母と娘、リズムとカノン。
私の名前は花咲カノン。
昨今は日本でも男女間の争いが激化し、大きな抗議デモが開かれるようになっていました。
そして私は魔法少女として、その戦いを止めるべく日夜奔走しているのです。
そんなある日のネット掲示板での出来事。
匿名で集まった有志達が密かにある議論をしていました。
「みんなにこれを見てほしい。」
ある一人が掲示板に動画をアップします。
そこには傷だらけになるながら女性達を説得する魔法少女の姿がありました。
「これってマジカル☆カノン?」
別の誰かが質問をします。
「なんでこんな事になってんだよ……。」
「もう少し資料が無い事にはなんとも言えませんね。」
何人かが各々の意見を掲示板に書き込みました。
それに答えるように、似たような動画や画像が次々に貼り出されていきます。
「クソ!どうしたら良いんだ……。」
誰かが頭を抱えるようなコメントを投稿します。
「みんな!これを見てなんとも思わないのか。」
最初に動画をアップしたらしき人物が言葉を続けました。
「彼女は、俺達の代わりにあの女達の相手をしてくれているんだぞ!」
しばらく掲示板の書き込みが止まり、沈黙が流れました。
「俺らに何が出来るって言うんだよ。」
誰かが吐き捨てるような言葉を綴ります。
「そうだ、あれはあの娘にしか出来ない!彼女だから出来るんだ。」
「じゃあ俺達はこのまま何もせずに見てるだけなのかよ。」
「仕方ないじゃん。下手に出て行ってもまた、女性差別がー…、とか言われるだけだぜ?」
「そーそー、現代は男女平等なんだから。」
「じゃあ、このまま黙って見てろっていうのか!」
掲示板は徐々に荒れ始めました。
その中には、魔法少女の事を謂われなく貶めるような言葉もありました。
そうして何十もの投稿により議論が続けられる最中の事です、
『あの娘を助けなきゃ!!』
そんな書き出しで始まる書き込みがされました。
その書き込みをした人物はかつて魔法少女に命を救われた人物でした。
それを皮切りに他の者からも同じような意見が投稿されていきます。
「そもそも俺達は男女平等なんてどうでも良かったハズじゃないか?」
「そうだ!俺達はただ、可愛い魔法少女が活躍する姿が見たかっただけだぜ。」
「あんな苦しそうな戦いはゴメンだ!」
掲示板に和やかな雰囲気が流れ始めました。
「でも助けるったって、具体的にどうするんだ?」
「やっぱり直接応援に行くとかかなぁ?」
そんな時です、ある人物からこんな提案がありました。
『その役目、俺が引き受ける!!』
その人物は自らが身体を張って魔法少女を救うと宣言をしました。
それからまたしばらく話し合いは続きましたが、最終的にはこの案に全員が賛同する事になりました。
そして、彼らは魔法少女カノンの元へ向かいます。
「はぁ……はぁ……。」
彼女は魔法の杖を抱え、ボロボロになりながらも戦いを続けていました。
「うう……もうこんなの嫌なのに、魔力の暴走が止まらない……もう抑えきれないよぉ……。」
最早限界を迎えつつある私は、そう言って泣きじゃくっていました。
「やれやれ、もう根を上げるの?情けない魔法少女ね。」
カノンの耳に馴染みのある声が聞こえてきます。
私が声をする方へ目をやると、そこには母のリズムがいました。
「お母さん、どうしてここに?」
その問いにすぐさま彼女は返事をします。
「全国各地の、闇の魔法使い達に頼まれたの。あんたを救って欲しいって。」
そう言いながら、お母さんは私に笑い掛けました。
「えっ……、それってどういう事?」
私が疑問を問いかけると、
「変身!マジカル☆チェンジ!!」
呪文を唱え、リズムは魔法少女に変身しました。
「みんな、行っくよーーっ!!」
リズムの掛け声とともに、何十もの援軍達がやって来ました。
彼らが魔力を放出すると、そのエネルギーはお母さんの元へ集まっていきます。
「最初で最後の晴れ舞台。マジカル☆リズムの魔法を見せてあげる!」
そう言って彼女は自身の魔法の杖を掲げました。
「マジカル☆カノン、覚悟しなさい!この一撃はみんなの願いの結晶よ!」
「出でよ、マジカル・ハンド!!」
リズムがそう唱えると巨大な魔法の腕が出現します。
さらに彼女が杖を振るうと、魔法の腕は私の身体を包み込みました。
「きゃあっ!な、何を!」
「心配はいらないわ。ママが優しく、その魔力を解放してあげるから。」
そうしてお母さんは私に近づき、傷付いた身体を抱き寄せます。
「我慢する事はないの、辛い気持ちや悲しい気持ちは、ぜーんぶ吐き出してしまえば良いのよ。」
そうしてしばらくお母さんに抱き締められた後、私は魔法の杖から大量の魔力を溢れ出させました。
その魔力の渦はまるで竜のようなうねりと共に天高く上っていきます。
そして成層圏まで到達すると、一つの塊となり、次の瞬間一気に弾けました。
「見て、カノン…。あなたの愛の力が、世界に降り注いでいるのよ。」
ボロボロになったその身体を抱擁し、リズムが微笑みながら妹に語り掛けます。
魔力を出し尽くした私の魔法の杖は小さく縮んで、いつの間にか元の大きさに戻っていました。
「今までよく頑張ったね、あんたは私の自慢の娘だよ。」
こうして、私の中から解放された魔力が日本中に降り注ぎました。
「うう……、お母さん……。」
私はうわ言のようにそう呟き、彼女の胸の中で深い眠りへと落ちて行きました。
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