寝る前に枕元に置いて、泥棒が来たら掲げてやりなさい。
月の光でナイフが輝いて逃げるからさ…」
部屋の明かりとそのおばあさんの顔、
何より月光を浴びて光るナイフの迫力に
私はただ頷くしかできなかった…。
寝る前に、日葵は口を漱いで残った水を飲みこんだ。
バッグを抱えてナイフを枕元に置き、深い眠りについた。




