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22話「少女達は個性的な服を纏う」

「んー? どうしたんだ望六?」


 翠嵐は彼が言葉を途中で終わらせた事を不思議に思っているのか尋ねてくる。


「あ、いや何でもない。ちょっと腹痛の予兆を感じ取ったまでだ……」


 望六は自身の腹部を触りながら苦悶とした表情を敢えて作りながら返した。


「あー、夕食の食べ過ぎだな。確かに一樹の作るご飯は美味しいから仕方ないけどさ。……んじゃ、アタシは先に戻ってるから」


 彼の苦悶とした表情を見て翠嵐は独自の予想を立てて言ってくると、望六は見事に彼女を騙すことに成功して安堵した。

 

 そう、望六が腹痛と言い出したのは全て咄嗟に思いついた作戦であって、その意味はトイレに篭もりながら翠嵐のように偶然ばったりと遭遇してナタリアやシルヴィア達の寝巻き姿を見ようという魂胆であるのだ。


 望六としても普段見られない同年代のしかも美少女による寝巻き姿、それは童貞の自分にとって好奇心や思い出として他ならない価値のあるのもであると翠嵐と遭遇した時に理解したのだ。


「あ、ああ。またあとでな」


 彼は横を通り過ぎてリビングへと去っていく彼女を見届けると、自身もトイレへと向かって歩き出した。

 

 ――そして望六がまたもやトイレへと戻ってくると一応疑われないように、一樹へと某メッセージアプリを使っ腹痛のせいで戻るのに時間が掛かることを伝えた。でなければ戻ってくるのが遅い事を怪しんだ月奈が死を宣告するかのような死神の形相となってやってくるからだ。


「よしよし、ここまでは順調だ。あとは彼女らが長風呂タイプではないことを祈るばかりだな」


 望六はそう独り言を呟くと時間を潰す為にスマホのゲームをやり始めるのであった。



◆◆◆◆◆◆◆◆



「ふっふふ~ん。日本の小さきお風呂も中々に良いですの。これが所謂わび・さびというやつですのね!」


 望六がスマホゲームに集中していると突如して鼻歌交じりと共に足音が近づいてきた。

 彼はその事に気が付くと直ぐにポケットにスマホを仕舞って外へと出る準備を整えた。


「肝心なのはタイミングだ。まるでばったりと意図せずに、たまたま鉢合わせになった事を装う事が大事なのだ」


 そう自分自身に言い聞かせると望六は近づいて来る足音に全ての聴覚を注いで機を伺うと、ドアノブを掴んでいる手に力を込めて扉を開け放つ。

 すると彼の目の前には――


「な、なな、なんですの急に!? び、びっくりさせないで下さいまし!」


 驚きの表情を見せながら淡い青色のネグリジェを上品に着こなしているシルヴィアの姿があった。しかもよく見ればその服は薄い生地らしく彼女の豊満な胸の形や曲線美を自然に主張していて、危うく彼は声を掛ける前に視線が釘付けになりそうな程であった。


「あ、あぁー! ご、ごめん! さっきまで腹痛だったから、やっと解放されてつい扉を勢い良く開けてしまった……本当にすまん!」


 彼は刹那の間にシルヴィアの姿を二つの瞳に焼き移すと脳内に情報を記録して、そのまま両手を合わせて申し訳なさそうな雰囲気を取り繕いながら謝罪の言葉を口にした。


「そ、そうだったんですの? ……あ、でも言われてみれば翠嵐さんがそのような事を言っていた気もしますの」


 手の甲を顎に添えながらシルヴィアは何かを思い出したように言う。


「そ、そうか。まあとにかくもど……ろ……」


 望六は軽く返事をして一緒にリビングへと戻ろうとしたが、ここで再び演技を実行する事にした。


「ん? どうしましたの望六さん?」


 突然として腹部を抑えながら壁にもたれ掛かる彼を見てシルヴィアは首を傾げる。


「ま、待ってくれ。これは第二派の到来かも知れん……すまないが先に戻っていてくれ……」


 望六は危機迫る雰囲気を醸し出しながら腹痛の再来を重々しく告げた。


「わ、分かりましたの。お大事になさって下さいまし」


 彼女はそれを聞くと納得した様子で小さく頷いてリビングの方へと足を進めて行くが、望六は去っていくシルヴィアの後ろ姿を見てお尻も意外と有りだと思えた。



◆◆◆◆◆◆◆◆



 それから望六はまたもや同じ手段を取って機を伺いつつトイレから勢い良く飛び出すと、


「どうぅえ!? だ、だだ、誰だ!?」


 自らの視界に映った人物を見て驚きの声を上げると共に腰を床へと打ち付けた。

 その瞬間腰には拳で殴られたかのような痛みが駆けていくが、なんとか耐えつつ恐る恐る目の前の人物に視線を向ける。


「もぉー。誰だ! は幾ら何でも酷いんじゃないかなぁ。僕だよ僕、ナタリアだよ」


 すると彼の目の前に立つ人物は長いアメジスト色の髪を掻き分けて顔を顕にして自身の事をナタリアと名乗った。そして彼女の名を聞いた瞬間に望六は口を開けたまま暫し膠着状態に陥った。


 何故なら彼の目の前に現れたナタリアは髪を下ろしていて、更に濡れて湿っている前髪は顔全体に掛かっていてるのだ。それは宛らホラー映画に出てくる幽霊のような見た目であり、ホラー系が苦手な望六にとってそれは充分過ぎるぐらい恐怖であった。


「な、ナタリアだったのか……。普段からポニーテールの髪型が印象的で髪を下ろした時のを見た事なかったから普通に誰かと思ったぞ……」


 落ち着きを取り戻しながら望六は彼女をナタリアと認識すると、普段あまり見ないその姿に何処か懐かしさのようなものを感じていた。


「そうかい? 望六が留学しに来た時はいつもこんな感じだったと思うけど」

「ま、まあ確かに。……というかお前はその格好で寝るのか?」


 望六は不思議と感じていた懐かしさの正体が何なのか理解できて落ち着きを取り戻すが、そのまま視線を下から上へと向けて彼女の姿を収めた。


 今のナタリアはオーバーサイズの赤色のパーカーを着ていて、それはギリギリの状態で彼女の大事な下半身の部分を隠しているのだ。恐らく下は履いているだろうが、まるで何も履いてないように見えるその姿に望六は言葉に表せない刺激を感じていた。


「ん、そうだけど? 何かおかしいかな?」

「いや別におかしいという訳ではないが……ナタリアは意外とアレなんだな」


 望六は両腕を組みながら言葉を濁して伝えると、彼女は両腕を広げて自身の服装を確認するような素振りを見せていた。


「……アレってなに? どういう意味なんだい?」


 ナタリアは特定の言葉に疑問を示した様子で聞き返してきた。


「別に深い意味はない。アレはアレなだけだ。とにかくリビングに戻ろうぜ?」


 正直にその姿はまるで下になにも履いていないように見えてエッチだとは言えず彼は話題を逸らそうとする。


「んもぉぉ! 誤魔化さないで教えてよ!」


 だが彼女にとって話題を逸らされた事は遺憾だったのか頬を膨らませて顔を近づけてくる。


「……ふっ」


 しかし望六は鼻で笑いながら視線を合わせないように横を向いて顔を合わせないようした。

 何故なら今ナタリアと視線を合わせてしまったら、きっと”アレ”の意味について話すまで尋問されると彼は直感的に思ったからだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆



「ふむ、漸く腹痛から開放されたようだな」


 ナタリアと共にリビングへと戻ってくると長椅子に座りながら月奈が話し掛けてきくる。


「あ、ああまあな。後半はずっと神に祈って何とか乗り越えた感じだ」


 望六は肩を竦めながら本当に腹痛にあっていたかのように語彙力を高めて返した。


「……な、なぁ望六!」


 月奈との会話を終えて彼は近くの椅子に座ろうと足を進めると、椅子に腰掛けていた一樹が突如として立ち上がって顔を向けてきた。

 その何の前触れもない行動にこの場に居る全員の顔が一樹の元へと注がれると、


「ど、どうした?」


 望六の唖然とした頭ではこの言葉しか思い浮かばなかった。


「どうしたじゃない! 俺の作った料理のせいで望六は……」


 一樹はそのまま何かを悔いるような言い方で喋り始めると、彼はそれを黙って聞くことしか出来なかった。

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