第89話 綻びを見せる最強
「一刀両断! だあああぁぁっっ!!!!」
銀閃が奔った。
長さの割に刀身が薄く研ぎ澄まされているせいか、一般的な長剣よりもモーションが素早い。
「黙って死にやがれ! “神風流抜刀術・電影流星斬”――ッ!!」
「“天柩穿つ叛逆の剣”――」
斬撃同士が激突。反発作用で弾かれ合う。
「魔法といい、武器といい……本当に奇妙な技だ。それに魔力光が単一じゃない。一人相手に何人もと戦っているような気分だ」
「あたりめーだろ! 俺を誰だと思ってやがる! 主人公様がお前らモブと同じわけねーだろうがよぉ! 次は“エクスブラスター”とミックスだ!」
「これだけの砲を手持ちの筒から放つとは……。それも連続で……!」
翔真の腕に出現したのは、小型の筒。持ち手と銃身があることから用途は理解できるが、これまた弾数と威力が異常すぎる。
現状、一刀一銃による攻めは、魔眼による吸収を交えて事なきを得ているが、驚くなというのは無理な話だろう。
まず同じ魔力砲台であっても、連中が用いるのはアースガルズ軍が使っていた人の手で作られた武装とは違い、機械的な金属光沢を放っている。何より現代の製鉄技術ではまず実現不可能な小型化と高出力を両立していた。
これでは、国の違いや大陸外の文化――というより、本当に別の世界か未来から来たとでも言う方が自然だった。
「その目……そうか魔眼とかそういう能力者ってことだな。しかも攻撃が効かねぇってことは、攻撃無効化系の能力と見た! だったらよぉっ!」
「ん、あの砲身の数……」
「“ガトリング砲”で吹っ飛ばしゃあいいんだろ!? ヒャッハー!!」
今度は奴の長曲刀と魔導砲が消え、長い砲身の先端に発射機構がいくつも備え付けられた武器が出現する。咄嗟に射線軸からズレる形で横に動いたのが幸いしたのだろう。直後、俺の居た場所は、破壊の嵐に晒されていた。
「鉄、鉛、銅……とにかく実弾を連続で撃ち飛ばす武器か……」
「はっ! テメェみたいなタイプは魔法相手に強くても、実弾に弱い! しかも近接メインだって相場が決まってんだ!」
「状況分析……というか、この決め打ち……最初から知っている?」
「はいはい、噛ませ乙!」
一向に話は嚙み合わないが、この状況はよろしくない。理由は奴が言っている通りだ。
「久々にエイム合わせて、ヘッドショット! こちとらチート使ってんだから余裕だっつーの!」
実体武器が相手とはいえ、空間から魔力を喰らって強化はできる。でも、ジリ貧な状況には変わりない。
一応、強化と並行して魔眼で体力の補填も行っている為、このまま躱し続けること自体は可能だが、向こうがいつ弾切れするかも分からないし、相手が実態武器ではこちらも大技を使えない。
よって、膠着状態となっていたが――。
「オラァッ! “ダブルガトリング”だぜ!!」
「一つでダメなら倍にしろと? その発想は残念過ぎるが、このままでは流れ弾が……適当にばら撒きやがって」
奴は今の砲身と逆サイドにもう一つ同じものを出現させると、追加する形で弾丸を撒き散らす。単純計算、数と攻撃範囲は二倍。それに射線軸からして、今も戦っている女性陣どころか、アムラスたちすら巻き込む恐れが大いにある。これ以上、射角を広げさせるわけにはいかない。
得意げな翔真の顔を見て内心舌打ちし、左のみ出現させた黒翼を盾に直進。一気に肉薄すると――突然、奴がたどたどしくなっていく。
だが遅れを取り戻すように弾丸の筒から長剣に換装し、その切っ先を向けられる。
「そ、そんなこともできんのか!? 普通の能力無効化系はこんな……ちぃ!? だったら、こいつでどうだ!? “オートクレール”!!」
「一体どれだけ武器を隠し持ってるんだ? しかも、この威圧感……」
こちらの出力も全開でないとはいえ、どの武器も“レーヴァティン”で押しきれないレベルなのは、流石に異常と言わざるを得ない。つまり、どれも聖遺物クラスだということ。
それも周囲を囲む障壁を含めて全く未知の代物な上に、奴自身の言動にも引っかかるところは多い。まるで自分が別の世界から来て、ミズガルズにオーバーテクノロジーを与えたと言わんばかりの言動が――。
「へっ、剣の勝負じゃ、ぜってー負けねぇ! さっきの“エレメントソード”と違って、こいつは“剣聖”のスキルを持つ剣だからな! たとえ俺が寝てたって、勝手にお前を斬り殺せんだよぉ!」
「スキル?」
突如動きの良くなった奴に押されながら剣を交える。
「そうだ! 俺の“レアアイテムクリエイション”で創り出した最強武器の中でもお気に入りの一点物だ! 行くぜぇぇぇ!! ひっさぁぁつ!!」
他の連中が使っているものも含め、これまでの武器は奴が創ったものだという真実。それは正しく神の所業。とてつもない驚愕に襲われる。
だがそんな俺を尻目に、奴の剣に凄まじいまでの魔力が収束されていく。大技を放とうとしているのは明白。とはいえ、素直にやられる気など更々ない。
「“デストロイローリングバニッシュ”――」
「馬鹿正直に打たせると思うか?」
こちらも長剣に漆黒を纏わせ、奴の剣を斬り結ぶが――。
「だから剣の勝負じゃ絶対負けねぇって……ほぐぅっっ!?」
「は……?」
不意を突く形で、さっきから展開したままだった片翼の先端を奴の腹に向けて突き出せば、なんとクリーンヒット。
奴の技量であれば、まず間違いなく躱されるだろうと思っていた牽制が炸裂してしまい、逆の意味の驚きで固まってしまった。
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