10 許せぬ定石
サモンの驚愕すべき言葉にシュネー達は戦慄し、部屋は静まり返っていたが、
「横からすまんが、こ奴の言っていることは恐らく可能だぞ。5年前もやろうと思えばできたはずだ」
と、今回は口を閉ざしていたケイバンの言葉がサモンの力を裏付けした。
さらにサモンは補足を加える。
「そうだね。帝国と聖王国の両方とも失くしても良かったんだけどね。そんなことをする理由もないしね。僕らにはあの場所が必要なだけだったし、他は必要がなかったんだよ」
そんなサモンの言葉にシュネーは疑問を持つ。
「それほどまでの戦力を……それだけの力があるのなら、あれほどの犠牲者を出さずとも威を示せたのではないか」
シュネーは言葉を発しているうちに自身の感情が抑えられなくなってきた。
「ま、選択肢の一つではあったんだけどね。大がかりな魔法陣の用意をしてたからさ、思わず介入しちゃったんだよね」
サモンはシュネーの感情を理解していないのか、こちらは相変わらずの平常運転であった。
そのためかシュネーは段々と言葉尻に力が入る。
「思わず介入って、“大がかりな魔法陣”って戦術級の魔法陣か?確かに戦術級魔法陣なら大きな戦では勝負の肝となるからあの戦でも用意はしていたのだろう。むしろ戦術級魔法陣ぐらいはなければ戦での勝算は薄い。そんなことは戦の常識だ」
確かにこの世界の戦局はいかに上位の魔法を行使するかによって決まることが多い。
たとえば一人の強大な魔術師に大勢の軍勢が倒されるということもあるのだ。
当然これに対抗する魔術も当然あるため、国同士の大きな戦いでは一概には言えなくなるのだが。
「常識と言われてもあの場では使ってほしくなかったんだよ……いや、極論をいえば魔法自体を使わせるわけにはいかなかったんだ。おまけに“トリガー・ハッピー”な勇者まで連れてくるし」
「なんだ“トリガー・ハッピー”って、それよりも“魔法自体を使わせるわけにはいかない”とは、どういうことだ?」
理解不能な理由と迷惑そうなサモンの口調に、未知の力を持つであろうことも忘れシュネーはさすがにいらだってきた。
しかし次の瞬間、表情はそのまま変わらないが、サモンの雰囲気が一変したように感じた。
「そうなるよなあ、それが面倒なんで一気に片をつけたつもりなんだけど……いいかい、一度しか言わないからちゃんと聞いてなよ」
圧力は感じないが、語るその眼には確かに拒絶を許さぬ力を感じた。
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