14 プレゼンテーション
今、壁にはウォルケン皇帝やリヒト伯爵が見たこともない絵が映し出されてはいた。
映し出された内容は理解できない物でもなく初めは驚いていたが、建設における目的やその将来性についての理解が及ぶと一気に真剣な表情へと変わっていった。
主な内容は以下となっていた。
1 建設予定地は帝国側が無償で提供する
2 建設予定地の選定は鋼の大森林側の意向に沿う
3 建設は鋼の大森林側に一任し、鋼の大森林側が無償で行う
4 運営は協会を立ち上げて協会が主体となる
5 協会については商業ギルド、冒険者ギルドから少なくとも1名以上参加する
6 運営方法については一定期間”鋼の大森林”側がサポートする
そして一通り説明を終え、サモンが質問を受け付けると、ウォルケン皇帝やリヒト伯爵の矢継ぎ早な質問攻めを受けることになった。
質問についてはサモンも簡潔に答え、特に財源についての質問には具体的な説明を行った。
1 初期の財源は皇帝:領主:商業ギルド:冒険者ギルドを出資者とし、それぞれが一定の割合で負担。
2 競技の活性化、運営費の財源維持・強化を目的とした勝敗札の発行
3 1年を1期として区切り、次期に出資者に報告を行い、出資割合に対して利益から分配金の還元
といったウォルケン皇帝やリヒト伯爵の協会への参加を、メリットを交えて説明を行い、両者の関心をおおいにひいた。
中でも “勝敗札の発行”については、ウォルケン皇帝やリヒト伯爵も聞いたこともない発想で、おおいに興味をひいたようだ。
勝敗札とは当然サモンの知識の中で、トトカルチョをイメージした提案だった。
ただし、複雑なものとはせずに単純な勝敗のみとした。
また今回の提案はグラール聖王国にも同様に提案することも伝えられた。
さらにグラール聖王国も含めた地域間の協会を統括する大陸協会を置くこととし、当面は鋼の大森林の協会が兼務することを付け加えた。
ただしこの大陸協会については、各協会間への連絡やスケジュール調整といった事務処理を行う部署とし、各協会への干渉が目的ではない旨を添えている。
なお現在では、ヴァンクローネ帝国・グラール聖王国・鋼の大森林のチームは1・1・3のチーム数となっており、合計5チームの総当たり戦が行われている。
そのため、昨年は年10試合が行われ、各試合にわずかではあるが勝利チームに賞金が出ている。
将来的に規模が拡大すれば、それなりの賞金額にすることも可能であることも伝えた。
またサモンの展望として、これらに伴って付随する経済的な活性化が見込まれていることを説明した。
それは、やがてこれらの試合を見る人々が増えれば注目を集め、これに乗じて名を売ろうとする者が現れるだろうと前置きしたうえで説明を始めた。
具体的にいえば貴族に商品を売り込む御用商人だ。
御用商人は一定の名誉とそれに付随するブランドという信用を得ることになる。そしてそのブランドによってさらに商売の範囲を広げ利益を上げていく。
これと同様に、競技者に物を提供する者や着ている服などに名を売りたい者の名前を刺繍したりする者が現れるだろうということだった。
競技場の空いているスペースをそのために貸すこともできることも説明し、これを広告と呼びサッカーというスポーツの商業化の可能性を示した。
この世界でサモンが広告の概念を示した瞬間である。
これにはウォルケン皇帝やリヒト伯爵は喜び、二人の目は金貨のように輝いているようだったと後にケイバンは語った。
このように会談は帝国側の利益にまで触れ、食事も忘れて3時間以上に及んだ。
その結果早急に、街の北西側の土地を確保と明後日からの着手を取り付けることができた。




