7話「少年とイタリア美少女の出会いとは」
「あっーそ、そうだなぁ……俺は水色のボーダラインの入ったモノとか好きだぞ?」
ナタリアから意味深な色の質問をされて望六は自身が何色が一番好きなのかと自問自答すると、その考えはどんどん沼に落ちていくように答えは分からなくなった。
そしてそんな中で彼は記憶の奥底に封じ込めていた、妹の優希の下着の色を思い出すとつい言ってしまった。
望六の記憶の中にあった女性の下着というイメージはこれが強く残っていたのだ。
どうして妹の下着を見てんだよ変態とか言われると彼には弁明する余地がある。
あれは本当に偶然でたまたまで、雨で全身を濡らして帰ってきた優希にタオルを持っていこうと部屋に行った時にしっかりと見てしまっただけなのだ。
濡れて肌に張り付いた制服を優希が脱ごうしている場面にだ。
もちろん言うまでもないと思うがその後、望六は頬に往復ビンタを食らった訳だ。
しかし下着の連想で望六は優希を思い出してしまったが、ナタリアに対してこの返しは大丈夫だろうかと彼は恐る恐る彼女へと意識を向ける。
「水色のボーダライン? そ、それって水色が好きってこと? もしくはボーダラインが好きなのかい? ……というか何で望六は女性用の下着でそんなマニアックな柄の下着知っているんだい?」
するとナタリアは少し考える素振りを見せたあと何を思ったのか顔を近づけて疑いの眼差しを向けてきた。やはり女性に対して下着について何かを言うのはそれなりに難易度が高いと言える。
絶対的に優位には立てないであろう。それはかなりの変態でなければ尚更だ。
「あっいえその……。お恥ずかしながらアニメや漫画で知りました……ははっ」
「それは本当なのかな? 僕にはどうにも望六がその目で実際に誰かが身につけたのを見たような気がしてならないんだけど」
ナタリアは依然として顔を近づけたまま言うと徐々にだが、可憐なゴールドイエローの瞳から光が失われているような気がして望六にはならない。
やはり女性の勘というのは鋭いものなのだろう。
だが一体どう言い訳を述べればこの窮地から脱出できると言うのだろうか、望六は取り敢えずこれ以上疑われないように返事の感覚を開けることなく次の言葉を放つ事にした。
「ほ、本当だ! 疑うのなら今度その描写が写っている漫画やアニメを見せてやるぞ!」
彼は最後の手段でその下着が描かれている描写シーンを見せると言う。
「……ふーん。じゃあ今度それ見せてね。もしそれが嘘だったら僕は望六の血と体の一部を貰うから」
するとナタリアは近づけていた顔を離して静かにギザ歯を見せながら狂気的な事を告げてきた。
「ねえ、返事は?」
「は、はい……。分かりました……」
「ふふっ良い子だね、楽しみにしているよ。二人きりで、その描写が描かれている場面を確認できる日をね」
最早望六に残された手は”水色”で尚且つ”ボーダラインの下着”の描写を探す事しかなかった。それしか彼の助かる道はないのだ。
しかし血と体の一部を貰う意味とは何だろうか、ナタリアは黒魔術でも行う気なのだろうか。
そう望六は思いつつ何とかその場では難を逃れる事が出来るとナタリアはお金を引き出しにATMの方へと向かっていった。恐らくコンビニで何か買うのだろう。もしくは下着かも知れない。
「そう言えば翠嵐やシルヴィア達はどこへ行ったんだ?」
この建物に入って早々に全員が散らばってしまうと、望六は皆がどこに居るか把握するべく動き出した。
最初に確認すべきとこはやはり服屋だろう。
と言うよりそこが一番望六の居る場所から距離が近いのだ。
「んーと、誰か居るかな? あまり女子服しか売ってないこの場に、男の俺が居ると周りの先輩方から変な目で見られて居づらいのだが……」
一番近いからと言って女子服が売っているコーナに足を踏み入れたのは早計だったかも知れないと望六は後悔した。完全に男の彼は浮いているのだ。
なんなら服屋の店員にすらそれとなく後を付けられている感じすらある。
「頼む! 誰か居てくれないと……これは流石にまずい!」
望六は必死で誰か居ないか探していると、目の前に黒色の看板に金色の文字で書かれたコーナへと来ていた。しかもさっきまで庶民的な雰囲気とは違い、ここは何処となく高級ブランドを置いていそうなコーナーである。
「やべえ、いよいよ変な所に足を踏み入れちまったな……。さっさとこの場から出な……おっと? あの独特な瑠璃の長い髪に貴族のような立ち姿はシルヴィアなのでは?」
急いで高級コーナーから出ようとした矢先に彼の視界にはシルヴィアらしき女子が映った。
というよりシルヴィアで間違いないだろう。
「お、おいシルヴィア。何をしているんだ?」
望六はゆっくりと近づくと背後から話し掛ける。
「あら望六さん、これを見て分からないんですか? 私に似合う洋服を選んでいますの。まさかこの学園の小さなコーナーに彼の有名なファッションブランド【Marc Lewis】があるだなんて思いも知ませんでしたの!」
シルヴィアは振り返りながらブランドがどうのこうの言うと、テンションが上がっているように見えた。しかも手には薔薇の模様が施された服を持っている。
「ま、まーくるいす? うーむ、俺は聞いたことないな」
「違いますの! 言い方が全然駄目ですの! 正しくは【Marc Lewis】ですの! それにここのブランドが出している衣類は全て一着で数十万は飛びますの。だから庶民は知らなくて当然ですのよ」
彼はシルヴィアから一着数十万もする服の詳細を聞くと何でこんな高級品が学園の服屋にしかも警備員も配備しないで堂々と売られているのか疑問を覚えると同時に、目の前の服がそんなにも価値がある事に心が震えていた。
「つまりこの服を中古で売ったとしても数万以上は確定と言う訳か……。なるほどなるほど」
「……何を変な事を考えているのか知りませんが、私の要らなくなった服はあげませんですの」
シルヴィアは望六の考えていた事を見透かすかのように冷たく言い放ってくると、手に持っていた薔薇の模様の服をラックに戻して違う服を見に行った。
「何で俺の考えている事って女子達は直ぐ気がつくのだろうか……。うーむ、不思議だ」
そう呟くきながらシルヴィアから視線を外すと彼は次にコンビニコーナーへと足を進めた。
何故ならそこに翠嵐と一樹達の姿が見えたからだ。
「おーい、翠嵐は何か買うのか?」
望六は彼女へと近づいて横から話し掛ける。
「んー、買おうと思ったけど夕食まで我慢する事にした!」
すると翠嵐はお菓子の棚に意識を集中させているようであった。
しかもその視線の先にはポテチが多数置いてるある。
味は定番の、塩、のりしお、コンソメ、に加えて限定の麻辣味もあるみたいだ。
「別に今買って明日食べれは良いんじゃないのか?」
「そ、そうだけど……。最近ちょっとアレがアレでね……」
翠嵐はそう言って言葉を濁すと望六は大体の予想がついた。
女子が食べ物関係でアレがという言葉を使うときは大抵、体重の事を気にしている時だと。
「そんなもん気にするなよ。いいか? あそこで一樹と仲良くアイスを買っている月奈だって身体検査の時に増えていたらいしけど、今はそんな事気にする様子すらないだろ? つまりそれが答えだ」
彼は人差し指を一樹達に向けて翠嵐に体重なんて気にするなと説明をする。
すると彼女は最初こそ説明に納得して頷いていたようだが、
「お、おぉ。……ちょっと待て。何故それを望六が知っているんだ?」
急に表情を引き気味に変えて望六から距離を取るように離れていく。
「ふっ、そりゃあ中学の頃から一緒に居るんだ。見れば大体分かる」
だが一体どうしたと言うのだろうか。
特に変なことを言ったつまりはないのだがと彼は不思議に思う。
「望六って意外と危ない人だったりするのか?」
翠嵐は人を疑うよな視線を向けながら聞いてくる。
「何を今更言ってんだ。俺は飢えた狼って異名が「お前こそ何を言っているのだ。馬鹿者」」
望六は両腕を組み最高の決め顔で異名を語ろうとしたのだが、月奈が間に割って入ってきて止められてしまう。
「そんな異名聞いたことないぞ。というか何の話を二人でしていたんだ?」
「い、いやぁその……望六がストーカー的な?」
後から一樹が話に入ってくると翠嵐は戸惑った様子で返事をしていたが、
「「……ほぇ?」」
一樹と月奈はそれを聞いて首を傾げているようだった。
しかし望六は翠嵐が自分の事をそんな風に思っていたのかと……少し傷ついてしまった。
――そのあと全員がコンビニへと集まると翠嵐とナタリアにこういった場所がある事を教えて望六達一向は食堂へと向かった。そこで夕食の時間まで雑談でもしようとなったのだ。
本当なら誰かの部屋でしたほうがいいのだが男の望六達が女子数人を部屋に連れ込んだら、それはもやは問題となってしまうだろう。風紀的な意味でだ。
「さてっと。流石に夕食前だと人が居ないな」
「その方が色々と話せて好都合だろう」
望六達は食堂へと着いて丸テーブルを囲んで座ると月奈はコンビニで買ったお茶を飲みながら言ってきた。確かに色々と聞かれたらまずい事もあるから好都合と言えばそうだろう。
「あのー、突然でごめんなんだけど。もしかして月奈ってあの水崎亜理紗さんの親族?」
するとナタリアが月奈をじっと見ながら訪ねていた。
月奈は突然のことながら目を丸くし表情を固まらせると、
「そ、そうだが……。亜理紗とは私の姉だが、何故分かったんだ……?」
言葉を詰まらせながらも答えていた。
望六と一樹は月奈が亜理紗の事で色々と悩みがある事を知っていたから、敢えて触れないでいたのだが……これは些か厳しいかも知れない。
「んー。苗字が一緒だったから聞いてみた当たっちゃったパターンだよ。ほら、僕の家って魔術デバイス関係の開発しているしね」
ナタリアは直感的に彼女の事に気が付いたようである。
「そ、そうなのか……、しかし、私はあの人とはもう何年も喋っていないから何の情報もないぞ」
けれど月奈は亜理紗の事は何も知らないと言い話を早々に終わらせようとしているようであった。
「うっそマジかよ! 亜理紗さんってあの天才魔装具エンジニアの人でしょ!? ……まさか月奈が亜理紗さんの妹だとは……」
だが続けざまに翠嵐がその話題に食いついてくると、月奈は顔に影を落としながらこう返していた。
「意外だろ? 私はあの人と違って才能も何もないからな」
「んなことないぞ。月奈は月奈でそれが何よりも良い。そして俺より剣の扱いが上手いしな!」
その弱々しく脆い声が聞こえると一樹は直ぐにフォローするかのように月奈に笑顔を向けながら言っていた。やはりそいう気遣いが直ぐに出来るのが幼馴染という絶対的な信頼関係なのだろう。
「ふっ……そうか。ありがとうな一樹」
「当然の事を言ったまでだぜ。礼はいらないぞ」
望六の前の方では幼馴染同士で何やらイチャイチャを始めているようだが、その光景を見ていたのは彼だけではなかったらしい。
「ちょっと! そうやって直ぐにイチャイチャすんの禁止だぞ!」
「そうですの。いくら”幼馴染”だからって、それはずるいと思いますの!」
翠嵐とシルヴィアが机に手を付けて前のめりに出ると抗議の言葉を二人に向けて言い放っているのだ。しかし翠嵐はシルヴィアが言った幼馴染という言葉に絶句している様子だ。
「え……? ちょっと待って。一樹と月奈って”そういう関係”なの?」
「あれ言っていなかったか? 俺と月奈は保育園の頃から一緒だぞ?」
「なん……ですと……」
翠嵐は一樹に月奈との関係を訊ねると彼はド直球の回答をして翠嵐を撃沈させていた。
詳しく言うのなら彼女は机に顔をうつ伏せて動かなくなったと言うべきだろう。
やはり天然とは時に凶器になりうるらしい。
「ま、まぁ。幼馴染同士と言ってもまだ付き合ってはいないんだよな? ならアタシにだってまだ勝機はある筈だ!」
暫くして自身の中で答えを見つけ出したのか翠嵐は復活した様子でガッツポーズしながら強気の口調で宣言するかのように言い放っていた。
「お前はいつも元気で楽しそうだな」
望六は翠嵐にそう言ってコンビニで買ったビーストエナジーを一口飲んだ。
「あったりまえだろ! アタシはそれしか取り柄がないし、だからって好きな人が目の前で取られるのは嫌だ!」
彼の言葉に翠嵐はそう力強く答える。
「……後者は私も同感ですの」
するとシルヴィアも何故か加わり答えていた。
これはいよいよ一樹のハーレム物語の始まりなのかも知れない。
そして中学の時と同じ事が起こるのではと望六は少し心配だ。
あの忌まわしき”バレンタインデー校舎引きずり”事件が。
それは簡単に言ってしまえば一樹が全クラスの女子からチョコを貰って、それに怒った月奈が一樹を縄で縛って校舎を引きずり回していただけの事だ。
しかし何故か途中からそれに望六も巻き込まれたと言う闇話だ。
本当にあれは今考えても意味が分からない。完全に八つ当たりだと望六は思っている。
そしてあの時なぜ自分を巻き込んだのかと望六は聞こうとすると、月奈は頑なに答えようとしないので今も謎のままだ。
「というよりも! アタシはさっきから地味に望六との距離を物理的に縮めに来ているナタリアの事も気になるんだけど!」
「えっ! ぼ、僕かい!?」
翠嵐の矛先は今度はナタリアへと変わったようだ。そして望六が隣に視線を向けると確かにナタリアは距離を縮めてきているようだった。もう肩と肩が触れ合っているぐらいに密着している。
恐らく彼がバレンタインデー事件を振り返っている間にこうなったのだろう。
「ほらついでに言いなよ! アンタと望六の出会いと言うやつをね! アタシは地味に気になってるんだから! それに時間も余ってるから大丈夫でしょ?」
怒涛のマシンガントークで翠嵐はグイグイと攻め込んでくると、意外にも望六とナタリアの出会いに興味があるらしい。
「そ、そんなぁ急に言われても……」
ナタリアが弱りきった声色を出すと表情もそれに比例して困っているように見えた。
「私もそれは気になるな」
「俺も俺も!!」
「私もですの」
だがしかし周りからも同じ声が上がると翠嵐は勝ち誇ったような表情で、
「さあ、多数決でアタシ達の勝ちだぞ! 大人しく話しなさい!」
そうナタリアに告げて困らせているようだった。
「わ、分かったよ……。だからそんなに睨まないで欲しいな……ははっ」
そのままナタリアは苦笑いを浮かべると望六に視線を向けてきたが彼は静かに頷いて答えた。
恐らくそれは『話しても良いかな』と言った確認の視線だったのだろう。
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