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5. 王家主催のパーティー


 ──国王と王妃を交えて話し合ったあの日から、1か月が経った。


 今日は王家主催のパーティーが開かれる日であり、ヴィオレット達は朝から王宮に向かう準備に追われていた。


「……よし、これで大丈夫ですね。とても素敵です、お嬢様。」


 リリィは鏡の前に立つヴィオレットの姿を確認すると、満足そうに呟いた。

 今日のヴィオレットは、普段と違い式典用のスーツを着用している。

 王妃様直々に『今日のパーティーは男装姿で出席しても良いですからね。ヴィオレットちゃんとビアンカの婚約発表も兼ねていますから、貴方達らしい姿で是非参加して欲しいの。』と言われてしまったからには妥協はしないと決めていた。

 長い菫色の髪の毛は、お気に入りの白いリボンでポニーテールにした。

 今日の為に王家から届けられたスーツは、美しい白色に淡い黄緑色の刺繍が施されている。

 ビアンカの髪と瞳の色をイメージして作られた、ヴィオレットの為の特注品だ。

 ヴィオレットはそのことに気がつくと、胸の奥がきゅんと熱くなっていくのを感じていた。


(ビアンカ様に早く会いたい……。)


 ヴィオレットは逸る気持ちを何とか抑えつつ、部屋を出て両親の元へと向かう。ドアを軽くノックして入室すると、笑顔の2人が出迎えてくれた。


「お父様、お母様、王宮へ向かう準備が出来ました。」

「おお、ヴィオレット!よく似合っているじゃないか。」

「本当に素敵なスーツね。ヴィオレット、とてもかっこいいわよ!ビアンカ様の隣に並ぶのが今から楽しみね。」


 両親は口々に彼女を褒めると、ヴィオレットの手を優しく握って口を開いた。


「さあ、そろそろ馬車へ向かわないと。皆が待っているぞ。」

「はい、お父様。」


 ヴィオレットの返事を確認すると、家族全員で玄関ホールへ向かった。

 そこで馬車の準備を整えて待機していた使用人達に見送られながら、彼女達はビアンカの待つ王宮へと向かって行った。



 王宮に到着し早速招待状を門番に見せると、ヴィオレット達はすぐにビアンカの元へと案内された。


「ビアンカ様、ごきげんよう。」

「やぁ、ヴィオレット。それにサンセール侯爵夫妻、おはよう御座います。」


 ヴィオレットはドレス姿のビアンカに見惚れつつ挨拶をした。

 白い髪の毛はまっすぐに下ろしてあり、彼の動きに合わせてさらさらと靡いている。

 ドレスは美麗な菫色で、所々に薄赤紫の小さな宝石が散りばめられていた。

 紛れもない、ヴィオレットの髪と瞳の色だ。そのことに気がついたヴィオレットは思わず満面の笑みを浮かべた。

 ビアンカもヴィオレットの姿を目にするなり、嬉しそうな表情に変化した。


「やはりそのスーツを選んで正解だった。ヴィオレットにとても良く似合っているよ。」

「ありがとうございます、ビアンカ様のドレス姿もとても綺麗で素敵です。」

「ふふっ、そうかい?嬉しいな。」


 ビアンカは少し照れくさそうに微笑む。

 そんな彼にヴィオレットは小さな声で尋ねた。


「ところで、ネグロ様…はどちらにいらっしゃるのですか?」

「ああ、兄上なら……ローズ子爵令嬢と共に別室で待機しているよ。パーティーが始まるまでの間に邪魔されても困るからね。」


 ビアンカは以前馬車で送ってくれた時のように、パチンとウインクをするとヴィオレットにだけ聞こえるように囁いた。


「ヴィオレット、今日のパーティーで兄上達を嫉妬させるついでに一泡吹かせてしまおうか。」

「ビアンカ様……」


 彼の悪戯っぽい笑顔につられて、ヴィオレットもくすっと笑う。


「ええ、そうですね。」


 ビアンカはヴィオレットの言葉を聞いて満足そうに笑うと、会場入りまでの間ヴィオレットの両親達も交えて談笑を楽しんだ。

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