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12話「来るべきクラス対抗試合に向けて」

「なあ。些細な質問なんだが、何で翠嵐は俺達の部屋が分かったんだ?」


 自室を出て皆で一年の校舎に向かっている中、望六は当然の疑問を聞くことした。

 すると翠嵐は一樹との他愛もない雑談を辞めて彼の方に顔を向けてくる。


「そんなの簡単だぞ。昨日、皆とコンビニ行った際に月奈から聞いただけだよ。思いのほか気軽に教えてくれたから拍子抜けしたけどな」


 どうやら翠嵐に寮部屋を教えた人物は月奈だったらしい。

 しかし彼女の言っている通り月奈が態々恋敵であろう相手に部屋の場所を教えるとは望六としても意外だった。


「ほう、それは珍しい事もあるものだ」


 まさか彼女は恋敵だとしても正々堂々と戦う為に敢えて教えたのだろうか。

 だとしたら月奈はどこまでも男より男らしい潔さを持っているだろう。


「あっ、アタシのクラスこっちだから! また昼休憩に話そうなー!」


 望六が考え事をしているといつの間にか一年校舎についていたらしく、翠嵐は望六達から離れて三組のクラスへと向かっていった。


 その際に元気よく大ぶりで手を振ってくれたのが不覚にも望六には可愛いと思えてしまい、元気なボーイッシュ娘ありありのありだと朝から元気を貰えた気分だった。


「所でさぁ。昨日の事で思い出したんだけど、ちゃんと月奈は自分の部屋に戻ったんだよね? もしかしてあの裸に近い状態のままで、ずっと望六の部屋に居たりとかしてないよね?」


 翠嵐が去っていくと次はナタリアが望六に向けて鋭い言葉の数々を投げてきた。

 先程まで静観していたと思えば急に怒涛の攻めを見せてくる。

 意外と侮れないのはナタリアかも知れないと望六は唇を噛み締めた。


「ふっ心配するな。ちゃんとナタリアが部屋に戻った数分後に月奈も戻っていったぞ」


 時系列的にはナタリアに彼が脅しを掛けて部屋に戻らせた後に、月奈はバストタオルを巻き直して親の仇のように望六を睨んで帰っていったのだ。

 

 ……だが今思い返せばそれは怒っているという事で間違いないのではないだろうかと望六は焦りを募らせる。


 それ即ち今日月奈と顔を合わせる度にあの生乳を思い出し、その度に彼女から制裁を喰らうのではと彼の脳は光の速さで答えを弾き出したのだ。


 唯でさえ服を着ている時でも胸を見たら殴ってくるのだ。

 だったら尚更生乳だなんて死に直結する事案ではないだろうか。


「へぇそうなんだ。じゃあ僕が部屋を出ていった後の”数分”って何をしていたの? ねぇナニをしていたんだい? 僕、凄く気になるな」


 ナタリアは変に勘ぐったようで面倒臭い彼女ような台詞を言って望六に顔を近づけてくる。


「ほ、本当に何もなかったぞ! ただ月奈がバスタオルを巻き直していた時の数分だ! だ、だからそんな怖い笑みを浮かべて近づかないでくれ……」


 彼は身の潔白を証明する為にその数分の出来事を話した。

 その数分間は本当に月奈が肌蹴落ちたバスタオルを巻き直している時間なのだ。


 普通なら持ってきた替えの服に着替えればいいのだが、一樹との乱闘で不運にも持ってきた服を全てシャワー室に落とし濡れて駄目にしてしまったらしいのだ。


「ふぅーん。まあ嘘かどうかは月奈に聞けば分かるからいいけどね。でも嘘だったら……分かるよね?」


 どうやらナタリアも朝から絶好調のようだ。望六にキザ歯を見せつけるように微笑み掛けてくる。もしかして彼がギザ歯好きって事を知っているのだろうか。

 

 ――そんな事をしていると望六達は一組へと到着して自分達の席へと向かった。

 周りを見渡せば既にクラスには殆どの女子達が席に着いて、自習をしていたり友達と話しているようだった。

 

「この学園の女子達は皆真面目なんだな。しかも朝が強いらしい、低血圧の俺としては羨ましい限りだ」


 ……だけど望六にはそんな事よりも凄く気になる事があるのだ。

 それは月奈の姿を未だに見ていないという事だ。


 これは実におかしい。いつもなら彼と一樹がクラスに着く頃には月奈は席に座っていて『起きるのが遅いぞ! もっと早く起きろ。男児たるもの怠けてはならぬ』という台詞を聞くのが恒例となっていたのだ。


「なあ望六。今日はまだ月奈を見ていないけど、もしかして体調が悪いとかそんなじゃないよな? 昨日あんな格好だったし……」

「うーむ、その可能性は捨てきれないな。はぁ……月奈の部屋に一度寄るべきだったかもな」


 二人はそんな会話をしながらバッグを机の横に引っ掛けて席に座ると、望六は目の前の席が空いている事に妙に落ち着かない感じだった。

 人とはいつもの光景がないと、それそれで気になるものらしい。


「んー? 二人して難しい顔してどうしたの?」


 望六と一樹が月奈の席に視線を向けていると、ナタリアが横から声を掛けてきた。

 彼女は転校してきたばかりで、こういう事に違和感がないのだろう。


「ああ、実はだな――」


 そこで望六と一樹は、ナタリアに月奈はこの時間なら既に自分の席に着いていると言う事を話した。するとナタリアは望六達が見逃していた部分を的確に突いてくるような言葉を放ってきた。


「それって普通に昨日のあれが恥ずかしくて、一樹達と顔を合わせないように時間をずらしているだけじゃないの?」

「なにっ!? そ、そうだったのか……」


 それは望六がクラスへと向かう途中に考えていた事であり、そこを第一に見逃すとはまだまだ彼も視野が狭いようだ。

 そして一樹はナタリアに言われて気づかされたような表情を浮かべていた。


「うーむむ。風邪なのか顔を合わせずらいだけなのか……分からんが取り敢えずHRが始まるまで様子見だな」


 今から寮に戻って確認する時間もないので望六はHRが始まるまで静観する事に決めた。

 仮にHRまでに来なかったとしても、木本先生か七瀬が何かしら教えてくれるだろうというのも考慮してだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 それから数十分が経過するとHRが始まるぎりぎりの時間で月奈は教室に姿を現した。

 望六と一樹はそれとなく視線を月奈に向けると、月奈は何処となく怒っている様子で一言も喋らずに席へと座った。


「ああ、これはやべえなぁ。どうやら月奈はまだ昨日の怒りが収まっていないようだ……」

 

 望六は周りに聞かれないように小声で呟く。

 月奈が遅くに姿を現したのは恐らくナタリアの言っていた線で間違いないだろう。

 しかもそれを確信させるかのように彼女の周りからは禍々しい怒りの雰囲気が見て取れるのだ。   


「やっぱり僕の言ったとおり月奈は怒り心頭って感じだね」


 小声で耳打ちしてくるナタリア。


「そうみたいだな。月奈が座ったと同時に一樹が妙に震えているように見えるぜ」


 望六は後ろの席から一樹達を見ているが、どうにもぎこちない空間が出来上がっているみたいだ。そして朝のチャイムが校内に鳴り響くと、それと同時に教室には木本先生と七瀬が一緒に入ってきた。


「全員席に着いているな。よろしい」


 七瀬は目視で全員が出席しているかどうか確認するとそのまま教卓の前に立った。

 それから木本先生も教卓の横に立つと何やらピリピリとした雰囲気を放ちながら口を開いた。


「今日のHRは前回言っていたクラス対抗練習試合の日程をお前達に伝える。それと各自の対戦相手も既に決まっているが、これは当日発表となっているから了承してくれ。では試合日程の方だが再来週となった」

「「「「「えっっーー!?」」」」」


 木本先生から試合が行われる日を告げられると、望六達一組のクラスメイトは全員同じ反応をしただろう。だがそれも無理はない。何故なら一週間後にはもう試合が控えているのだから。


「静かにしろ。これは既に決定事項で変わらない事だ。それに本来なら練習試合なんて組む必要すらないんだぞ。これも全てお前達が例年にないほどに貧弱だからだ」


 クラス内がざわつくと木本先生は冷静に全員に向かって”実力不足”だと言ってきた。

 流石にそれを言われると望六達は最早何も言える事はないだろう。

 しかし望六にはその期間でとても個々の実力を上げるのは難しいと思えてならなかった。


「まあ伝えるべき事はこれぐらいだな。後は……何か連絡事項ありますか? 七瀬先生」


 木本先生は一通り伝え終えると七瀬の方に顔を向ける。


「そうだな。一時間目から魔法実技を行う予定でいるから女子達は更衣室を使うように。男子達は……適当に教室内で着替えておけ。だが女子達の私物に触れたら即死が待っていると思え、いいな?」


 七瀬はそう言って望六に睨みを効かせながら連絡事項を終わらせた。

 

「何で俺だけにあの視線を向けてくるんだ……。もしかて俺は早くも先生方に目を付けられる存在となってしまったのか? ふっ……やれやれだな」


 一体なぜ七瀬は彼に向けて人を石像化させれそうな眼差しを向けてきたのだろうか。 

 その理由は望六の中では答えが出なかったが、これだけはしっかりと理解出来た。 

 先生方は男という生き物の扱いが段々と雑になっているという事だ。


「まあ、それでも図書室で着替えるよりかは遥かにマシか」


 ここ最近の魔法実技の授業ではずっと図書室で着替えていたから、今回教室で着替えられる事はかなり望六にとっては嬉しい事だ。

 しかし当然だが女子達が更衣室を使える時限定なのは言わずもがな。

 

「では以上でHRも終える。直ぐに礼装に着替えて第一グラウンドに集合するようにっ!」

「「「「「はいっ!」」」」」


 木本がHRを終わらせると女子達は急いで席を立ち更衣室へと向かう為に教室を出て行く。

 ナタリアはその光景に戸惑っていたようだが、それを察した月奈が声を掛けてナタリアを更衣室に連れて行ってくれたようだ。


「流石に俺が女子更衣室まで案内するのは事案になってしまうからな……。ありがとう月奈」


 二人が教室から出て行く姿を見て望六は呟く。

 だが呑気にしている場合ではない。彼も急いで着替えねばならないのだ。


 望六の礼装は学園支給の汎用と違って”専用”の物だから着るのに時間が掛かってしまうのだ。

 それに一樹も同じく専用の礼装だから四苦八苦しながら着替えているのだった。

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