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第95話 混沌へ向かう世界

 戦いを終え、翌日――。


 俺たちはアースガルズで一晩を過ごし、“ミズガルズ動乱”――と名付けられることとなった先の一件の事後処理に当たっていた。


「さあ、キリキリと情報を吐いて貰いましょう」

「ひ、ひぃっ!?」

「拒否権はないわよ。ね、おチビさんたち」

「は、いぃっ!」


 なんと独房に赴いて取り調べしているのは、二人の王。無論、アースガルズ本国による事情聴取も並行して行われているのだが、今は街の復興を最優先に動いている為、敵エースへの警戒も考慮してこんな異例の事態が起こっている。

 まあこの二人に任せたからこそ、エース級の生き残りから凄まじい勢いで情報を入手出来ているのは、言うまでもないが――。


「他に話すことはないのですか?」

「せ、セラフィーナ様ぁ! もっと、もっとぉっ!」


 セラは四つん這いにさせたイザベラの上に腰を下ろして長い足を組む。蔑むような冷たい眼差しと、わざと体重をかける座り方はちょっとやり過ぎな気がしないでもないが、座られている本人は目を潤ませてデカい尻を振っていた。


「ご褒美が欲しかったら、全部吐いてくださいね」

「ほごぉっ! ふぎぃぃっ!」


 更に上から、セラの引き締まりながらも肉付きの良い太腿(ふともも)で首を絞められれば、恍惚そうな表情を浮かべてされるがままとなっている。即落ちなんてレベルじゃない――というか、小さなお友達には絶対に見せられない光景だった。


初心(うぶ)かと思ったら結構やるものね」

「は、へぇぇっ……」


 一方、双子の姉妹と判明した二人も、エゼルミア陛下の脚元で尻を赤くしながら、ぐったりしているわけだが――。


「本職もびっくりだな、これは……」


 これじゃ、王女様じゃなくて女王様――と思いながらも、成果が出ている以上、止める術もないだろう。

 (ちな)みにアイリスは顔を赤くしながら手で顔を覆っているものの、指はしっかりと開かれている為、何の意味も成していない。それに関しても言わぬが吉というものだ。


 とはいえ、翔真を除けば、アイリスが捕虜とした中隊長と発情しているイザベラが敵軍の有権者であることが明らかになった。よって現状、知り得る限りの情報が白日の下に晒されたも同然ということ。


「――他の世界から来た人間。聖剣や魔剣に匹敵する武器どころか、自分の好きな概念を内包した道具を好きなだけ生成できる、か……」

「そんな夢物語みたいな内容って思うけど」

「実際に起こったわけだしな」


 あの黒髪の少年――斎藤翔真(さいとうしょうま)は、俺たちの暮らしているこの世界よりも一〇〇〇年以上先の文明を持つ世界から来たという人間である。

 不思議な力で神話級の道具をポンポン生み出せる。


 他にも色々と秘密を抱えていたようだが、その辺りはこの世界に住むイザベラたちからすれば理解不可能な事ばかり。誰もが気になっていた人間に対する情報はここまでだった。


 (もっと)も、国力の弱いミズガルズからすれば救世主であり、勇者と呼ばれていたのも事実。でも評価が両極端に分かれる人物だった。

 具体的に言ってしまえば、自分を理解してくれた人間、自分が気に入った人間を溺愛して、そうでない者は徹底的に排除しようとする。調子の良い時は気さくであるものの、突然癇癪(かんしゃく)を起して周囲に当たる、彼氏持ちだろうが人妻だろうが何だろうが夜の自室に呼ぶなど、一癖ある人物だったようだ。


 彼に認められれば、超兵器を手に成り上がれる。

 嫌われれば、人格否定レベルまで罵られて排除される。


 だからこそ誰かに聞けば最高の英雄であり、誰かに聞けば色欲魔であり暴君という答えが返って来た。

 良く言えば、誰よりも人間らしい。

 悪く言えば、“英雄色を好む”を地で行く人物だったとのこと。


「でもどうして、ミズガルズは……」

「それは後にしよう」

「でも……」

「今真実と向き合えば、残された連中は耐えられない。勿論、いつかは乗り越えないといけないことだけどな」


 先の戦闘でトラウマになったとか、王女二人の女王様適性が高すぎるとか、色々と要因はあるのだろうが――曲がりなりにも敵軍の将であるイザベラたちが、こうも容易く屈服するなんて普通に考えればあり得ない。


 その理由は愛人であり、ご主人様だった翔真がボロクズの様に死んだこと。

 未知の超兵器を得て無敵になったはずの自分たちが、ある意味旧世代を象徴する俺たち相手に無様を晒したこと。

 そして、彼女たちの国――ミズガルズが、巨人族の国――“ヨトゥンヘイム”によって討ち滅ぼされたこと。

 言ってしまえば、祖国滅亡の元凶は翔真であり、増長して他国に手を出した彼女たちにある。だが今の彼女たちは――。


「そう……だね。私も辛いことから目を背けて来た……受け止めるのには、随分と時間がかかったから……」


 翔真が気に入った人間を擁立する為に蹴落とされた者や、恋人や妻を寝取られて愛人にされた者。単純に嫉妬している者を差し引いたとしても、ミズガルズにだって開戦派もいれば、非戦派もいたはず。

 自分たちの所為(せい)で何十万、何百万という同胞が蹂躙されたのだから、彼女たち心は限界を超えている。その自己防衛本能として、別の何かに(すが)っているわけだ。

 まあ結局、自業自得極まりないわけだが――。


「……ここで情報が途切れるのは、こっちにとっても死活問題だからな」

「素直じゃないね。お礼ぐらい受け取っておけばいいのに……」


 だが今回の一件、ミズガルズを退けて、めでたしめでたし――なんて甘い終わりはない。

 九つの大国がそれぞれ主権で作ってきた平和の中、ヨトゥンヘイムが漁夫の利を奪う形で勢力を拡大した。これを受け、他国がどう動くのかなど想像に難くないだろう。


「戦いが広がっていく……人の悪意が……」


 もう剣は抜かれてしまった。

 後は振り下ろすだけ。


 つまりここから先、国同士による大規模戦争がいつ起こってもおかしくない状況に突入するということ。

 それは乱世の時代の到来。


 斎藤翔真という異邦者。

 “恤与眼(ギフレイン・ドグマ)”保持者の暗躍。

 “魔眼狩り”。

 ゼイン・クリュメノスと二色の魔眼。


 俺たちの向かう先は、一体――。

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