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12話「親友の家で美少女達と過ごす」

「あー……まさか変装するだけで、ここまでバレないものだとは思わなんだ……」

「確かにな。やっぱり姉貴の言うことに間違いはないってことか」


 今現在、望六と一樹は宮園家の家の前にて呆然と立ち尽くしている状態である。

 それは七瀬が言っていた”絶対に変装をしろ”という強制的な命令を守ったおかげでWM学園から出て、電車に堂々と乗っても誰ひとりとして自分達の存在に気づかなかったからだ。


「まあ、俺達が降りる予定の駅にマスコミが張っている事は予想出来ていたが……まさかそいつらでさえ気がつかないんだもんなぁ」


 望六が駅に降りた直後の光景を頭に浮かべて頷きながら呟く。


「そうだな。多分だがマスコミ連中には俺達がただの観光客に見えたんだろう」


 隣に立っている一樹も大きく頷いてからマスコミを軽く欺くことに成功して安堵している様子だった。

 

 それも学園入学の時に二人は駅の入口から電車に乗るまでに、ホームでマスコミ達と全力疾走した経験があるがゆえに今回は気分が数段楽であったのだ。


「ああ、そうに違いない。……だからこの完璧な変装のアドバイスをくれた、シルヴィアとナタリアには感謝しないとなっ!」


 望六が高らかに声を出して今回の功労者達の名前を口にする。


「おう! ほんとう助かったぜ二人とも! ありがとうな!」


 一樹は顔を二人の女子へと向けて感謝の言葉と共にいつもの爽やかな笑顔を向けていた。


「いえいえ、お気になさらずですの」


 シルヴィアは静かな口調で返していたが少しだけ頬が赤くなっているようで、恐らく彼のその笑顔を見て照れているのだろうと望六は見ていて分かった。


「全然お安い御用さ。どのみち僕達にも変装は必要だったからね」


 望六の横からナタリアが笑みを浮かべながらそう言い返すと、何故かそのまま彼の右手へと吸い付くようにぴったりと体を密着させてきた。

 その瞬間、望六は彼女から伝わる体温と二つの柔らかな感触を受けて身が固まった。


 けれどその状況を見てもこの場に居る誰も驚く様子はない。

 何故ならこのような状態は学園を出てから頻繁に起こっている出来事だからだ。

 

 例えば電車に乗っている時でさえそれは起こったのだ。望六が乗り物酔い対策として窓際の席へと座ると、即座にナタリアが隣へと座ってじわじわと距離を縮めてきたのだ。


 やがて距離は肩と肩が触れ合うほどで肘掛で仕切りがなければ、肩だけでなく全てが密着していた程である。その他にも色々と起こりはしたが、それらの影響で誰ひとりとして驚きの声を上げる者は居ないのだ。

 

「ふんっ、ファッションセンス皆無の女で悪かったな」


 望六がナタリアに何度目かの密着をされて狼狽えていると、ふと彼の視界の端には如何にも不機嫌そうな雰囲気を放ちながら月奈が睨みを利かせている姿が映った。


「くぅぅ、もっと可愛い系の雑誌を読まないといけないか……」


 そしてそんな不機嫌そうな彼女の隣では、翠嵐が頭を抱えながら苦悶とした表情を浮かべて言葉を口にしていた。望六は二人の様々な様子を見て何か声を掛けるべきかとも思ったが、下手に生易しい言葉を掛けたら月奈に殴られそうで声が出なかった。


「大丈夫だ。二人とも変装が似合っていてまるで別人のようだからな。それに俺は初めて月奈のツインテール姿を見れて少し感激しているぞ。翠嵐も外出日の時のように可愛らしいスカートを履いているし、俺は二人の滅多に見られない姿を目の当たりに出来て満足だぜ!」


 望六が尻込みしている中、一樹は一歩前へと出て二人に真剣な顔付きを向けると、そのまま彼女らの見た目を服装を褒めちぎるような言葉を次々と言って不穏だった空気を瞬く間に上手く収めていた。


 その光景を望六が目の当たりにすると、やはりイケメンは考えている事もイケメンなのかと普段の能天気野郎は何処へ行ったのかと疑問であった。そしてナタリアは一樹の言葉には興味がないのか、依然として体を彼の右腕へと密着させる事に集中しているようだ。


「そ、そうか……。お前が喜んでくれるのなら、たまには髪型を変えてみるのもありだな……」

「あ、アタシも……一樹が褒めてくれるならもっと丈が短いスカートだって……!」


 一樹の言葉が乙女心に突き刺さったのか二人は分かりやすく反応を見せると、月奈は自身の髪を指でくるくると弄りだして、翠嵐はスカートを両手で押さえると何やら妄想を膨らませている様子であった。


「あら、でしたら私にも何かあるんじゃないですの。一樹さん?」


 すると場の様子を静観していのであろうシルヴィアが日傘を回しながら唐突にも彼に顔を向けて訪ねていた。彼女はブランド物のサングラスを掛けていることから、真意は分からないが恐らくジト目にはなっているだろうと望六は推測する。


「おう、もちろんだ! シルヴィアは……やっぱりいつもの水色の髪じゃないと変だな。違和感しかない」

 

 そして一樹は彼女の問いに笑顔を維持したまま答えようとしているが、改めてシルヴィアの変装した姿を見ると変な所で能天気ぶりを発揮しているようだった。実は今のシルヴィアは綺麗な水色の髪じゃなくて、日本人をイメージした漆黒色に染めて変装しているのだ。


「なっ!? そ、それは変装だから仕方ないですの! それよりも服装とか他にも色々とあるでしょう!!」


 シルヴィアは彼の感想が予想外のものだったのか勢い良くサングラスを取ると同時に足を進ませて一樹へと迫り詰めると、そのまま顔を近づけて自身の服装を主張するかのように右手を胸に添えていた。


「……いやぁ、何か普段のシルヴィアの印象が強すぎてなぁ」


 だが一樹は苦笑いを浮かべながら返事をするだけで、彼女の服装や見た目については特に触れる事はなかった。

 それほどまでに彼女の印象が変化していると言う事なのだろうと望六は納得して頷くと、


「確かにそれはあるな。……てかいつまでも家の前で喋っていると不信がられるから、そろそろ中に入らないか? なぁ一樹?」


 彼に向けて家に入る事を提案した。それはいつまでも美少女達と共に家の前で騒いでいては、地元住人達に怪しまれて直ぐに噂が広まってしまう事を望六は危惧したのだ。


 唯でさえ宮園家の前に来るまでに色んな人から注目を浴びたのだ。

 素性がまったく分からないというのはマスコミ達に対しては効果覿面ではあるが、地元ではそれが悪目立ちしてしまうのだ。


 そして噂が広がると必ずこの町内の長的存在の”柳葉家”にも伝わるという事も彼には分かっているのだ。


「それもそうだな。んじゃ案内するから皆、付いて来てくれ」


 一樹は未だに顔を近づけているシルヴィアを何とか宥めると、ポケットから一枚のカードを取り出して門の横に設置されている電子機器に翳していた。

 

 宮園家は柳葉家の屋敷と比べると小さな物だが普通の一軒家にしてはかなり大きい方であり、二階建のこの一軒家は黒と白だけの色を使用して落ち着く大人な雰囲気を作り上げているのだ。

 しかも駐車場も完備していて大型の車が二、三台は軽く止められるだろう。


 そしてこの家は最新設備が備わっているらしく一樹がカードキーで門を解錠しているこの電子機器もその一つであると望六は中学時代に一樹から教えて貰ったのだ。

 

 さらにこの一軒家は七瀬が一括で購入したらく金の出処は一樹にも分からないらしいが、恐らくは国と何かしらの契約を交わした結果なのだろうと一樹は考えているらしい。


「まあだけど七瀬さんが家に帰って来ることを殆どなく。一樹はただ一人でこの大きな家で過ごしてた訳だな……」


 望六が家の全体を視界に収めながら呟くと、一樹が門を開けて何に入るように皆に声を掛けていた。そして月奈達が宮園家の敷地へと足を踏み入れる様子を呆けながら見ていると、ナタリアが袖を引っ張ってきて望六が視線を向けると彼女は首を傾げていた。


「あ、ああすまない。ちょっとぼーっとしていたみたいだ。……さて、俺達も宮園家にお世話になるとしよう」


 漸く意識を元に戻すとナタリアにそう言って望六は一緒に門の中へと足を踏み入れるのだった。

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