13話「イタリア少女の礼装はエロティック」
望六と一樹は教室で礼装に着替え終えると急いで第一グラウンへと走った。
一分一秒でも遅刻したら二人は七瀬と木本先生により、怒涛の言葉責めを受ける事になるからだ。別に言葉責めといってもあっちの方ではなく折檻の方だが。
――それから二人がグラウンドへと飛び出すと急いで女子達が並んでいる列へと向かう。
そして一組の列は席順を元にしている事から必然的に望六達は月奈やナタリアと近くになる筈なのだが。
「おかしいな。まだあの二人は来ていないのか?」
望六は周囲に顔を向けるが何処にも月奈達の姿が見えない。
「だとしたら遅刻するかもな……。あと三分しか時間は残っていないぞ」
しかも一樹が言っている通りに残りの時間はもう僅かだ。
このままでは二人揃って遅刻という扱いでペナルティが課せられてしまうかも知れない。
「うーむ。やっぱり間に合いそうにな「いや、それを言うのは早計だぞ。一樹」えっ?」
二人が遅刻しないと信じて望六は女子更衣室がある方へと視線を向けていると、その更衣室がある建物から慌てた様子で二人の女子が飛び出してきた。
するとそのまま二人の女子は一組の列へと目指して走り寄ってくる様子だ。
そしてそれに釣られたのか思わず望六と一樹は列から離れると、少しだけ歩いた所でナタリア達が寄ってくるのを待った。
「お、おぉ、何とか間に合いそうだな。……って!? ナタリアのあの格好って!」
「ああ、間違いない。俺達と同じ専用の礼装を着ているな。やはり魔術留学生とは伊達ではないようだ」
一樹がナタリアの礼装を見て驚くと彼も少しばかり驚いていた。
……いや、本当は途轍もなく驚いているのだ。ただ抑えているだけである。
正直、魔術留学生という時点でナタリアが専用の礼装を持っている事は望六としては予想出来ていた事なのだ。しかし問題はそこではなく礼装のデザインの方にある。
「あれはアニメや漫画の世界だけの物かと思っていたが……。まさかこうして実際に見られる時がこようとはな……!」
彼女が着ている礼装のデザイン、それは全体的に濃い紫色と赤色を基調としていてるジャケットのような見た目でしかも”横乳”がはっきりと見えるタイプの礼装なのだ。
そして上の露出だけではまだ物足りないのか下の方も随分と大胆のようだ。
まず履いている物だが所謂ショートパンツと言われる物でジャケットと同じ素材で作られているのか色味やデザインは似ていて、しかも凄く短くて太ももの露出度は多めなのだ。
「だがしかし……極めつけは、あの何ともエロティックな雰囲気を醸し出しているブーツの存在だろうなっ!」
望六の視線の先にはバッチリとナタリアの履いているブーツが見えていて、そのブーツはくるぶし辺りに金属製のリングが嵌められているデザインの物らしく、それも相まって全体的にエロと格好良い感じを合わせた礼装となっているようだ。
「望六~! まだ授業は始まってないよね!? ……はぁはぁ。思いのほか礼装を着るのに時間掛かっちゃって急いで更衣室から走ってきちゃったよ」
「そ、そうなのか? まあ時間は間に合ったと思うが、それよりもその礼装って……」
ナタリアは望六と一樹が並んでいる列へと到着すると、全力で走ってきたらしく肩で息をしていて表情は苦しそうである。
「な、なぁ月奈……」
「…………」
そして彼の隣では一樹が月奈に声を掛けていたが、涼しい顔をして息一つ乱れていない月奈は相変わらず一言も交わさずに列へと並びに行ってしまった。
「あ、ちょっ……。すまん望六、俺は月奈を追いかけて昨日の謝罪をきちんとしてくる!」
そう言って一樹は月奈を追いかけて列へと戻っていく。
「ああ、分かった」
しかし望六の頭の中にはナタリアと一緒に走ってきた月奈はゴリラ並みのスタミナを持っているという事でいっぱいだった。
……だけどゴリラがどれほどのスタミナを持っているのか彼は知らないのでただの憶測だ。
あくまでもそう言ったイメージ感での話である。
「望六どうしたの? 僕の礼装なにか変かな? ……あ、そっか。日本では余り見ないタイプで珍しいんだね。でも、あんまり見られると僕としても恥ずかしいかな」
ナタリアは息を整えると地面に向けていた顔を上げて、辺りを見渡して彼に言ってきた。
多分だがナタリアは他の皆が着ている礼装を見て自分のが特集な物だと分かったのだろう。
「あ、ごめん。別にそんな疚しい気持ちを持って言った訳では……」
「良いよ! 望六の記憶に色濃く僕の印象が刻まれるのなら、それはそれで嬉しいからね! はへへっ~」
彼女はそう言って呆けた笑みを見せてきたが、望六はなんとなく謝った事を少し早計だったかと思った。そして彼は改めて間近でナタリアの礼装を見ると今まで見てきた物より一段と際どい気がした。これなら七瀬の着ていた礼装と良い勝負しそうな所だろう。
「というよりもだよ! 本当に望六も礼装持ってたんだね」
ナタリアは礼装に興味を抱いたのか顔を近づけてくる。
「ああ、まあな。一応これは日本政府が支給してくれた謎の多い礼装だ」
望六は別に隠す気もなかったので両手を広げて余すことなく見せる事にした。
恐らく政府側からしたら他国に礼装を見せるのはタブーなのかも知れないが、彼にとってそれは関係のない事だった。どうせ今だって礼装を通じてバイタルや魔力反応を何処かで見ているだろうと実験動物の様な気分なのだ。
「……あっあぁぁ!? やばいっ! だとしたら俺があれを使った事も筒抜けなのでは!?」
「うわぁっ! なになに!? 一体どうしたんだい望六?」
彼は何気なく思ったことを再度脳内で認識すると、それは即ち無属性の自分が雷属性の魔法を使用したことが既に政府に認知されているのではないかと気が付いたのだ。
「ちょっと望六? 今の声はなんだったの? ……ねえ答えてよ」
ナタリアが急に顔を望六の横に近づけてくると、その声は変に低くて冷たい感じである。
「ん、どうしたナタリア? 何か言ってたのか?」
しかも心なしか瞳からも徐々に光が失われいるような気がして、彼は本能的に彼女と視線を合わせる事を避けていた。
「……もういいよ。それよりも先生達が来たみたいだから列に戻ろ?」
彼女は溜息を吐いたあと人差し指を奥の方に向けると、そこには木本先生と七瀬がジャージ姿で列に向かって歩いているのが確認できた。
「ああ、そうだな。一樹と月奈の事も気になるし、遅れると先生達に怒られてしまうからな」
二人は駆け足で列へと戻ると当然の如く一樹達は既に並んでいたが、何故か……本当に何故なんだろうか一樹の右頬には綺麗な紅葉がはっきりと浮き出ていたのだ。
「お前、その頬どうしたんだよ……」
望六はその紅葉の原因を知るために堪らず一樹に声を掛けると――――
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