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4話「イタリア美少女はまさかの敵側」

「僕の名前は【ナタリア・カヴァロッティ】、イタリアから来た魔術留学生だよ。望六との出会いは三年前の短期留学の時に出会って仲良くなったよ! ……その時に他にも色々と出来事はあったけれど、それはまた今度時間がある時に話すよ」


 ナタリアが簡単な自己紹介を再び聞かせてくれると望六達は黙って頷きながら聞いていた。

 この自己紹介で三年前の留学と言って直感的に分かるのは一樹と月奈ぐらいだろう。


「なるほどな。確かに望六の留学先はイタリアだったからな。俺とシルヴィアが仲良くなったように望六はナタリアと仲良くなったんだな。流石は俺の親友! 何処でも友達を作りやがる!」


 一樹は徐にコップを手に持つと水を飲みながらそんな事を言ってきた。

 しかし今思えば自分と一樹は軒並みに留学先の美少女と仲良くなっているが、これは一体何なんだろうと望六は変な因果律を感じていた。


 これじゃあまるで何処ぞのラノベの主人公のようだと思いながら良いのか悪いのかこれは現実であると同時に、ナタリアが徐々に距離を縮めて来ている事に彼は焦りを募らせていた。


 二人の距離はもう少しで肩と肩が触れ合いそうなのだ。

 しかも彼女からはほんのりと女子特有の甘い香りまで漂ってきて望六は妙に意識してしまう。


「お、おい! 三年前に知り合ったからって望六とそんなにくっつくなよ! ズルいだろ!」

「ズルくないよ。僕はやっとの思い出でこの学園に来たんだから」


 翠嵐は望六とナタリアの異常な距離感を見ると、何かを勘違いしたのか急に席を立ち上がってそんな事を言ってきた。


「ぐぬぬ……ッ! あ、アタシだって望六と一樹ともっと近づいて一緒に居たいっ!」


 だがどうにも彼女の様子を見るに苛立ちの原因はそれだけではなさそうだ。

 そこで望六は視線を一樹達に向けると直ぐに理由が分かった気がした。

 というよりそこの周りだけ熾烈な争いが起きていて嫌でも分かる。


「一樹さん? 私のスコッチエッグ一口どうかしら?」

「ほら一樹、私の焼鯖も一口どうだ?」


 シルヴィアと月奈は互いに一樹に”あーん”をしようと牽制しあっているのだ。

 どうやら翠嵐はその輪の中にまだ入れる余地はなく、それも苛立っている原因のようだ。


「ま、待てよ二人とも! まずは翠嵐の自己紹介を聞く方が先だろ?」

「そうだぞ。シルヴィア、月奈、物事には順序があるのだ。のけ者扱いはいかんぞ」


 一樹と望六は彼女をこのグループに馴染めるように珍しくちゃんとした言葉を使うと、


「うぅぅ……一樹ぃ望六ぅ! やっぱりあんたら好きだよぉぉ!」


 何を感極まったのか急に二人を見ながら好き宣言を放ってきた。

 しかしその言葉は乙女達にとって敏感なようで、その場の空気に一瞬だけ緊張感が走った。


「んんッ……そ、そうだな。言われてみれば初対面の相手を放っておくのは常識に欠けていた。すまない」

「私もですわ。貴族として恥じるべき行為でしたの。申し訳ございません」


 月奈とシルヴィアは彼女に視線を合わせて謝罪をする。


「……き、気にするなよ。別にアタシそんなにメンタル弱くないし……」

 

 翠嵐は自分の髪を弄りながら返していた。そして改めて彼女の自己紹介タイムとなると昼休憩もそろそろ後半に近づいていた。

 

「えーっと。まずは初めましてだな! アタシは中国から来た魔術留学生の【恋翠嵐】で、望六と一樹に出会ったのは二人が修学旅行で中国に来ていた時だな! そこで二人は格好良く、アタシを助けてくれたんだ!」

「……ああ、そう言えばそうだったな。実に懐かしい……ような?」

「何で疑問形なんだよ。そこは普通に懐かしいで良いだろ」


 翠嵐が放った言葉に望六は少し悩むと横から一樹が鋭いツッコミを入れてきた。

 確かあの時の出会いには後々色んな事で面倒事に巻き込まれた気がすると望六は少なからず思い出していたのだ。


「ちょっと話の端を急に切らないで下さいまし。続きが気になりますの」

「シルヴィアと同じく私も気になるな。あの時は男女別での行動だったからな」


 二人は意外にも翠嵐の話に興味を持ったらしく続きを話すように頼んでいた。

 すると二人の反応を見た翠嵐は口角を上げてニヤリとした表情を見せると、


「まぁまぁそう焦らないでよ。ちゃんと話すからさ。んで、その時アタシは何時も通り出店で買い食いしていたんだけど、急に横から覆面男が現れてバッグを奪っていってな……。アタシは突然の事に呆然としていると背後から日本の制服を着た”同い年ぐらいの男子二人”が、その男を追いかけてくれて見後にバッグを取り返してきてくれたんだよ! ……まぁその後もちょいちょい”面倒事”が起きていたんだどな……ははっ」


 まるで自慢話を語るように喋っていた。そして翠嵐が後半に言っていた面倒事と言うのはそのバッグをひったくった奴の仲間が望六と一樹に仕返しをしに来て、ちょっとした乱闘騒ぎになったという事だ。


 あれは望六の中で相当に怖かった出来事の一つで、日本のヤンキーと喧嘩するなんてレベルじゃないとだけは言えるだろう。


 なんて言ったって向こうはチャイニーズマフィアだったのだ。

 拳銃とか普通に所持していて本気で望六が死ぬ覚悟を決めた瞬間でもある。


「なるほど……つまりその同い年ぐらいの男子というのが、一樹さんと望六さんだったという訳ですのね」 

「私が居ない間にそんな出来事があったとはな……。なぜ二人はその事を私に話さなかったんだ?」


 二人は望六達と翠嵐の出会いのきっかけを聞いて頷いていると、月奈が一樹の方に顔を近づけて問い詰めている様子だった。

 

 だが言われてみれば何故、あの時の話しは不思議と誰にも話していなかったのだろう。

 何か理由でもあったのだろうかと望六は自身の顎を触りながら考えた。

 

「特に話す事のほどでもないと思って黙ってたんだよ……。それに月奈に話したら色々と面倒だとか小言を言われるぞって望六が言っていたしな」


 月奈に苦い表情を見せながら一樹は細かに事情を伝えている。


「……マジか。俺そんな事を言っていたのか」


 だが急に望六へと話が飛び火したと思えば、どうやら全ての元凶は彼のせいだったらしい。

 しかし何故そんな事を望六は今まで忘れていたのだろうか。


「ほう望六のせいか。それで? 私に話したら小言が飛んでくるから黙っていたと? ……ふっ、良く分かっているじゃないか」


 そう言って月奈は不敵な笑みを見せてくると望六はどういう反応をしたらいいのか戸惑った。

 これは別に怒っているとう訳ではなく『よく私の性格を見破ったな』っと言った感じの笑みなのではないだろうか。


「ま、まぁ。とにかくこれで全員の自己紹介が終わったよな?」


 一樹は場の雰囲気を締めようとしているかそんな事を言う。


「あら一樹さん、私がまだですの」


 すると横からシルヴィアが静かに手を上げ主張する。


「あ、すまん! すっかり忘れていた……」

「いえ、お気になさらず。では改めまして、私はイギリスの魔術留学生でシルヴィア・ローウェルと申しますの。以後シルヴィアとお呼び下さいね」


 シルヴィアは一樹に軽く声を掛けたあと貴族らしく胸に手を添えて自己紹介を述べていた。

 だがあの胸に手を添える仕草を巨乳の人がすると、自分の胸の大きさをさり気なく自慢しているよに望六には見えてしまう。


「うん分かった! 改めて皆よろしくな! あ、あとアタシの事は呼び捨てで構わないから!」


 シルヴィアの自己紹介に翠嵐は生き生きとした声で返すと相変わらずコミュニケーション能力が高いだけなのか、単純にサバサバしているだけなのか分からない望六であった。


 ――だが、そんな最中でも望六にはナタリアと翠嵐、ひいてはシルヴィアにも聞かないといけない事があるのだ。それは七瀬から言われていた海外勢には気をつけろという警句。

 

 あまりこういう事を直接聞くのは良くないのかも知れないが、友達関係で疑うのも彼としては嫌なのだ。ゆえに今ここできっぱりと聞いておく必要があるのだ。


「……なぁ。突然ですまないが、シルヴィア、ナタリア、翠嵐、は本国とか政府の命令で俺と一樹についての情報とかを探りに来たとかじゃないよな?」


 そう、この三人が国と繋がっていないかという確認だ。偶然にもナタリアと翠嵐は同日に現れて、しかもナタリアに限っては同じクラスなのだ。これは否応にも疑ってしまうだろう。


 周りでは望六の突然の真面目な質問に月奈と一樹以外の三人は時が止まったように動かなくなると暫しの沈黙が訪れた。

 だがその最中シルヴィアが紅茶の入ったティーカップを手に取ると、


「……ふふ、何を難しい顔をして言うのかと思えばそんな事でしたか。ええ、心配要らないですの。私がこの学園に来た理由は一樹さんがここに入学すると報じられていたからですし」


 望六に視線を合わせて軽い口調でそう言ってきた。

 確かにシルヴィアは前にも同じような事を言っていたからこれはあながち本当かも知れない。


 そのまま望六はシルヴィアから視線を外すと次に、ナタリア、翠嵐、に交互に向けた。

 今回一番疑わしいのはこの二人なのだ。

 望六的にあまり人を疑うという事はしたくない。心が痛むのだ本当に。


「あ、アタシは別に国の命令とか関係ないぞ! 本当だ! それにアタシは本来、()()()()から通っている筈だったんだ! 直ぐに一樹達に会いにく予定だったんだ!」

「ん……? まて、それはどういう事だ?」


 望六は翠嵐が言ってきた入学初日という言葉に疑問を抱いた。

 本来なら入学初日から通っている筈だった。一体それはどういう意味なのだろうかと。


「翠嵐すまないが落ち着いて話してくれ」

「……う、うん。アタシはシルヴィアと同じで一樹達がここに入学すると知って急いで入学手続きを済ませて、留学生として入る事が決定していたんだ。でも……入学初日から運悪く変な風邪を引いて昨日まで寝込んでいたんだよ! もぅ!」


 ……ここで望六は翠嵐の言葉の意味が理解出来た。

 本来なら彼女は望六達と同じ日に入学していたが、風邪のせいで今まで安静にしていたと言う事らしいのだ。


 それで今日漸く体調が回復して復帰を果たしたと言う事なのだろう。

 ということはナタリアと同時に現れたのはただの偶然なのだろう。


「そうだったのか、それは大変だったな。今度から風邪引いたら俺が何か作ってやるよ」


 一樹は何時もの天然を発動させたのか男子力の高い言葉を平然と使う。


「ほんとぅ!? 一樹の手料理食べられるの! やったー!」

「おいおい……風邪を引いたらな?」


 翠嵐は彼の手料理が食べられる事が嬉しいらしく満面の笑みを見せていた。

 だが望六は知っている。一樹の料理も旨いが実は翠嵐の作る料理も同じぐらい旨いという事を。


 実は二人は修学旅行中に助けたお礼として飯を食べさせて貰ったのだが、翠嵐の作る激辛麻婆豆腐は最高だったのだと望六の舌は未だに味を覚えているのだ。

 ……だが今は食べ物の事を考えている場合ではない。


「最後はナタリアだけだが、どうだ?」

「んー、余り言いたくはないけれど……仕方ないね。僕は望六が言っている通り”本国の命令”でこの学園に来たよ。もちろん望六達の戦闘データや魔力情報を本国の人達に送るという任務も与えられている」


 ナタリアは静かに淡々と話していくと望六は一番起こって欲しくない事が起きたと実感せざる得なかった。よりにもよってイタリアの友人、ナタリアが自分達を狙っている世界の一人だと言う事実を望六は知ってしまったのだ。


 ……だが不可解でもあった。

 そんな不都合な質問に敢えて素直に答えて何かメリットが存在するのだろうかと。

 望六は幾ら考えてもそこだけは直ぐに答えが出なかった。


 一体ナタリアは何を考えているのか、そして先程から彼女が望六に向けて微笑みかけている意味とは――――

最後まで読んで頂きまして、誠にありがとうございます。

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