19話「イタリア少女は肉食」
「なっ!? そそ、それは……!?」
ナタリアがエロ本を広げながら近づいてくると、望六はその開かれたページに描かれている”とある描写”に視線が釘付けとなって言葉が震えた。
何故ならその描写とは艶めく黒色のボンテージ服に身を包んだ金髪の外国人女性が、裸で仰向けに寝転がっている男性のナニの部分をハイヒールで踏んでいる場面であったからだ。
「望六はさ……。こういう事がされたいの? それともされてみたいの? ねぇどっちなの? 答えてよ」
依然として本を開いたままナタリアは声を掛けてくると、その声色は何処か冷たいものに望六には感じられた。そしてこのまま黙ったままでいると変に解釈されて更に彼女の怒りを買ってしまうのではと、望六は焦る脳内で考えつくと急いで何かを言って場を繋げようとする。
「なな……何というか……若気の至りと言いましょうか……。そういうのに興味があった頃にネットで少々……ですね?」
手をもじもじと弄りながらとてもじゃないが言い訳にもならない言葉を吐いていくと、それは彼が中学二年の頃にひと夏の思い出としてネットで購入した本であることを自白した。
「そんなことは聞いてないよ。僕が知りたいのはこういう事をされてみたいのか、そうでないのかの二択だけだよ。次にそれ以外の言葉を出したら……わかるよね」
ナタリアが氷のような雰囲気を身に纏いながら意味深な事を呟いて、究極の二択を彼に選ばせようと一切の瞬きをせずに顔を迫り寄せて来る。
その様子はさながらホラー映画で暗闇から顔だけが出てくる場面に近いものがあり、ただでさえホラー系が苦手な望六はそれだけで恐怖心が倍増される。
「は、はい! 正直に言ってされてみたいという欲はありました! ……ですが何と言いましょうか……その本に関しては本当に若けの至りであって俺の趣味とは……」
望六は恐怖からの影響からか自らの脈打つ鼓動の音が耳の奥で聞こえ始めると、瞳孔が開いているナタリアへと視線を向けて身振り手振りを使いながらやっと言い訳らしい事を言うことが出来た。
「ふ~ん、そっかぁ。望六は金髪の海外女性に踏まれてみたいという願望を持っている変態さんなんだね。……ああ、でも大丈夫だよ。そういう事なら僕がちゃんと望六のことを踏んであげるからね」
ナタリアは彼の言葉を聞いて小さく頷きながら近づけていた顔を離していくと、どうやら彼の言い訳をそのまま受け入れて解釈したらしく現役女子高校生が言ってはいけない言葉を口にしていた。
「えっ」
望六はその唐突な彼女の発言に抜けた声が出る。
「ほら、早くこの本の男性みたいにみっともなく裸で仰向けに寝てよ。じゃないとしっかりと踏めないよ? ……ふふっ」
顔を歪めながら笑みを見せてくるとナタリアは本に描かれている男性のような姿になれと言って、右手に持っていた本を近くの棚の上に置いて再び瞳孔の開いた視線を向けてきた。
「あ、いや……。興味はあると言ったが別に今ここでしたい訳では――」
本能的にこのままではやばいと望六の脳内で危険信号が鳴り響くと、両手を前に突き出して小さく左右に振りながらやんわりと否定の言葉を使う。
「ッ……もぅ! いつまでもうじうじしていないで、さっさと服を脱いで寝てよ! それかなに? 僕の前で裸になるのが恥ずかしいの? だったら脱がしてあげるから望六は大人しく壁の染みでも見ていなよ」
彼の反応が煮え切らないものだった事が影響したのか、ナタリアの中で何かが弾け飛んだかのように突如として言動が荒くなると彼女は両手を前に出した状態で近づいてくる。
「ちょっ待てって!! 今のお前は冷静じゃない! よせ、やめるんだ! こんなこと後で冷静になったら絶対に後悔する事案だぞ!!」
彼女が伸ばしてきた手に両方を掴まれてそのままベッドへと押し倒されると、望六は直ぐにナタリアの腕を掴んで振りほどこうと力を入れて真面な思考を取り戻すように声を掛ける。
「うるさい! うるさい! 望六が悪いんだから……望六が僕以外の女で性的欲求を解消しようとするのが悪いんだよ!!」
だがしかしナタリアは彼の言葉を聞く耳を持たないのか、大きめな声で尚且つ強め口調でそう言い切ってくる。
「なんだよそれ!? ただの横暴じゃないか!」
返事をしつつ望六は彼女の顔を間近で視認すると、それはまともな状態ではなく軽い錯乱状態に陥っている様子であることが何となくだが理解出来た。
「横暴なんかじゃないよ。望六は僕だけを見て僕だけに興奮しなきゃ駄目なんだ。それが愛というもので、それ以外は絶対に許されない。だからさ望六……今ここで僕としよ?」
ナタリアは自分が冷静であるかように口調を緩めて言うと、彼の右肩を掴んでいた手を退かして自分が着ている服のボダンに手を掛けて一個ずつ外し始めた。
今現在、彼女が着ている服装は白のブラウスに群青色の膝丈スカートに黒タイツであるのだ。
「…………ふぁっ!?」
ナタリアが放った言葉に暫く思考が停止して間が空くと、望六は遅れて喉からカエルが潰れたような声が飛び出した。
「変な声出さないでよ。雰囲気が削がれるでしょ?」
全てのボタンを外し終えるとナタリアの胸には紫色の妙な色気を放っている下着が顕となる。
「いやいや、雰囲気云々の問題じゃないだろこれは!」
望六はそれを凝視しつつ口では否定の言葉を出しているが心中では『一層これは童貞を卒業出来るまたとない絶好の機会なのでは』と邪な思いが浮かんでいた。
そう、もはや全てをこの異様な雰囲気のせいにしてナタリアの言っている通りに身を任せるのが正解なのではないかと、望六は彼女の下着を目に焼き付ける勢いで見ながら考える。
「ふふっ、そんなに必死に見なくても僕の胸は逃げやしないよ。だけど僕だけ見せるのは不公平だよね? だから……望六のもみ・せ・て」
彼女は望六の視線が何処を向いているかしっかりと把握しているようで、目元を緩ませて妖艶を孕んだような笑みを見せながら彼の服へと手を伸ばす。
――そしてナタリアが彼の服を掴んで脱がそうとすると、
「あの~? もう夕食の時間なんですのよ? いつまで寝ているつもりですか望六さん」
「そうだぞー。てかナタリアが起こしに来た筈だけど、まさか二人して寝ているとかじゃないよな~?」
それは唐突な出来事であり廊下からはシルヴィアと翠嵐の声が聞こえてきて足音が段々とこの部屋に近づいてきていた。
「お、おいナタリア!? や、やばいぞ! このままでは本当に!」
望六が二人の声を聞いて倒れていた体を勢い良く起こすと急いで彼女に危険な状況が迫ってきていることを告げる。
「……ッ!」
ナタリアは服を脱がそうとしていた手を離して彼から離れると先程までの妖艶な表情から一変して目を泳がせながら必死にボタンを留めていた。
「あら、開いていますの。ではこのまま失礼して――」
「本当だな。早く起こして一樹の作った飯を――」
そう声が部屋の前で聞こえると次の出来事まではあっという間であった。シルヴィアと翠嵐は言葉を途中で止めると、二人とも視線がナタリアと望六を交互にしっかりと捉えている様子であったのだ。
「「…………お、お邪魔しました」」
二人は何を想像したのか頬を紅色に染め上げて頭上から湯気を出しそうになると目を丸くさせながら小走りでその場を去って行き、望六はそんな彼女らを見て恐らく厄介な誤解をしているだろうと予想したが声を掛けて止める事は叶わなかった。
何故なら第三者視点から見ればこの状況は完全に事後だからだ。
ナタリアは目を泳がせながらブラウスのボタンを慌てて留めているが体が火照っているのか息遣いが荒い、更に望六は下半身の衣類こそ脱げていないが上半身に関しては彼女が脱がそうとしていた事もあり見方によっては事を成したあとにも見えるのだ。
「ねぇ望六。今更これを言っても無駄かもしれないけど一応言うね。あの本を手にして中身を見たら僕の中で色々な感情が絡み合って溢れちゃったんだ……本当にごめん。あ、あとシルヴィア達にはこの状況を何て言って説明しようか……ははっ」
ボタンを全て留め終えて服装を正すとナタリアもシルヴィア達は何か誤解をしているのだろうと考えていたのか無理やり作ったような笑と共に乾いた声を出していた。
「本当に今更ではあるな……。だがしかし今は一刻も早く服装を整えて、翠嵐達を追いかけるべきだろう」
そんな彼女の様子を見て特段問い詰める事や文句を言うつもりは一切なく今は取り敢えずとして小走りで去っていった翠嵐達を追いかけて誤解を解く方が先決であると、望六も自身の服装を整えるとベッドから降りてナタリアと共に廊下へと出るのであった。
最後まで読んで頂きまして、誠にありがとうございます。
宜しければ評価と、ブックマーク登録を、お願い致します。
活動の励みとなり、更新が維持出来ます。




