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ジーク・フリード(2)

さて翌日、二郎さんは再び我が家を訪れました。

「昨日から色々考えたのですが、私が父親である事は、あの子には伏せて置こうかと思います。」

それを聞いて、彼くんが答えます。

「ありがとうございます。カノンも、それで良いよな?」

彼くんは私を見て言いました。

「うん、私もそれで良いと思う。」

そう言ってカノンは頷きます。

「ではとりあえず二郎さんは『私達の古い友人』という事であの子には伝えておきますね……。」

「はい、宜しくお願いします。」

そしてカノンは客間を出て、長女を呼びに行きました。


「ねぇ、この人はお母さん達の昔の友達でね。貴女も赤ちゃんの頃に少しお世話になったのよ?覚えてないかしら…。」

そのように、カノンは娘に嘘を吐きました。

「やぁ、久しぶりだね。すっかり大きくなって。」

二郎さんはそう言って長女に挨拶します。

「はじめまして。ごめんなさい、私おじさんの事、全然覚えてなくて…。」

娘は二郎さんにそう言いました。

「ああ…気にしないで。どんな綺麗な子になってるか、一度見ておきたかっただけだから……。」

そう言って彼は優しく長女を抱き締めました。

そうしてしばらく雑談をした後、娘は部屋を出て行きます。

「今日は本当にありがとうございました。また何かありましたらご連絡しますね。」

帰り際、二郎さんは私達にそう言いました。

「はい!僕等も、あの子が幸せになるよう親として精一杯の事をしてあげるつもりです。」

彼くんはそう言って二郎さんを見送ります。

「あの、二郎さん……。」

玄関を出ていこうとする二郎をカノンは呼び止めました。

「はい、なんでしょう?」

(あの子はいずれ魔法少女になって苦しい戦いに挑む事になる…。)

闇の魔法使いさんに言われた事が、私の頭の中に木霊します。

「いえ…、また…会いに来てあげて下さいね。」

カノンがそう言うと、二郎さんはニコリと笑って去って行きました。

「カノン、どうしたんだ?何か言いたげだったけど。」

二郎さんを見送った後、私は彼くんにそう聞かれました。

「ううん……何でもないわ。ただ……あの子が幸せに暮らせますようにって、思っただけ。」

私がそう言うと、彼は私の頭を撫でてくれました。

「そうだな。僕達があの子を幸せにしてあげよう。」

そう言って彼は私を優しく抱き締めてくれました。

(でも……私は……本当にあれで良かったの……?)

そんな疑問が、私の中でモヤモヤと渦巻いていました。

「闇の魔法使いさんに、連絡しないと。」

そうしてカノンはスマホを取り出し、メールで今日の出来事を彼に報告しました。

すると、闇の魔法使いさんからも返事が返ってきます。

「…こちらは今インドの西側にいます……。」

その内容を読んでいる最中、カノンは急に悪寒に襲われました。

なんだか、闇の魔法使いさんがこのままどこか遠くへ行ってしまうような、

そんな嫌な予感を感じたのです。

「なにこれ……?なんだか凄く怖い……。」

私はとっさに、彼を止めなければと感じメールを送信しました。

「闇の魔法使いさん、もういいんです。一度日本へ帰って来て下さい!」

そして何度かやり取りをした末、彼はカノンの説得を聞き入れ、インドから日本へ引き返すと言ってくれました。

「良かった……。」

カノンは一安心して胸を撫で下ろします。

しかし…、突如彼女を襲った不安感が一体何なのか、それは結局最後まで分からず仕舞いでした。


数日後、長めの海外旅行から闇の魔法使いさんが帰国し、カノンの所へ会いに来ました。

「良かった、心配したんですよ?なんだかとても嫌な予感がして。」

カノンは優しく笑いながら言います。

「大袈裟ですよ、別に怪我なんかもしてないし、ピンピンしてます。」

けれど私の不安はまだ拭えていませんでした。

「闇の魔法使いさん。しばらく、外出は控えてくれませんか?」

彼女は俯きながら、彼にそうお願います。

「一体どうしたって言うんです?顔色も何か優れないようですけど…。」

闇の魔法使いさんは不思議そうに聞きました。

「分かりません。でも…凄く嫌な確信があるんです。このまま進めば、きっと貴方は魔王になって殺されてしまう!」

カノンの顔は青ざめて、今にも泣きそうになっていました。

「カノンさん……、分かりました!信じましょう、貴女の直感を。」

「ありがとう…、ございます。」

彼女はホッとして、そうお礼を言います。

「ですけど、これから俺はどうしたらいいんでしょうか…?」

闇の魔法使いさんは困ったように私に聞いて来ました。

「そう、ですね…。とりあえずお家で待機していて貰えませんか?私も以前のように、遊びに行きますから。」

カノンは少しずつ考えながら言います。

「うーん…、不本意ではありますが。貴女がそう言うのであれば、そうしましょう。」

「マキさんも、この人の事…守ってあげて下さいね。」

私がそう言うと、部屋の外で待っていたマキさんが入って来ます。

「別にいいけどさ、カノンちゃんは一体何を気にしてるの…?」

マキは闇の魔法使いの隣に座ると、怪訝そうに尋ねました。

「実はよく分かないんです、私にも…。けどマキさんには魔神の加護が付いていますもの。私はもう充分幸せです、でもここで貴方を失ったら本末転倒なんです。」

カノンは優しく、泣きそうになりながらそう言って微笑みました。

「今度は私が、貴方を守る番です。」

こうして、闇の魔法使いさんは自宅でしばらく隠遁生活をする事になったのでした。


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