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番外編② 国議会合同議員事務所爆弾事件

 2003年9月16日、現職の国議会議員たちが執務を行う合同議員事務所に小包が届いた。宛名がなかったため警備員が中身を検めようと開封したところ、爆発。救急車で病院に搬送された警備員は顔と上半身に重度の火傷を負ったが一命を取り留め、のちに退院して職場復帰を果たしている。


 小包の底面には事件当時の革新党党首、ディーター・フリードリヒ氏への脅迫文が書き込まれていた。脅迫文の中で犯人が名乗った名前から、本事件を『グロースクロイツ事件』と呼ぶ場合もある。のちに判明したことだが、グロースクロイツとはヴァレンシュタイン公共放送で放送中だった連続サスペンスドラマの主人公の名前からとられたものだった。


 政治的メッセージを帯びた犯罪であったことから、熱心な政治活動家の犯行ではないかと噂された。4日後に迫っていたフランスでのG7財相会議との関連も囁かれた。一方で警察は、ある高校生の情報提供を得たために当初から少年による犯罪の疑いを強めていた。小包と爆弾のつくりからして、配達中に爆発しなかったのが奇跡といえるほど簡素で粗末なものだったためでもある。


 ほどなくして、事件当時14歳の少年に出頭命令が下された。その少年は命令に応じて警察署に出頭すると、聞き取り中に犯行を認めた。彼が語った動機は承認欲求だった。国政政党の党首を暗殺すれば有名になれると考えたのだという。警察に情報提供した高校生とは幼馴染で、爆弾の作製方法は高校生がインターネットで知って少年に教えていた。


 警察が発表した容疑者に国民は衝撃を受け、1999年のギルベルタ・ランガー事件が記憶に新しかったこともあり、誤認逮捕を疑った。さらに遡って1990年のテレビスタッフ殺害事件という前例から、またも未解決に終わるのではという声もあった。だが警察は地道に捜査を続け、筆跡鑑定や指紋、商店での購入履歴などから少年の犯行であると断定し、捜査を終了した。


 2004年7月5日、警察の捜査が身を結び、少年に有罪判決が下された。未解決事件ばかりを扱っていると警察がまるで何の役にも立っていないように感じるかもしれないが、実際には本事件が物語るように野次馬の無責任な声に左右されることなく日々事件解決へ向けた捜査を行っているのである。




 2023年8月31日、本事件の被害者となった警備員が定年により退職した。最後の勤務を何事もなく終えた彼を警備員仲間と現職国議会議員、そしてフリードリヒ氏など事件当時の議員たちが花道で見送った。フリードリヒ氏から花束を受け取った警備員は「あの事件を解決してくれた警察には感謝している。少年とはもう長いこと連絡をとっていないが、更生していることを願う」と語った。

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