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43 レイナエターナ

「これがレイナエターナだ。俺がやって来た場所だ」


黒い巨大な影は所々角張っていて見ようによっては建物にも見えた。

ミーアやパルは、覗き込むようにホログラムに張り付いている。


「これは……お城でしょうか?」


「まあ、そんなところかな」


ミーアの言葉へあからさまにサモンははぐらかす。

それを聞いたケイバンやミリスは苦笑する。

以前 “空飛ぶ船だ”と聞いたはずだが、いつものサモンのように面倒なので説明を省いたのだと理解した。


実際はケイバンやミリスに話したとおりで“空飛ぶ船”である。

それも厳密には違うのだが、そのほうがわかりやすいだろ。

正式には“惑星開発用星間巡航機構”というものだ。

いわゆるテラフォーミングマシーンである。

一番近いイメージとしては翼のある船だろう。

あくまでもニケ達シスターズ用なので、レイナエターナ自体が機械であるという認識で良い。人が移動のために乗り込んでも、人の安全を保障するような機能がないため最低限の移動しかできない。(生活自体は可能)

そしてレイナエターナの管理はシスターズの残留組で行われている。

先に名前が挙がった“ブリティカ”は、レイナエターナ残留組の責任者だ。

普段の資材の支援や監視、転送に連絡といった支援はここから行われており、サモン達にとってのバックヤードになっている。


そういったこともあり、サモンにとってはレイナエターナを“船”と呼ぼうが、“城”と呼ぼうが構わない。

むしろ初めてサモンがこの地に降り立ったときに使用されたものが船であり、現在の住居だ。


しばらくホログラムに張り付いていたミーアが、サモンへと顔を向けた。


「これがお空に浮かんでいると?」


「ああ、ここからは見えないほど高いけどね」


おそらく地上から3万キロ上空だと言ってもミーアにはイメージが沸かないだろうし、信じないだろう。

月が存在していれば話しやすかったのだが、この星には現代の月に相当するものが存在しない。

レイナエターナでいるときにニケ達に調べてもらったのだが、あった痕跡すらもないようだ。

理由はいろいろあるだろうが、それを受け入れるしかない。

無いものは無いのだ。


「ここからやってきたと?」


なぜかミーアはサモンを睨みつけた。

どうやら疑っているようだ。

だがサモンは言いたいことを悟ったかのように迷惑そうな表情を作った。


「ああ、でも神とか言わないでくれよ」


その言葉を聞いてミーアは表情を和らげた。


「ええ、まあ。一瞬そうかとも思いましたがこうしてお話もできますし、我々とは違う人だということだと理解しました。それに勇者さん達とも違うのだということも」


よほど勇者は嫌いなようだ。


「まあ、そういう理解でいいよ。別にどう思われるかは問題じゃないからね」


「そうですね。ニケさんだけでなくそのお仲間もですが、このような“お城”まで持っているのに妙なことばかり始めているのですから、我々とは違った思考や知識がある方だと理解しました」


「いや、そんな変人みたいな理解じゃなくていいよ」


ミーアは別にサモンを変人扱いしたいわけではない。

むしろ過去に戦に介入し殲滅戦をおこなった者であろうと、一時的にも戦を終わらせ、新しい価値観や知識、技術を広めようとしているサモンは別格だと言いたいのだった。


「いえ、これはお褒めしているのですよ。少なくとも召喚された勇者のように迷惑しか掛けない者達に比べれば、この世界に新しい道を示してくれていると思います」


「う~ん、貶されているのか、褒められているのかわからないが、これまでどおりの付き合いができればいいよ」


「もちろんです。こちらのほうからお願いしたいくらいです。それとニケさんのお仲間もお一人お借りできれば」


お願いと要求のセリフをミーアは笑顔で決めた。

ニコニコしながらの大胆な要求を他の者に、“この娘、キモが太い”と思わせた瞬間だった。

この要求にしばらくサモンは悩んだ後、“直接の護衛と連絡のみ”ということで了承することにした。

サモンはニケに護衛のシスターズをお願いすると、その後ミーアとパルを連れて学校長のマルティナのところへ向かった。


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