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カノン先生と闇の魔法使い

私の名前は花咲カノン、現在二児の母親をやっています。

魔法少女の活躍により、なんとか少子化の危機を乗り越えた日本でしたが、

その次にはさらなる問題が待ち構えていました。

新しく生まれた子供達は、なんと恋愛や結婚に超奥手だったのです。

そんな面倒臭い性格の彼らの為に、私は臨時講師として子供達に性教育を行う事になったのでした。


「……という訳で、男性器はとてもデリケートな部分です。

性行為の際には優しく触れて、決して粗雑に扱わないようにしましょう。」

カノンはそう言いながら黒板にその特徴を書き記した。

「せんせー、どうしてそんなにおチンチンに詳しいんですかー?」

生徒の一人が意地悪く質問する。

「それは……えっと……、過去に男性とお付き合いしていた事がありまして……。」

私は少しドギマギしながら答えました。

「え!?せんせー彼氏いたの!?」

「どんな人だったんですか!?」

「イケメンだった?」

教室がざわつく中、カノンは頬を赤らめます。

「とても素敵な方でしたよ……。その方は私の事をいつも大事にしてくれて……。」

カノンによる性の勉強会はいつもこんな感じで続いていくのであった。


そして放課後を終え、家までの道を疲れた様子で歩き続けるカノン。

「はぁ……、なんで私がこんな事までしなくちゃならないんだろう?」

そう呟きながらも彼女は考える、魔法少女に安息が訪れるのは何時になるのだろうかと。

私がいくら頑張ったところで、この世界の未来が明るくなる事は決して無いのではないかと。

「もう止めちゃおうかな、こんな事……。」

小さく溜息を吐くと、カノンは自分の大きな胸に目をやった。

「…それは困りますね。」

突然物陰から声がする。

「だ、誰!?」

警戒するカノンの前に現れたのは、黒いローブに身を包んだ怪しい男だった。

「あなたは……!?」

「初めまして、かな?花咲カノン殿。」

男は恭しく頭を下げると自己紹介をした。

「名乗るほどの者ではありませんが、ここは闇の魔法使い…とでもお呼び下さい。」

「え!?闇の魔法使いって……!?」

驚愕するカノンに男は続ける。

「そうです。あの日…貴女を助ける為に、お母さんに力を貸した魔法使いの一人ですよ……。」

そう言って男が指を鳴らすと、周囲の景色が一変する。

「ここ……は……?」

そこは先程までいた街とは似ても似つかない薄暗い森の中だった。

「私達が貴女を助けたのは、貴女がこの国の未来を背負うに相応しい人物だと考えたからです……。」

男は静かに語り出した。

「そして……貴女には我々の期待に応える義務がある……。」

「義務、ですか……?」

「そうです。」

男の言葉にカノンは考える、一体彼は何を言っているのだろうか? すると男が何かを両手持ってカノンに向けて腕を伸ばす。

カノンが驚いて身構えていると、男は彼女の顔にオレンジの眼鏡をかけた。

「な……なによこれ!?」

慌てるカノンに闇の魔法使いは淡々と告げる。

「貴女はこれから子供達の手本となって戦わなければならない……その為の仮面ですよ……。」

「そうやって人任せにして、貴方達が自分でやったらどうなんです?」

カノンは少しムッとして反論した。

その詰問に、男はヤレヤレといった感じで返事をする。

「出来ればそうしたいのですがね、我々はまだ『女体の神秘』について完全に解き明かせていないのです。」

そう言うと、闇の魔法使いは素早くカノンの背後に回り込みました。

闇の魔法使いはそのまま彼女の耳に舌を這わせながら囁く。

「…その秘密が解明されるまで100年、いや200年かかるかもしれない。それまでの間、我々魔人に代わり、貴女のような女性が子供達にその精神を伝えていかなければなりません。」

「だからって……こんなっ!」

「忠告しておきましょう…、子供達を侮ってはなりません。」

最後にそう言って彼は闇の中へ消え、カノンは元の小道へと戻っていた。

そして、男に贈られたオレンジの眼鏡に彩られたその面持ちは、

以前よりもほんの少し、理知的に見えていたのだった。


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