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2話「少年は再び例の視線を向けられて自覚ス」

 学園行きの電車に無事乗車出来ると望六は寝不足ということもあって隣に座っているナタリアに学園に近付いたら起こして貰うように頼むと、昨日の木本と遭遇した夜の出来事を思い浮かべながら耽るのであった。


 第一に木本に何故そんな怪しい格好をしているのかと望六は訊ねると、その答えは実に簡単で尚且つ事前に教えて欲しいとう気持ちがあるのもであった。そう、木本は七瀬に頼まれてゴールデンウィーク中はずっと宮園家と望六達を監視していたのだ。


 それは偏に学園という守りがなくなった彼らを心配してのことらしいが木本曰く休み期間に入って学園から生徒が全員居なくなったと同時に、何者かが情報データベースにハッキング攻撃を仕掛けたらしく急いで教員達が防御プログラムを起動して凌いだらしい。


 そして狙われた情報は望六と一樹の二人だけであって他の生徒達の情報は無傷であったとのこと。それから七瀬は直ぐに何処からハッキングをされたのか亜理紗に逆探知を行わさせると、それはアメリカからの攻撃であることが判明したらしい。


 ハッキングについては何とか防衛プログラムが間一髪で間に合って二人の情報は流出しなかったらしいが、念のために七瀬は見張り役兼護衛として変装させた木本を送り込んだらしいのだ。


 そうして一通りの事情を聞いたあと望六はスタンガンを持った女性に襲われた事を話すと、木本は顔を顰めて何処か電話を掛け始めて数分話した後終えると”明日は昼までに学園に戻るように”と強めの口調で言ってきたのだ。


 本来ならば一学年は十八時までに学園に戻っていれば問題ないのだが、こういう経緯があって望六は駅構内を走っていたり目覚ましの事を気にしていたのだ。


 けれど学園がハッキング攻撃を受けたことや木本が見張りをしていることを全員に話すと、それは要らぬ不安要素を与えるだけだとして望六は一切の情報を話すことを木本によって禁じられた。


 だから彼は頭を捻って一樹達にはコンビニに向かう途中に木本から電話が入って自分達だけ学園に戻る時間が早まったとだけ伝えた。当然理由を聞いてくる者達もいたが一方的にそう言われて電話を切られたと言って誤魔化したのだ。


 そして木本が話を終えた所で『ここで私と会ったことは忘れろ。いいな? でないとお前が言いつけを破ったことを七瀬先輩に報告するからな』と妙に脅すように言うと、望六は即座に頷いて答えるが同時に何故それを自分に話すのかと疑問を覚えて聞き返した。


 すると木本は『お前は狙われている身だからな。事前に知っておいた方がいいと私が判断して話した。だからこのことは一樹になら話していいが他の者には話すな。決してな』と言って手を数回叩いて話を終わらせると、そこから望六の記憶は曖昧となり気づいたら今日の朝になっていたという事である。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「お……の……ねぇ」


 望六が脳内で昨日の出来事を思い出しながら寝ていると、電車の揺れが止まると同時に横からぼやけた女性の声が聞こえてきた。


「……ま……わた……」


 彼の耳には暫くぼやけたまま女性の声が聞こえていたが横で物音がすると同時に声が別の女性のものに変わると、そこで漸く望六は自分が今起こされていることに気が付くと急いで瞼を開けようとしたのだが――


「さっさと起きないか! 馬鹿者ッ!」

「いっ!? 痛ってぇぇぇえ!」


 それよりも先に月奈の鋼のように硬い拳が見事に鳩尾にめり込むと、望六は腹の底から叫び声を上げて両手で腹部を抑えて動けなくなった。


「さ、流石に寝起きで鳩尾に入れるのは危険なんじゃぁ……」


 横で事の成り行きを見ていたのであろうナタリアが若干頬を引き攣らせてながら口を開く。


「大丈夫だ。この程度の攻撃でくたばるような男ではない」

 

 両腕を組みながら月奈は威圧感を放って彼の打たれ強さに絶対の自信を持っているようであった。

 

「ぐっ……な、なに……その微妙な褒め方は……」


 それを聞いて望六はこんな状態で褒められても仕方ないと痛みを堪えながら顔を上げる。


「ふんっ、何でもいいだろ。そんなことよりも起きたのなら、さっさと降りるぞ。既にシルヴィア達は先に降りて寮へと向かったからな」


 彼から顔を逸らすと月奈はサメの絵柄の入ったバッグを背負って先に一樹やシルヴィア達が電車を降りて寮へ向かったことを言うと、確かに望六の周りにはナタリアと彼女しか姿は見えなかった。


「へいへい。……ってかそんな焦らなくても良いのにな?」


 彼女に言われて座席の上から荷物を下ろしながら望六は軽口を叩くが、荷物を抱えたことで腹部全体に鈍い痛みが広がると少しだけふらついた。


「あー……女の子には色々とやるべき事があるんだよっ!」


 何を考えていたのか目を泳がせながらナタリアは頬を少しだけ赤くさせると恥じらいの篭った様子の声色でそう言ってきた。


「……そ、そうか」


 彼女の言葉から何とも言えない雰囲気を察すると望六はこれ以上は深く聞けないと本能的に思い、勝手にシルヴィアや翠嵐が女の子日なのかと想像して自分を納得させた。


 ――それから列車に残っていた三人は各々が自分の荷物を持って学園前の駅に下車すると、そこには二、三年の先輩方が同じく荷物を抱えながら数人で何やら楽し気に話し込んでいた。


「先輩方は何でこんなに学園に戻る時間が早いんだろうな? 一学年だったら本来、十八時までに戻ればいいのに」


 甲高い声を出しながら屯している先輩達の方を見ながら望六は何気なく呟く。


「んー、やっぱり学年が上だと色々とあるんじゃないかな」


 そんな彼の隣ではナタリアが人差し指を自身の顎に当てながら何処か冷やかな視線を彼女らに送っていた。


 ……だが二人の視線に気が付いたのか数人の先輩方が顔を合わせるように視線を向けてくると、望六と目が合った瞬間に全員が表情を顰めて一人の女子は手で追い払うような仕草まで見せてきた。


「あー……そうだった。俺ってば殆どの女子から嫌われているんだっけか。ゴールデンウィーク中は冷たい視線や憎悪を向けられることもなく幸せだったなぁ」


 久々に禍々しい威圧を孕んだ視線の数々を身に受けて感じると望六は学園に戻ってきた事を再認識させられて、如何に休み期間が素晴らしかったかしみじみと実感すると早くも次の大型の休みに気持ちを馳せていた。

 

「チッ、望六に対してあんな態度を見せるなんて許せない。ちょっと文句の一つや二つ言ってく――」

「やめとけ。そんなことよりも今は寮に戻る事が先だ」


 苛立ち混じりのナタリアの舌打ちが聞こえた瞬間に、これは止めないと面倒事になると思えて望六は敢えて被せるように声を出す。


「……ちぇっ、望六がそういうのなら仕方ないかぁ。でも普通に癪だから顔だけはしっかりと覚えておこっと」


 暫く無言の間が空くと彼女は唇を尖らせてそんな事を言っていたが、先を歩く月奈が立ち止まって目を細めながらこちらを見ている事に気が付くと二人は慌てて再び歩き出すのであった。



◆◆◆◆◆◆◆◆



 そして望六達が寮へと戻って寮長室で七瀬に戻った事を報告すると、彼女は大分疲れているのか目の下に隈を作っていて淡々とした会話を済ませて直ぐに解散となった。

 

 だが彼女の視線は何かを言いたそうにずっと揺らめいていて、望六はその事が終始気になり気づくとあっという間に夕食も終えて時刻は二十時頃であった。


 廊下からは賑やかな話し声が聞こえたりすると、そこで望六はふとゴールデンウィーク前に”デイヴィス先輩”から無理やり渡された魔法の存在を思い出した。


 何故なら明後日から普通に魔法実技の授業は始まり、そこでは恐らく一年魔導対決に備えての特訓が行われる可能性が高いからだ。ゆえに望六はデイヴィスから渡された魔法を駆使して実技授業や魔導対決を有利に進めたいと思ったのだ。


 以前の戦いではこの魔法をデイヴィスが使用して完膚なきまでに望六を痛めつけて敗北を与えたのだ。その魔法の力は折り紙つきで使わない手はないのである。


「……よっと。ちょっと夜風に当たってくるわー」

 

 ベッドの上でアニメを見ていた望六は起き上がると、そのままデバイスの入ったケースを手にしてシャワー室で体を洗っている一樹に声を掛ける。


「あいよ~。風邪引かないようにな」


 水の流れる音と共に返事が戻ってくると、彼は玄関へと向かって靴を履くと急いで第一グラウンドへと向かうべく走り出した。

 それは偏にデイヴィスから渡された”身体強化”の魔法を練習する為である。

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