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11 魔素

その後サモンが語った話をまとめるとこうだ。

1 魔法は自分自身や周囲の魔素を利用した術法であること

2 魔法を利用した分の魔素はさらに周囲から供給され、主に大地に眠る魔素から吸い上げられる

3 よって利用された魔素分だけ大地の中から吸い上げられる。たとえるならばマグマや地下水のようなもの

4 適量を汲み上げるならまだしも一気に大量に汲み上げればそれだけその通り道は広がり、大量に沸き上がり、限度を越えればいずれは山が噴火するような状態に陥り、その地上周辺は大量の魔素に埋め尽くされることになる

5 すでに過去に何度も荒野”アンファング”にて、ヴァンクローネ帝国VSグラール聖王国の戦が行われており、すでに魔素“口”は臨界を越えていた

6 先の戦の際に大規模な魔法陣の使用が見られたため、やむなく蓋をし、その後の戦時にも使用を認めた場合のみ殲滅した

7 なぜ、警告なり話し合いを行わなかったかについては切迫した状況であったこと。さらに、上記の話が到底通じる知識を持ち合わせているとは思われなかったためである


一言でいえば魔素の暴走を止めるために両国の戦に介入したということである。

確かに魔法の行使は自分自身や周囲の魔素により発動させていることが知られている。

それは地域によって魔素の濃度の違いがあり、濃度の高いところはボルテックスポイントと呼ばれ、先の戦が行われた現在の”鋼の大森林“のある場所が、その一つである。

だからこそ大きな戦に都合がよかったわけだ。

しかしなぜそのような場所があるかは研究されておらず、一般的には魔素の泉ぐらいにしか認識されていなかった。


黙って聞いていたシュネーだが、いきなり“魔素の暴走”と言われても理解が追いつかない。

シュネーには、魔素の増加ぐらいでは魔素酔い程度ぐらいにしかならないと思えた。

だからこそ“そんな程度で多くの騎士や兵士を”という思いが沸き上がる。


「馬鹿にしているのか。警告してくれれば、無駄死にする者は出なかったかもしれないんだぞ」

「確かにね。だけど警告を無視することも十分にあるよね。特に今の話を理解できたかい?魔素は知っていても、それがいつでもどこにでもあって、自由に使えて湯水のように湧き出ている。何もリスクもなく使いたい放題だって思っていたんじゃないかい?…まあ、疑問に思ったこともないんだろうがね」


真っ直ぐ見つめながら問い詰めるサモンに、シュネーの怒気は押されていく。


「そんな魔法の使い過ぎで、ボルテックスポイントが暴走するなんてことは聞いたことがない。確かに、魔素に関してはそれほど深く考えずに……」

「だろう。ギルドマスターの君でさえそれじゃ、もっと上の人達はもっと信じられないだろうね」

「だがそれでも……」


シュネーには魔素の暴走がそれほど重大なことを引き起こすとは思えず、サモンの言葉に共感は持てずにいた。

だが続いて紡いだサモンの言葉に衝撃を受ける。


「2回だ」

「に、2回も?」


シュネーは魔素の暴走というだけでもにわかに信じがたいのに、それが2回もあったことには驚きを隠せない。


「ああ2回だよ。過去に魔素の暴走が起きているのは」

「過去に魔素の暴走?お前になぜそんなことがわかる!」


シュネーにもギルドマスターというプライドがある。

もちろん長年冒険者をやってきた経験からも、この国のあらゆること知り尽くしていると自負していた。

そんなプライドからか語気が強まる。


しかしそんなシュネーをよそに、サモンは続ける。


「時間をかけて調べたからさ」

「調べたって?何を……」

「いろいろとね。地形に遺跡、その周りの状況から土の下まで。それと君たちの伝承や書物なんかをいろいろとね」

「……」


シュネー達冒険者にとって遺跡や洞窟などは、徘徊する魔獣の狩場にしかすぎず、危険な場所に行って、魔獣を倒し、その素材などを持って帰り利益を生みだす場所でしかない。

どこに何があり、何がいるかぐらいしか調べることはない。

サモンはそれ以上のことをしたと言っているのだ。


「その結果言えるのは、確実にこの世界は2回滅んでいる。ま、もちろん完全消滅まではいってないけどね。その証拠に君たちがいる。君たちの存在がその証拠だよ。人種っていうのはしぶといね」


仰け反るように上から目線で物言うサモンに憤慨し、シュネーはさらに語気を強めた。


「馬鹿な、そんな話は聞いたことがない。そんな記録もない。どこにそんな証拠がある!」


そう確かに帝国内の記録を見ても、世界が滅んだ過去など記されていない。

大陸最大派閥を誇るアリア真聖徒教や最古を誇るアムネジア教の聖典にもそのようなことは読み取れない。

まあ、大きな大戦があったが、文明が滅亡するほどではない。

だから確信を持ってシュネーは否定できたのだ。

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