6話「下着の色の好みとは」
「まず最初にクラス対抗練習試合の説明を始める。この練習試合は一年のクラス全員が参加して各教員達がお前達の対戦相手を選ぶ。そして試合方法は一体一の魔法バトルだ。幸いにもこのクラスには一樹と望六が一足先に経験しているから色々と聞くといいだろう」
七瀬が淡々と説明を進めていくと同時に、電子黒板も画面が切り替わり次々と情報が表示されていく。電子黒板に表示されているのは主に練習試合が行われる会場とルールの概要である。
「なるほど場所は第一グラウンドで行われるのか。しかし決闘終えてまた直ぐに決闘になるとは……よもやだな」
望六は電子黒板を見ながら呟くと横からはナタリアが何かを聞きたい様子で声を掛けてきた。
「ねぇねぇ、望六は本当にもう魔法バトルを行ったの? というか何で一樹と望六だけ先に試合して他の人達はしてないの?」
ナタリアはどうやら七瀬が放った一足先に望六達が試合をしたという事が気になる様子である。
「あー、そうだな。それには色々と訳があってだな……詳しくは放課後に話してやるよ」
だが確かに一年で尚且つ入学して早々に試合を行うなんて割かし珍しい方だろうと望六は思う。
「それと試合の日程だが今調整している段階でな、決まり次第お前達に教える。あとはお前達が練習試合の日まで基礎と特訓を怠らないように自主トレをすることだ。無論だが成績の悪いクラスは”補習授業”が課せられるからな。休日外に遊びに行きたければちゃんとやることだ。……では以上で連絡事項を終え、今から魔法基礎の授業を始める」
そう言って七瀬は話を終わらせると再び電子黒板を操作して魔法基礎の概要を表示させていた。
それに続いて全員が教科書を開くが、恐らく望六を含めてクラス全員は今こう思っているだろう。
補習授業で休日が潰れるのは非常に痛いと。
ただでさえこの閉鎖空間の学園で毎日生活しているのだ。
土日の休日ぐらい街で羽目を外したいだろう。しかもそれが十代なら尚更だ。
望六に至ってはメリッサとの戦いや祝いの会にて学園に入学してから初の休日を使っているのだ。確かにそのおかげで色々と良い事は起こったが、その間にも外では次々と漫画やラノベの新作が出ている筈なのだ。
ゆえに望六は補習授業なんぞというくだらない事で休日を使いたくはないと思っている。
「きっと思い思いに考える事は違うと思うが、補習授業というのが嫌なのは共通の思いだろうな。なぁ、皆そうだろ……!」
望六は小声でそんな事を言って周りを見渡すとクラスメイト達はそれぞれに反応を起こしていた。一人の女子は机の上で両手を組んで項垂れている様子で、一部女子に至っては最早諦めているのか天井を見たまま動かなくなっているのだ。
「くっ……諦めるなよお前達! まだ特訓すれば可能はあるぞ!」
ざっと見た感じでもクラスメイトの大半は諦めているといった雰囲気が伝わってくる。
そして何を思ったのかナタリアが急に口を開いて、
「僕ね。やっと日本に来て望六に会えたんだよ。……だからさ、いきなり補習授業とか何とかで折角の休日が潰れるのは嫌だな。それに僕は休日になったら望六と一緒に東京を歩いてみたいんだ。だから僕は負けないし望六も負けたら許さないよ」
表情を凛とさせながらも声に重みがあるように言ってきた。
ナタリアの言っていることは冗談や嘘でも何でもなく『本気で勝つよ』と言っているようだ。
「あ、ああそうだな。……ま、負けないように努力しま……す」
その妙に迫力のある言い回しに望六は少し気が引けたが、返事をしないとまずいと思い無理やり声を出した。しかし彼の知っているナタリアはこんなにも強気な性格の持ち主ではなかった気がするのだ。
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それから授業は進んでいき、午後の授業を全て終えるとチャイムが鳴り放課後となった。
望六はやっと学びから解放されると自室で伸び伸びと過ごしたかったのだが、この後はナタリアと翠嵐を学園の中を案内してあげる事になっているのだ。
学園を案内する役は別に誰も良かったのだが望六と一樹が知り合いという事もあり、適任役として選ばれたのだ。というより本人達から直接頼まれたので断れなかったというのもある。
「これで今日の授業は全て終わったね! さっそく学園の中を案内して欲しいなぁ」
「もちろんだ。しかしちょっと待ってくれ」
ナタリアは用具をバッグに片付けながら言ってくると、望六も同じく帰りの支度をしながら返事をする。
しかし思えばナタリアは転校生でありながらも、授業内容で特につまづいてる様子はなかった。
寧ろ自分や一樹達よりも魔法基礎について理解しているように望六は見えた。
やはり魔術留学生の肩書きは伊達ではないのだろう。
「取り敢えず翠嵐がこのクラスに来るまで待ってないとな。昼休憩の時に何組か聞き忘れてしまったし……」
このクラスに彼女が来るのを待つという望六。
「あー、確かに翠嵐の組は聞いてなかったな。てか食堂の方で待ってなくて大丈夫なのか?」
それから一樹が前の席から振り返って聞いてきた。
「ああ、問題ないだろう。多分な」
きっと食堂で待っているよりも、あの手の行動派タイプの女子は下手に動かずに待っていた方が向こうから来て確実だと望六は思ったのだ。
――そして暫く待っていると、
「皆さん、お待たせしまのたの。シルヴィア参りましたわ」
最初に現れたのはシルヴィアであった。
やはり行動派女子は何も言わずともこのクラスへと集まるみたいだ。
……それから更に十分ほど経過すると、
「す、すまなぁぁい! 先生から色々と寮についての話を聞いてら遅れてしまった!」
次に教室の扉前に現れたのは慌てた様子の翠嵐であった。
「時間は全然大丈夫だから気にする必要はないぞ。というかシルヴィアと翠嵐は何も言わずともよくここに集まったな」
望六は二人が当然のようにこのクラスに集まった事に謎の感動を覚えていると、
「何を今更言っていますの? 一樹さんが居るこのクラスに私が行くことは自然の摂理ですわ」
「そうだぞ。一樹や望六が居るクラスに行くのは至極当然の出来事だ」
何故か二人は自信満々の表情で望六と一樹を見ながら言ってきた。
どうやら彼が適当に考えていた行動派女子というのはあながち間違ってはいないようだ。
「あははっ……。じゃあ、皆集まった事だし早速学園案内を始めていこうか」
一樹はシルヴィアと翠嵐の言葉に何とも言えない表情をすると、話題を変えるかのように学園案内をしようと言い出してきた。
「そうだな。いつまでも教室で喋っていてもしょうがないからな」
「ならば最初はコンビニとか日用品が手に入る場所が良いのではないか?」
「うーむ、確かにそうだな」
望六は月奈の提案に賛成するとナタリアと翠嵐に学園の設備を紹介する為に一年校舎を出て、コンビニにがある建物を目指して歩き始めた。
同じ女子同士の月奈が言うのなら間違いはないだろう。
確かに重要な設備としてはコンビニと服屋が併設されている建物を一番先に教えておいた方が良いのかも知れない。あそこには国際ATMも置いてある。それに女子は男と違って身体面がデリケートだから、そういう日用品類が売っている場所を把握しておくのは大事だろう。
「さあ着いたぞ。この中にコンビニや服屋が色々と入っているちょっとした娯楽施設だ」
望六は建物の前に着くと振り返ってナタリアと翠嵐にそう伝える。
この学園では数少ない娯楽施設だ。ゆえにストレス発散とかで多々お世話になることだろう。
「おぉ! 服屋もあるなら特訓でボロボロになっても大丈夫そうだな!」
「うーん……僕に合う形の下着とか売ってるかなぁ」
翠嵐とナタリアは建物を見ながら何かを呟くと、望六は二人に中に入るように促した。
そして二人が中へと入っていくと続いて望六達も中へと入ったのだが……、
「こ、この学園は……ショップの隣に下着を売っているのかい!? なな、なんてハレンチなんだ!」
ナタリアは目を丸くして驚きながら下着コーナーを見て固まっていた。
この反応は望六が始めてこの建物に入った時と恐らく同じだろう。やはり最初に視界に映るとこに下着が堂々と置かれていると、そう言う反応をしてしまうのだろうか。
「ね、ねぇ望六!」
と、そんな場面を望六は眺めてりいるとナタリアが頬を赤く染めながら彼の方を向いてきた。
「んー? なんだ?」
「望六ってさぁ……好きな色とかって……ある?」
何やら手をモジモジとさせて色の質問をしてきた。
一体その質問にはどんな意図があるのだろうかと普通の一般人ならそう思うだろう。
だがしかし望六はあまたのラノベやアニメを見てきた男だ。
その質問の意図は言わずとも分かる。
そう、ナタリアが聞いてきたのはずばり好みの下着の色の事だろうと。
しかしそれが分かった所でどうするかだ。
望六は頭を抱えて悩む……一体自分は何の色が好きだったのかと。
彼は自身の色の好みを考え過ぎて脳内で迷走していると、ナタリアはまだかまだかと目を泳がせながら質問の返事を待っているようだった。
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