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4.王家の一員に

◆昨日はお出かけに行っていた為、更新出来ませんでした。すみません…!

なので本日はこの話以外にもう1話、20時に更新します。よろしくお願いします。


 翌朝


 ヴィオレットは両親と共に馬車に乗り込むと、ビアンカの住む離宮へと向かった。

 王都の中でも特に奥まった場所にあるその離宮は、王族とその関係者しか立ち入ることが許されていない場所であり、普段から厳しい監視が敷かれている。


「ここがビアンカ様のお住まいになられている離宮なのですね……。」


 初めて訪れる場所にヴィオレットは少し緊張していた。

 そんなヴィオレットに気がついたのか、父であるヘブンリーは彼女の肩に手を置き優しく語りかけた。


「大丈夫だよ、ヴィオレット。話はしっかりと通っているし、きっと殿下もお待ちになっているだろう。」

「はい、お父様。」


 ヴィオレットは小さく深呼吸をする。

 そして両親と3人揃って離宮の扉の前へ到着すると、すぐに出迎えの使用人がやってきた。


「ようこそおいで下さいました、サンセール侯爵ご一家様。どうぞこちらへ。」


 使用人の案内に従い、ヴィオレット達は客間へと向かう。使用人がノックをしてから客間の扉を開くと、そこには既にビアンカとその両親である国王陛下、王妃殿下の姿があった。

 ビアンカは扉のすぐ側にいるヴィオレット達に気がつくと立ち上がり、穏やかな笑みを浮かべた。


「おはようございます、サンセール侯爵家の皆様方。お忙しいところわざわざ足を運んでくださりありがとうございます。」

「いえ、とんでもありません。本日はよろしくお願い致します。」


 ヘブンリーは頭を下げると、ビアンカと握手を交わした。

 続いてビアンカの父…トリフォリウム国王とも挨拶を交わす。そうして全員が挨拶を終えて席に着くと、まず最初に口を開いたのはビアンカだった。


「では早速ですが、話し合いを始めましょう。」


 ビアンカの言葉に、ヴィオレットは背筋を伸ばして耳を傾ける。


「私の兄上であるネグロとの婚約破棄及び、ヴィオレット嬢に私の専属騎士として仕えて貰う件について、双方の意見を擦り合わせていきたいと思います。」


 ビアンカはそう言うと、ヴィオレットに顔を向ける。


「ヴィオレット、改めて貴女の想いを私に聞かせてください。」


 ヴィオレットは小さく息を吸うと、自分の考えを話し始めた。


「わたしは今まで、ネグロ殿下と婚約をしておりました。ですがその婚約期間中、彼からはわたしの性格や男装を良く思われていませんし、わたしも彼の傲慢さにフォローしきれないこともありました。ですからネグロ殿下との婚約破棄については、わたしも納得しております。そしてビアンカ様専属の騎士になるというお話も、パーティーの日にビアンカ様から直接伺いました。少し逡巡致しましたが、わたしは喜んでそのお話を受けさせていただきたいと思っております。」


 ヴィオレットが話を終えると、次はビアンカが口を開いた。


「わかりました。では次に、父上からのお言葉を頂戴したいのですが……。」


 ビアンカがふと横を見ると、申し訳無さそうに眉を下げた国王陛下の表情が目に入った。


「……すまなかったな、ヴィオレット嬢。私の愚息がとんだことを仕出かしてしまった。」

「いいえ、そんな……!国王陛下に謝っていただく必要なんてありません!」


 ヴィオレットは慌てて首を横に振る。

 そんな彼女に国王陛下は更に言葉を続けた。


「……本来ならあの傲慢で古い考えに囚われたネグロの性格を、私は正していかなければならなかったのだ。だがそれを怠った結果、奴はヴィオレット嬢やビアンカを傷つけるような言動をし、礼儀のなっていない子爵令嬢を妻に迎えるとまで言い出した。そのことについて私は深く後悔している。本来であればこの場にいるべきであるネグロを来させていないのも、これ以上事態を複雑にしたくないからだ。」


 国王陛下はそこまで話すと、隣に座る王妃を見やった。

 王妃はそんな国王に微笑むと、彼に代わって口を開く。


「私からは、ビアンカとヴィオレットちゃんの将来について、サンセール侯爵夫妻に相談したいことがあります。」

「はい、何でしょうか?」

「実はね……、ヴィオレットちゃんには今後、ビアンカの専属騎士としてだけではなく、我が王家の一員となって欲しい…そう考えているの。」

「王家の一員として……ですか!?」


 王妃殿下の言葉にヴィオレットだけでなく、両親も大きく目を開いて驚いた。彼女は落ち着いた頃を見計らって、更に言葉を続ける。


「ヴィオレットちゃんは今まで、ネグロの妻になる為に長く厳しい王妃教育を受けて来ました。それなのに今回の婚約破棄で、今までの努力が全て無駄になってしまうのは、あまりにも勿体無いし虚しいわ。ですから今度は王妃教育の経験も活かして、ビアンカの専属騎士としてだけではなく妻として、彼を支えて欲しいのよ。」

「それはつまり、ヴィオレットをビアンカ様の婚約者に…ということですか……?」


 ヘブンリーが恐る恐る尋ねると、王妃殿下は微笑みながらゆっくりと首を縦に振る。


「はい、その通りです。もちろん、ビアンカやヴィオレットちゃんの意見が最優先で強制ではありません。ただ…男装の令嬢と女装が似合う王子の組み合わせはとてもお似合いだと思うの。」


 王妃殿下の言葉を聞き、ヘブンリーとアリアはお互いの顔を見合わせた。


「確かにおっしゃられる通りかもしれません。」

「ヴィオレットもビアンカ様と一緒の方が幸せになれるかもしれないわね……。」


 2人はヴィオレットに判断を委ねるように視線を向ける。

 すると彼女は頬を僅かに赤く染めながらも、嬉しそうな笑みを浮かべていた。


「ビアンカ様が望んでくださるのならば、わたしは貴方の騎士として、妻として支えていきたいと考えています。」

「ヴィオレット……」


 ビアンカはヴィオレットの答えを聞くと、彼女の手を取って強く握り締めた。


「ありがとうございます、ヴィオレット。これからよろしくお願いしますね。」

「はい、こちらこそお願い致します。」


 こうしてヴィオレットはネグロと婚約破棄をし、ビアンカの専属騎士、そして妻として王家に名を連ねることが正式に決まった。



 きっとこれから2人は、自分らしさを隠さずに生きていくことが出来るだろう。

 ビアンカとヴィオレットは、お互いに見つめ合って微笑んだ。

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