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第8位 ブラント議員一家殺害事件

 2017年5月14日。保守党所属のヴァレンシュタイン国議会議員だったクラウス・ブラントさんとその妻と息子、合計3人がレストランで夕食をとった帰り道、車に乗った2人の人間から銃で撃たれた。犯人たちを乗せた車は護衛や警察の追跡を振り切り、夜の闇に消えていった。3人はすぐに病院へ運ばれたが、いずれもその日の内に死亡が確認された。特にブラント議員に関しては頭を撃ち抜かれており、即死であったとされている。


 翌日となる月曜日の朝、国議会本会議場に全議員が集められ、ブラント議員及びその家族へ黙祷を捧げた。アレクサンダー・ルッツ国務局長会議議長(以下首相)は午後に会見を開き「暴力では何も変わらないことを証明する。警察は事件解決に向けてあらゆる手段を講じてほしい」と語った。ヴァレンシュタイン警察の威信をかけた捜査が始まったのである。


 この事件で真っ先に疑われたのは世界統一委員会と名乗る国際テロ組織だった。ブラント議員は『世界統一委員会被害者の会』がバックにいる議員であったためだ。 世界統一委員会は当時、欧州同時多発テロに代表される破壊活動を繰り返しながら、新たな世界を構築する反権力思想を掲げ、世界中で若者たちのカルト的支持を得ていた。


 しかし、世界統一委員会のトリスターノ・アンチェロッティはインターネット上にアップロードした動画で事件への関与を否定した。そのイタリア人スポークスマンは動画内で「我が委員会を不当に貶めるつもりであれば、ヴァレンシュタイン政府を名誉毀損で訴える」と脅迫してみせた。


 一方、このような凶悪事件には往々にしてあることだが、我こそは真犯人だと名乗る人物も多数現れた。そのほとんどは目撃証言と矛盾する発言をしたり、現場検証の結果と一致しない特徴を持っていたりしてすぐに容疑者候補から外されたが、エルザ・ハルツハイムをはじめとした4人の女子大学生は非常に説得力のある証言を行い、警察内部にも彼女たちが犯人なのではないかという意見が広がった。


 しかしエルザ犯行グループ説にも疑問が残った。その最たるものはエルザたちの射撃の腕前である。かのケネディ米大統領暗殺時と同程度の距離のヘッドショットを、本格的な狙撃経験のないエルザたちに実現できただろうか。2018年8月26日、世界統一委員会は日本で壊滅した。それを受け、警察は本事件を世界統一委員会によるテロリズムであるとし、具体的な容疑者を特定しないまま捜査を終了させた。殺人事件に関する時効が存在しないヴァレンシュタインにおいては異例のことである。




 ルッツ首相はその後の2018年、財務局長の脱税に関する任命責任を問われ、ヴァレンシュタイン初の国議会解散に踏み切った。解散に伴う選挙でルッツ首相は落選、政治家としての生命を絶たれた。さらに2022年には自身の収賄容疑で逮捕され、有罪判決は避けられない状況となっている。

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