23話「特訓は過酷だったが準備は整った!いざ決闘へ!」
「あぁ……。今日も普通科の授業でだいぶ頭を酷使したなぁ」
「そうだな。数学とか訳わかんないぜ」
授業が一通り終わり放課後となった教室で望六と一樹は披露の顔を互いに見せ合っていた。
「お前達は脳筋だからな。そんなんで中間テスト大丈夫か?」
「やめてくれ月奈よ。現実を知りたくはないのだ」
望六は机にうつ伏すと右手を左右に振って無理無理と言った感じを醸し出す。
すると唐突にも横から一樹が、
「いざとなれば勉強教えてくれよな! いつもみたいに!」
そう言って直ぐ月奈に頼ろうとしていた。
そしてそれを見ていた望六は少しは自分でやろうとは思わないのか『この家庭科しか才能のないイケメン野郎』と非議と嫉妬を込めた眼差しを送った。
……だが彼もその輪の中に入れて欲しいと密かに思ってたいたする。
そらから月奈は両腕を組みながら望六達から視線を逸らすと、
「まったく、一樹はいつまで私を頼る気だ。……だがこれも幼馴染という縁だ。仕方ないな。ああ、まったくもって仕方のない事だ!」
満更頼られる事に関しては嫌じゃない様子だった。
寧ろ月奈は一樹に頼られて嬉しいのではないのだろうか。それを踏まえて望六は月奈の口元を何気なく見ると少しだけ口角が上がっているを発見してしまった。
「なんだ望六? 私の顔に何から付いているのか?」
「あ、いやぁ……。何でもないぞ」
彼つい出来心で真意を確かめようとすると急に彼女の顔がこちらを向いて変に萎縮してしまった。やはり女子は視線に敏感と言う事だろう。
「そう言えばさ。望六はこんな所でゆっくりしていて良いのか? たしか先輩と魔法の特訓が「あぁぁ!! やべえ忘れてた!」……やっぱりか」
一樹が特訓という言葉を出すまで望六は完全にその事に関して忘れていた。
春の夕日が心地よくて親友達との会話も良い感じで、彼の記憶からは特訓なんてことは全部まるっと抜けていたのだ。
何なら、かなり和んだ雰囲気すら堪能してしまっていたぐらいだ。
「い、今は何時だ!?」
望六はすぐさま椅子から立ち上がると壁に設置されている時計を見て時間を把握する。
最後の授業が終わって数分経過したぐらいだから、まだそんなには経っていない。
これならまだ先輩との約束の時間に間に合うだろう。
折角特訓に付き合って貰うのだから最低限礼儀として遅刻は許されない。
彼はバッグとデバイスを背中に抱えるとそのまま教室を出ようとしたが、そう言えばまだ一樹を誘っていなかった事に気付いて足を止めた。
一樹も決闘の結果次第では人生が固定されてしまう事から、望六は親友として特訓に誘おうと思っていのだ。
「なぁ一樹。お前も一緒に先輩と魔法の特訓しないか? お前だって決闘で人生が懸ってるんだろ?」
「えっ、良いのか逆に? そんな急に俺を誘っても……」
彼は振り返りざまに特訓の誘いをすると一樹は煮え切らない表情をして戸惑っている様子であった。だが問題はないだろう。
出会ってまだ日がかなり浅いから何とも言えないが、恐らくあの優しい先輩ならきっと事情を説明すれば快く承諾してくれる筈だと望六は自信ありげに考えているのだ。
「ああ問題ない。俺がちゃんと事情を説明するからな」
「本当か! それはありがたいぜ。じゃぁお言葉に甘え「駄目だ! 一樹には私が教えると既に約束をしている。勝手に事を進めるな」えっ?」
一樹がバッグを抱えて席を立とうとすると横から月奈が大きな声を出して会話に割って入ってきた。その突然の出来後に二人の少年はその場で立ち尽くしている状態だ。
「ど、どういうことだ……?」
だが望六は怒っているのか分からない状態の月奈に声を掛けると、
「言った通りだ。既に一樹には私が稽古を付けるという約束を交わしているのだ。ゆえに他の人の力なんぞいらぬ」
何やら急に古臭い言葉を使い始めた。がしかし月奈が言っている事は理解できた。
どうやら一樹は望六の知らない所で月奈と特訓の約束をしていたらしい。
だけどそう言うことなら先に言っておいて欲しいものであった。
でないとこれでは望六が空気の読めない男みたいになってしまうからだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 俺はそんな約束した覚えがないぞ!」
「はぁ? 何を言ってるんだ。私達は確かに約束したぞ。昨日一樹が魔力切れを起こして私が寮に運んでいる時にな」
……何というタイミングでそんな約束を持ち出しているのだろうか。
もっと意識がはっきりとしている時とかを狙って声を掛けた方が良い筈だ。
ついでにこれは余談だが昨日の一樹は午後の授業を終えた時点で意識が朦朧としていのだ。
しかも誰が彼を寮まで運んでいくとかいう女子達の小競り合いまでもが勃発していたのだが、颯爽と月奈が一樹の肩を抱えて消えていったのは良い判断だと言わざる得ないだろう。
「そ、そうだったのか……。じゃぁ俺は月奈と特訓するぜ。すまん望六!」
一樹は両手を合わせて望六に謝罪の仕草を見せてくる。
「あ、いや別に大丈夫だが。……本当に月奈で大丈夫か?」
「ああ? なんだ望六。私になにか不満でもあるのか?」
彼の言葉に月奈は目を野生の狼のように鋭くさせて睨んでくると右手はしっかりと拳を作っていた。間違いなくこれ以上の発言は一歩間違えれば死を意味するだろう。
ゆえに選択を間違えるなよと自分に言い聞かせる望六。
「あー。何でもないです……。すいませんでしたッ!」
「うむ、分かればよろしい」
望六は月奈に向かって真面目に謝罪の言葉とお辞儀を見せると、何とか殴られる前に事が収まったようだった。しかし一体何がよろしいのかは疑問だが深くは追求しまいと彼は思う。
何故ならそれが理由で殴られたくはないからだ。
「……って!? 俺はこんなとこで時間を消費している場合ではない! じゃ、また後でなお前ら! あ、あと二人きりで特訓だからって変な事するなよ」
「なっ!? するか馬鹿者!!」
望六が教室から出る間際にそんな言葉を二人に送ると背後から月奈の照れと怒りを混ぜた声が聞こえてきたが、きっと想像でもしたのだろう。やはりまだまだ十五の少女ということだ。
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望六が教室を飛び出して急いで第二グラウンドへと向かうと既にグラウンドの端っこでは先輩がガントレット型のデバイスを装備した状態で待機しているのが見えた。
「ああやばいな。……もしかしたら怒られるかも知れない」
彼はそのまま先輩の元へと駆け寄ると、
「あ、やっときましたね。遅いですよ!!」
足音で分かったのか顔が勢い良く望六の方へと向いた。
「すみません! これには海より深い事情がありまして!」
取り敢えず先輩を怒らせないようにと、望六はその場で土下座すると事情を話す事にした。
「ちょ、ちょっと! ジャパニーズドゲザはしなくて大丈夫ですから! 周りの目が痛いですから、立って早く!」
「えっそうですか? 一応謝罪の意を体で表現した方が良いかと……」
ズボンを犠牲にして行った望六の土下座は先輩を困らせるのには事足りるようだ。
というより先輩は容姿が綺麗だから人の視線とか慣れていそうだと彼は勝手に思っていたが、そう言えばここは女子が大半の学園だ。慣れていそうと思っていても視線の種類が違うのだろう。
それに思春期男子達がこの学園に普通の共学ぐらい居たら、こぞって先輩のファンになること間違いないだろう。
それほどまでに彼女には人を惹きつける何かがあるように望六は感じられるのだ。
「と、とにかく! 今日は立ち回り方ではなく魔法実技の練習をしますからね!」
「はいっ! お願いします!」
こうして今日の特訓は開始された。やることは単純明快。
魔力を効率よく発動できるように意識を調節したり、多数の魔法を切り替えて発動したりとすることだ。
魔法は学園のサイトからダウンロードすれば直ぐに使えるが、中には練習が必要なものがあるのだ。昨日彼は寝る前に三つほどダウンロードしておいたがデバイスには魔法容量というのがあり、容量を超えるものはダウンロードできないのだ。
言ってしまえばこの辺はパソコンやスマホとかと同じだ。
あとこれはデバイスによって異なるが、通常は三つ程しかダウンロードできないらしい。
アビリティ魔術は特殊ゆえに別枠となっているらしいが。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「ふぅ、今日はここまでにしておきましょうかね」
「はい……。めっちゃ疲れました……」
あれから二時間ぐらい先輩と魔法発動の特訓をしていると、気づけば辺はすっかりと日が沈んでいた。周りには先程まで他の先輩達も居たのだが、相変わらず最後まで残っているのは望六達だけのようだ。
「明日は今日の応用で動きながら魔法の発動をしてみましょうね。それさえ慣れれば基本的に戦える筈ですから」
「分かりました……。が、頑張ります!」
望六は魔法の消費量が激しかったのか息が上がり披露も凄く溜まっているようだが、先輩はそんな彼とは対照的に全然余裕そうだ。
これが紛れもない一年と二年の差だと言う事を、まざまざと思い知らされる。
「ではしっかりと疲れを癒すように! お先に失礼しますね」
「お、お疲れ様でしたぁ……」
先輩は手早くデバイスを専用のケースに仕舞って荷物も抱えると二学年の女子寮へと歩いていき、望六はそれから三分ほど休憩してから自分の寮へと向かった。
流石に特訓が終わった直後に歩けるほど余力は残っていなかったのだ。
そして何とか自分の部屋へと戻ってくると彼の視界には全身を痣だらけにしてベッドに倒れている一樹の姿が映った。
普通ならここで親友としてツッコミを入れるのが責務なのかも知れない。
だが生憎今の望六にそんな余裕はない。もう早く夕食を済ませてシャワー浴びて寝たいのだ。
彼はなに食わぬ顔でその場を後にして食堂へと向かおうとすると、
「おい望六。親友がボコボコにされて倒れているんだぞ。何か声を掛けるべきじゃないのか?」
一樹が急に背後に存在感を出しながら何かを言ってきた。
「……すまないが今の俺にそんな余裕はない。特訓の披露で油断すると意識が飛びそうなんだ」
そこで望六は心中で独り言のように『普通に動けているじゃないか一樹よ』と静寂なるツッコミを入れた。
「俺だって油断したら意識が飛びそうだよ! だがこれだけは聞いてくれぇぇぇぇ!」
何処かテンションがおかしい一樹が両方を掴んで揺さぶってくると、これは話を聞くまで開放されない奴だと望六は悟った。
あと一樹の手を振り払うほどの力も残っていないのは紛れもない事実であった。
「分かった分かった。聞くからその手を離してくれ。あと手短に頼むぞ」
「おう、もちろんだぜ! 実は望六と教室で別れたあと、月奈が直ぐに体育館の使用許可を取りに行ってな。その後は体育館で月奈と只管に何故か居合の練習をさせられて……」
「おい、ちょっと待て」
望六は一樹の話を聞いて大体の流れは理解できたが、居合の稽古で何でそんなに痣だらけになのだろうかと困惑を隠せない。
そして望六が想像している居合いと言うのは藁の棒を綺麗に斬るとかの方だ。
「なんだよ望六。まだ話の途中だぞ」
「……すまないが俺の知っている居合の練習では、少なくともそんなに痣はできないと思うんだが?」
彼は一樹の全身に出来た痣を見ながら言うと顔の部分が一番酷かった。
蜂にでも刺されたのかと思うぐらい腫れている。これでは折角の爽やかな美形も悲惨だ。
「何を言っているんだ? 居合の稽古なんて死闘だぞ? お互いに防具をつけずに戦い合うんだからな」
「えっ、なにそれ怖い」
防具をつけずに木刀でやり合うと聞いて自分より全然ハードな特訓をしているじゃないかと望六は驚愕を越えて恐怖を覚えた。
だが通りで一樹の全身がそうなる訳だと変に納得も出来た訳だが。
「てか、そいういう事なら月奈の方は大丈夫なのか?」
「俺が月奈に向かって刀を向けれると思うか?」
「あー……っ」
望六の素朴な心配は杞憂だったようだ。
確かに一樹が女性に向かって刀を向けると言うのは無理なのだ。
特に幼馴染の月奈に対しては絶対的に。
……だがそんな事でシルヴィア相手に戦えるのかという所もあるが。
「んで? 話は以上か?」
「ああ、以上だぜ!」
「じゃあ、早く飯風呂済ませ寝よう。普通に疲れたわ」
一樹は言いたい事が全部終わったようなので二人は食堂に行って飯を済ませると自室の備え付けのシャワーを浴びて即行でベッドの中へと入った。
まだ消灯までの時間がかなり空いているが二人は一刻も早く寝ることを選んだ。
体が凄く休みたがっているんだと、望六がそんな事を考えていると意識を手放すのにそう時間は掛からなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日も何事もなく授業を終えると望六は披露の体を酷使して先輩の特訓に食らいついていく。
一樹も月奈との稽古を頑張っているらしく、全身に出来ていた痣はもはや最初からそにあったかのように自然なものとなっていた。
勿論最初の頃はクラスの女子達が一樹の痣を見て「えっ! 一樹くんどうしたその痣!? ……まさか同じ部屋のあの白髪に!?」とか言われてあらぬ誤解を受けそうになっていたぐらいだ。
――しかしどうだろう。
二人が特訓を始めて決闘を前日に控える頃には望六は先輩との訓練に息を上げないで付いていけるようになり、一樹は体に出来る痣が日に日に少なくなり成長が目に見えて実感出来たのだ。
そして明日はいよいよシルヴィアと一樹の決闘と望六とメリッサとの戦いである。
だが正直、成長を感じれたからと言っても勝てる保証はどこにもない。
何故なら相手は幼い頃から魔法の英才教育を受けてきた猛者達だ。
ちなみにこの情報はクラスのギャルこと柚南が望六に世間話感覚で話していた事だ。
もしかたら、彼女は意外にも情報屋なのかも知れない。
「なぁ望六。今更だが俺のせいでゴタゴタに巻き込んでしまってごめんな」
「本当に今更だな。いいよ気にすんな。こういう事には慣れているからな」
二人は明日の決闘の事を考えていると緊張して寝れずに、こうしてお互いに消灯時間を過ぎても話し合っている。
明日の試合によっては大きく二人の人生は変わるだろう。
と言っても大きく変わるのは一樹ぐらで望六はただの三年間召使いだ。
言ってしまえば期限が明確にある方がまだ幾分かましに見えるだろう。
……だからと言って気楽に戦えそうにないのは火を見るよりも明らかだが。
「望六、明日は本気で勝ちに行こうな。俺はこの年でまだ……結婚はしたくないぜ」
「もちろんだ。やるからには全力あるのみだ。あとその発言は七瀬さんが聞いたら怒ると思うぞ」
「ほえっ?」
普通に考えて弟に先を越される姉とか悲し過ぎるだろう。
しかしそこで七瀬の色恋沙汰の話は一度も聞いたことがないと望六は思った。
誰か好きな人はいるのだろうかと尋ねてみたい所だが、下手したら生きては帰れないかも知れない。
「まぁ何でもないさ。てか流石に寝ようぜ? 寝不足で負けたとか洒落にならないし」
「それもそうだな。じゃっ、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
望六は目を閉じると意識が夢の中へと落ちるまで脳内で立ち回り方をイメージしていた。
――それからあっという間に決闘当日の朝を迎えると、
「二人とも起きているな? 今から第一グラウンドへと向かうぞ。付いてこい」
「「はいっ!!」」
着替えを終えて準備万端で待機していると部屋に七瀬がやって来て二人を会場まで引率してくれるようだ。
「さて、恥ずかしくないような戦い方をしないとな」
望六はそれを自分に言い聞かせるようにして部屋を後にするのだった。
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