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20話「ブルマを履いた体操着の女子達&魔法実技ー前編ー」

 急いで着替えないと七瀬に怒られることが分かっている望六達は教室を飛び出すと、残り数分という所で一樹が絶好の着替える場所を見つけてくれた。

 そう、その場所とは――


「まさか図書室とはな! それは盲点だったぞ!」


 一樹が見つけ出してくれた場所は学園の知識が詰まっている場所。

 通称、図書室と言われる場所だ。

 確かにここでなら女子達の目も届かないし何の文句も言われないだだろう。


 しかし図書室とは言えば寡黙な読書女子との神聖な出会いの場所だが……そんな所で着替えるとなると些か望六は変な興奮が体の内から湧いてくる。

 ……だが、今はそんな事で悠長に興奮している場合でない。


「急いで着替えるぞ一樹!」

「おうよ!」


 望六の言葉に一樹が返事をすると図書室へと入り、バッグに詰め込んでいた礼装へと着替え始めた。

 魔法実技の授業では安全面を考慮する為に礼装に着替えることが必須条件となっているのだ。

 もし礼装を忘れたら走って寮まで取りに行く羽目になるとかないとかだ。

 

「てかさ。気になるんだけどこの礼装って服? 完全に見た目が中学の体操着だよな?」

「ああ、言われてみれば確かにそうだな。本当にこんな服で魔法から守って貰えるんだろうか? ……うーむ不安だ」


 学園支給の礼装を片手に一樹が的確な事を言ってくると望六は礼装の上着を手にして注視しながら観察すると不安を抱かずには要られなかった。


 確かにこの礼装はお世辞にも格好良い見た目とは言えないだろう。

 まず半袖半ズボンという時点で普通に駄目だろう。

 中学生の体操着と言われたら間違いなく納得してしまうレベルだ。

 

 本当にこんなので授業で教えて貰った通りに、魔法攻撃を防げたり火器から放たれた弾丸を防げるのだろうか。望六には不安と疑問しか頭の中に残らなかった。


「よし、俺は準備万端だぞ!」

「同じく俺もだ」


  一樹と同タイミングで望六も着替え終えると、やはり一樹はどんなに格好悪い服でも良い感じに着こなしてイケメンボーイになってしまうようだ。

 見た目は完全に爽やか陸上部員と言った感じだ。


 彼は改めてイケメンというのは何かと得で羨ましい限りだと思うと同時に、顔面交換魔法とかあったら一樹と交換してやりたいものだと心中で呟く。


「にしても、お前のデバイスは本当に真っ白だな」


 相変わらず凡ゆる光を反射して輝きを放っている一樹のデバイスを見ながら望六は言うと、


「まあな。これは姉貴が現役の時代に使っていた物だから大事に扱いたいぜ!」

「……そうだな。俺も色々と訳あって優佳さんから託されたデバイスだから大事にしないとな」


 託され方は各々で違うが託されたからには立派に使いこなせるようにならねばならないだろう。

 そして一樹は片手剣デバイスを背負うように固定しいた。

 

 どうやら一樹は望六と違ってデバイスを付ける箇所が違うみたいだ。

 彼の場合は腰にデバイスを付けているが、その理由は至ってシンプル。

 何故なら刀のように格好良く扱ってみたいじゃないかと言う中二病的な発想があったからだ。

 

 だけど日本刀に近い刀型のデバイスとかもちゃんと存在するのだ。

 寧ろ望六と一樹が持っているデバイスは西洋のショートソードに近い作りをしている。


「でもあれだな。学園支給のデバイスは色味やデザインが皆無でザ支給品って感じだったな」

「うーむ、確かに。月奈のデバイスも全体的に灰色ががっていたし特徴的な箇所は無かったからなぁ」


 二人は礼装とデバイスを身に付けて着替えを終えると、望六が何気なく放った言葉に一樹は手を顎に添えて答えていた。


 そう、望六達が持っている魔術デバイスと学園支給の魔術デバイスとでは大きくデザインが異なるのだ。支給品は全体的に灰色をしていて地味だが、それは本当にただ魔法を練習する為だけに作られたような事を伺わせるのに充分であった。


「って無駄口叩いてる場合じゃないぞ! あと三分しかない!」

「なにっ!? 折角早く着替えても意味ないじゃないか!」


 一樹が壁に掛かっている時計を確認して焦りの声色で教えてくれると、望六達は急いで図書室から出て集合場所の第一グラウンドへと向かった。この学園は本当に時間に追われる場所なのだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 


「ちゃんと時間内に集まれたようだな」


 第一グラウンドへと到着すると望六達の目の前にはジャージ姿の七瀬が両腕を組み仁王立ちしながら待っていた。やはり見るからに遅れて来ていたら罰は免れなかっただろう。

 だが望六はそんな事よりも視界に広がる超マニアックな光景の方に興味が津々だった。


「おいおい。女子達のあの姿って伝説の体操着のアレじゃないのか……?」


 彼が震える口で声を絞り出すと自然と右手はガッツポーズを取っていた。 

 女子達も同じく体操着類だとは予想していたのだが……まさかそれが”ブルマ”だと言うと事に望六は驚きを隠せないのだ。


 何時からか自然と社会から消えていった伝説の体操着。

 そう、それはまさに伝説の礼装とでも言えるのではないだろうかと。


「まったく、この学園のセンスは一級品だな」


 何気に美女揃いの一組のクラスメイト達は誰がブルマを履いても凄く似合うのだ。

 いや、寧ろ似合わない筈がないのである。


 普段ニーソやタイツで隠されている生足には傷もなく美しく肌は十代特有の瑞々しさもあり、見るからに弾力もありそうで思春期男子の劣情を掻き立てるには充分な情報量である。


「おい望六、女子に見蕩れているのは構わんが先に列に並んでおけ。あと二分で授業開始だ」

「はいっ!」


 七瀬にはしっかりと見抜かれていたらしいが、そんな事はお構いなしに望六は今日一の元気な声で返事をした。


 そしてこの列はどうやら席順を模しているらしく望六と一樹は最後尾の端っこのようだ。

 ……と言う事は言わずもがな、一樹の隣は月奈なのだろう。


 望六はあの堅物な月奈がこの伝説の体操着を着ていると言う事を想像するだけでもエロいと思っているが、きっと視線を向けたら問答無用で腹を殴られるに違いないと言う事も分かっていた。


「よう月奈。その礼装似合っているぞ!」

「か、一樹!?」


 一樹が背後から声を掛けると月奈は体を大きく跳ねさせて反応すると赤面した顔を見せていた。

 だがそれを見ていた望六は一体それはどっちの反応なのだろうかと頭を悩ませる。

 似合っている事についての反応なのか、その礼装が恥ずかしいから見ないで欲しい方の反応なのかと。


 だが悩んでいても答えが出る訳もなく普通に気になるので彼は一樹と同じ言葉を掛ける事にした。


「よう月奈! にあ「お前は言うな。どうせ胸と足を見て言っているだろう」……あはぁ」


 途中で言葉を遮られると見事に月奈は望六の内面を当ててきた。

 やはり中学の時に胸を見過ぎた前科持ちの彼は警戒されているようだ。


「全員無駄口は辞めろ。これより一学年の魔法実技を行う」


 七瀬が先頭に立って言うと周りで喋っていた者達は全員口を閉じた。 

 これはカリスマ性が高い七瀬の技量あってこその技だろう。

 

 しかし今更だが七瀬は礼装姿じゃないのかと望六は落胆した。

 彼は密かに胸元が開いている露出度の高い礼装を楽しみにしていたのだ。


「だが最初に少しだけ座学を行う。まずお前達も知っているだろうが、魔法にはいくつかの属性がある。それらは、火属性、水属性、雷属性、といった基本のものから特質属性と言った変わったモノまでな。そこでお前達に質問だ。同レベルの火属性と水属性が戦ったらどっちが勝つと思う?」


 普通に考えると火属性と水属性が戦ったなら相性的に水属性が勝つと思われるが、望六は様々な環境や状況を考慮して更に考え込んでいると前の方で一人の女子が手を上げて答え始めた。


「はいっ! 水属性が勝つと思います!」

「そうだ。確かに一般的な考えでは水属性が勝つな。これが相性という概念だ」


 やはり相性というのは戦う上で大事な要素らしい。

 けれど望六はそもそもが無属性だから相性と言うのは関係ないのだ。

 その代わり基礎魔法攻撃の威力とかが劣るが汎用性は他の属性に比べて高い。


 それゆえにWM学園にはこんな風潮があるのだ。無属性は威力も弱い故に人数も少ない。ある意味凄い。逆に凄い。無属性使いは総じて=無能者と言われている。

 恐らく無属性と能無しを掛けているスラングだろう。


 さらに言うなら通常Bランク以上で何かしらの属性が付く筈で、それすらもないとなると素質が無いに等しいと見られるのだ。


「ではもう一つ聞くぞ。同じ属性同士の者が戦ったらどうなると思う?」


 七瀬からの次の質問は同じ属性同士の事についてらしく、確かにその事は望六は一度も考えた事が無かった。……いや、そういう次元にすら思考が到達していなかったのかも知れない。


 だがしかし、普通にそこは魔術士の技量や練度に比例するのではないのだろうか。

 ゲームで例えるならレベル一の戦士がレベル百の魔王に勝てないのと同じように。


「……はぁ。誰も答えられないのか? 単純な事だぞ。同じ属性同士が戦ったのなら練度の差が勝敗を分けるのだ。いいな? よく覚えおけ。そして魔法を幾度となく練習しろ」


 誰も答えないことに七瀬が痺れを切らしたのか溜息混じりで答えを言ってきた。

 それを聞く限り、やはり望六の考えであっていたようだ。


「あとこれは魔術士において基本の心構えだが、魔術士同士の対決では気品と勇敢さを重んじる傾向にある。だから競技者を目指す者はその辺を意識するように」


 気品と勇敢さと謳っているが、あんな過度に露出している礼装を着て戦う事に気品はあるのだろうかと、その辺りは望六からすると微妙な所だったが露出度については最高だと言えた。

 

「次に最後となるが、私の目標はお前達を魔術留学生に勝たせる事だ。ゆえに厳しい課題や訓練を課すだろう。しっかりと付いて来い。拒否権は無い、いいな?」


 魔術留学生については分からないが一樹が手を出したシルヴィアも確か留学生だった筈だ。

 この学園には他にも留学生が居るのだろうか。


「うーむ。だが何で七瀬さんはそんなに留学生に勝たせる事に拘るんだ?」

「あれ~? 望六しらないのー?」


 彼が漏らした独り言に反応するかの様に横からキャピキャピした声が返ってくる。

 望六が横を向くとそこには席順の列を無視したのであろう柚南がこちらを見ていたのだ。


「あれ? なんでその列に「まぁまぁ細かい事はやめやめ」お、おう……」

「それよりも! 望六は魔術留学生について何も知らないの~?」

「ま、まあ。お恥ずかしながら……」


 あっという間にギャル特有のペースに飲まれると望六は柚南から魔術留学生についての情報を得る事ができた。というか柚南は何でそんな事を知っているのだろうか、特段その手に詳しい人には見えないだがと望六は思う。

 

 そして魔術留学生とは各国の魔法成績が優秀な者、もしくは著名人の推薦により他国の魔術士育成機関に好きな期間留学できるという事らしい。

 しかも留学生は軒並みAランクで将来国の中枢を担う人物が多いとのこと。

 

 だから七瀬はそんな留学生達に負けいないように全員を鍛えたいという心があるのだろう。 

 五月に一年魔導対決も控えている事から、そこで全力を尽くせるように。

 

 と言うより本当に何でそんな濃い情報を柚南が知っているのだろうか。

 だが望六はそれらについて深く聞くことは出来なかった。


 何故なら女性のプラベートに足を突っ込むような質問は苦手だからだ。仮に聞いてから「きもっ」とか蔑んだ目で言われたら一週間は引きこもるぐらい自信はあるのだ。


「まあでも、この第一WM学年に留学生が多い理由ってきっと世界的にも有名な宮薗センセが在学していたからだろうねぇ~。だって宮薗センセは”二つ名”を魔導国連からもらってるしー」

「二つ名?」

 

 望六は柚南から気になる中二病的な単語が聞こえてくると先程までの疑問は直ぐに塵となって消えた。今はその魔導国連から貰ったと言う【二つ名】の方が気になるのだ。

 

「そうそう。魔導国連から二つ名を貰うってことは最強の証みたいなもんで~。世界的に数人しか居ないらしいし~。確か宮薗センセの二つ名は【雷鳴の魔術士】って言って世界最強の雷の魔術士に与えらえられる二つ名だった気がする~。あと余談だけど日本にはもう一人二つ名を貰っている人が居て、その人は【青嵐の魔術士】って言われていてあの有名な柳葉家師範の優佳様だったはず~」 

「えっ!? マジでか!」


 軽い雰囲気で次々と望六の知らない事を話してくる柚南。

 彼はただそれを唖然として聞く事しか出来なかった。


 なんせ望六は柳葉家でずっと暮らしていたが、そんな二つ名一度も聞いたことがないのだ。

 そして本当になんで柚南は自分より詳しい事を知っているのだろうかと、望六は疑問が増すばかりであった。


 ……だけどもしかたら自分が無知なだけであって、それは広く見れば一般的に有名なことなのかも知れないと望六は少し思った。

 

「おいそこ! 無駄口を叩くなと言っただろ!」


 望六の声で気づかれたのか七瀬の怒声で注意が入る。

 すると横に居る柚南は彼に近づくとそっと耳元で、


「ねぇねぇ。あーしの事は名前で呼んでいいよ」


 とだけ言って元の列へと戻っていった。


「なな、なんだと……!?」


 耳は弱いから辞めて欲しいのだが、そんな事よりも女性を名前呼びして良いという事に望六は嘗てない喜びを噛み締めている。


 中学ではこの見た目のせいで全学年の女子達から避けられていた彼だが、何だか人間的に一歩前進した気がするのだ。


 ……それでも現在進行形でクラスの大半から避けられているのは変わらないが、彼は余りの深く考えない事にした。これぐらい慣れっこだから問題ないのだ。


 だけど柚南は噂とか聞いている筈なのに躊躇なく自分に話しかけてきた事に望六は違和感を覚えていた。彼はってきりギャルというのは噂に敏感だから他の女子と一緒に嫌悪感を込めた視線で見てくる側だと思っていたのだ。


 だがそれは偏見と言う奴かも知れないと望六は心の中で「すまん柚南」と謝罪の言葉を述べた。


「よし、それでは同じ属性同士で組みを作れ。その方が手っ取り早い」

「はいっ! 宮薗先生!」


 指示が出されると透かさず一樹が挙手をして七瀬を呼んだ。


「なんだ?」

「月奈は特質属性だから俺と一緒に組んでもいいでしょうか! あと望六もついでに!」


 一樹の言葉に七瀬は悩むように片手で前髪を鷲掴みにすると、望六は自分がついで感覚で言われた事に少しだけ苛立ちを抱いた。

 そして七瀬が口を開くと、


「まあ構わんだろう。お前達は三人で組め」


 どうやら無事に許可が出されたようだ。


「はいっ! ありがとうございます!」


 一樹は笑顔で返事をしていたが、望六は無属性と言う事で自分が二人の足を引っ張るのではないかと心配だった。

 しかしそんな彼の考えは些細なもので、周りからは小声で攻撃的な言葉が聞こえてくる。


「あの月奈って女子なんかズルくない?」

「そうだよね。ずっと一樹くんのそばに居て彼女ヅラしてるし」

「ただ水崎様の妹だからって調子乗ってるんだよきっと」


 堂々と言わずに声量を落として言うあたりが、嫌味とうかみみっちいように伺える。

 だが幸いにも一樹と月奈には聞こえていない様子だ。


 ――その後は各人が属性同士で組みを作って大幅に周りとの間隔を空けると、まずは魔法を発動させるための基礎。詠唱が課題となった。

 

「ははっ。やっぱり俺も男だな。いざ実技となるとテンションが高鳴ってきやがるぜ」

「だな! 俺も同じだぜ望六!」

「はぁ……。単純細胞かお前達は」


 いざ実技が始まると二人はテンションが爆上がりしている様子だが、月奈はそれを冷ややか目で見ると頭を抱えて呆れている感じであった。


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