始まりと出会い
一度は思ったことがあるのではないだろうか。
こんな能力があったら。こんな力があれば。
自分にあって人にない。でも、自分になくても人にはある。
人々は平等ではないのだ。
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5月。
木々が咲き乱れ、春色の風が吹き始める頃だ。
晴れて、高校二年に進級した俺は淡い期待を抱いて足を進めた。
教室と廊下を隔てる扉を開き、勇気を持って自らの席へ向かう。
奇跡的に席は窓側の1番後ろ。
学生の中では、1番いいとされる席だ。
隣の席に人がいることに気がつき、そちらにそっと目を向ける。
茶髪でショートカット。顔は綺麗系に当てはまるだろう。
割と当たりの席かと思っていたら、目が合った。
『何?』
「いや、なんでもない。一年間よろしく。」
『・・・』
なんとも接しずらい人間だなあと思いながら、視線を前に戻した。
『お前ら。席につけ。』
先ほどまでガヤガヤしていた生徒たちが大人しく席に着く。
『今年もよろしくだ。担任の藍沢遼だ。』
『今年も来年もこのクラスのメンバーは変わらない。仲良くするように。』
要はクラス替えがないのか。
俺の納得をよそにそのまま淡々と話し続ける。
『今年から昨年までと違い、君たちには思考力や教養を身につけてもらう。』
『いいか。昨年度までとは違うんだ。君達の中からリタイア者が出ないことを祈るよ。』
その言葉の後、クラス内の全員が息を呑んだ。
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『では、最初の授業と行く前に、1人編入生を紹介しよう。』
『岩崎。立って自己紹介してくれ。」
自己紹介なんてやった事はないが少し気張って臨むとしよう。
「えー。岩崎悠斗です。趣味は読書。得意なことは特に無いです。」
「よろしくお願いします。」
一瞬静まった後、パラパラと拍手が空間を支配した。
その時俺は察してしまった。
「ミスったぁ…。」
これからの高校生活。どうなるんだろうか。