2 鋼の大森林
そして月日が経ち、この“鋼の大森林”に対して両国共に外交特使等が拒絶される中、エルフやドワーフ、獣人などの種族が砦周りに住み始めているという噂が流されるようになる。
人が集まればそこに商人達が向かうため、やがて真相がだんだんと明らかになってくる。
そこでは拠り所のないエルフが庇護を求めて住み始め、続いて獣人やドワーフ等が庇護を求めて集まりだし、今では街の様相をみせているという。
森の外からはわからないが、街の様子はすでに王都よりも快適だという。
その証拠に商人たちの持ち帰る品物は高価なガラス類であったり、季節外れな野菜であったりと驚くほど不思議なものではないが、これまでの物流の常識とは異なるものであった。
また、街は堀と城壁に囲まれ、その中での生活は特に壁があるわけではないが、種族毎に住み分けられ、それぞれが自治を行い、街全体の事案に関しては合議制を取っているとされている。
また、商人などは商業区と呼ばれる地区にしか入れないが、商業や冒険者等のギルドも小規模ながら存在し、うまく運営されているとのことであった。
特筆すべき点としては、元々荒れ地であった場所に堀や川があることと、各建物にはボタンを押すだけで水や火が出たり、夜には部屋や道で明かりが灯るという。
しかもこれらは魔法を一切使用していないという。
これらが見聞きしてきた商人達や冒険者達が口を揃えて言う事実であり、“噂話”であった。
そしてやがて聞こえてきた話の中に、その冒険者ギルドの長の名前の中に“ケイバン”という名前が囁かれだした。