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第61話 聖櫃冥府教団対策会議

 ――月華騎士団(ヴァーガルナイツ)本部・会議室。


聖櫃冥府教団せいひつめいふきょうだんに関する対抗措置についてですが、既にいくつかの拠点を潰し、多くの人員を逮捕……進捗(しんちょく)としましては、非常に順調と言えます」

「ええ、我ら月華騎士団(ヴァーガルナイツ)も動かせるだけの人員を用いて、対処に当たっておりますぞ。その一方、入信者がこれほどまで増えているのは嘆かわしい事実ですが……」


 会議室に集まった高官の前で話すのは、聖冥教団の対処に選任で当たっているシェーレと総責任者のオーダー卿。

 議題は最早説明するまでもないだろう。

 無論、俺が参加している理由が、セラの専任騎士だから――というのも言うまでもない。


「ええ、ですが過去を(なげ)いても始まりません。これ以上の被害拡大を防ぎ、早急に事態を収束させることだけを考えましょう。身内、顔見知り……そんな人々を救いたいのなら……ね」


 当のセラは、騎士団からの報告を受け取り、(ねぎら)いと念押しの意味もあってか周囲を見回しながら呟く。


 ――日常に潜む狂信者。熱くなるなってのも無理な話か。


 今は外敵よりも国内の敵に対処しなければならないという現状を加味しても、本来突撃兵であるシェーレがこの事件に深くかかわることはありえない。

 では、何故彼女がこんな会議に出席しているのかと言えば、聖冥教団(せいめいきょうだん)に知人が参加しているのを目撃してしまったからだ。更に彼女の友人への洗脳は未だ解けていない。

 そのせいもあってか、誰よりも事態の解決に力を注いでおり、並々ならぬ思いを強く感じさせる。


 そうして対策会議を進める内、宰相(さいしょう)であるアルバート・ロエルが全く別の角度から切り込んで来た。


「とはいえ、逆に言えば、その身内や顔見知りと戦う覚悟をしなければならない……ということでもありますがね。それこそ、今隣にいる味方とでも……」

「ロエル祭司、それは皆が理解していることです。それでも、我々はこの困難に立ち向かわなければならない。弱音を吐いている場合ではありません」

「ふっ、これは失敬。言葉が過ぎましたな」


 硬質な声音。

 互いに感情を感じさせないやり取り。


 確かにアルバートの言葉は正しい。俺としても懸念(けねん)していた部分ではあるが、()えて不安を(あお)る様な発言は好ましくはないだろう。簡単に言ってしまえば、“それを今言う?”というところか。


「何度でも言いますが、取り急ぎかつ最終的な目的は、被害拡大を防いで早急に事態の収束を測ることです。それと関連してロエル祭司、オーダー卿、内部団員の洗い出しはどうなっていますか?」

「ふむ、文官各名に探りを入れている最中ではありますが、現状これといった成果は上がっていません。まあ、信仰心など目に見える物でもないですが……」

「騎士団に関しましても、自白した者はおりませぬ。こちらも似たようなものです。ただし家族が団員になっている者が数名いるそうですので、そちらに関しましては別途対応中であります」

「なるほど、色々(・・)と一筋縄でいく状況ではありませんね。では引き続き調査を続けて下さい」

「御意!」


 文官と武官――二人の指揮官が騎士の礼をする。

 責任者二人が結論を出した以上、現状打てる手立てはここまでということ。


「では、今日の会議はここまでとします。疑心暗鬼になる必要はありませんが、よく気を付けて対処に当たってください。無論、自らが取り込まれぬようにも……」

「御意!」


 そして皆の騎士の礼と共に、この会議は終了。参加していた面々は十人十色の表情を浮かべて会議室から去っていく。

 大多数を占めるのは不安と混乱。まあ自体発覚から数日足らずで、ここまで大きな対策のムーブメントにまで流動しているとあって無理もないだろう。


 そんな中、ここまで事態が高速化した要因は二つ。

 一つ目は、数日前に俺たちが聖冥教団(せいめいきょうだん)の拠点を潰したことによって、誰もが連中の存在を認めざるを得なくなったこと。

 二つ目は、ニーズヘッグの思わぬお手柄により、宮殿内に団員が潜んでいるという事実を白日の下に晒したこと。


 組織を動かす時に困難なのは、認識の共有と意思統一。人数が増え、規模が大きくなるに連れて、更に大変さも増していく。

 でも、街や家族、同僚に狂信者が蔓延(はびこ)っているかもしれない。

 その上、連中の目的が事実上の国家転覆ともなれば、誰にとっても脅威は同じ。必然的に、早急な対処が必要という認識も共有できてしまう。

 結果、組織を動かす上で困難かつ面倒で時間がかかる過程を吹っ飛ばし、こうして皆で早期から対処に当たって事態の拡大を防げている。つまり俺たちの行動には、確かに意味があったということ。


 幸いセラには、頼もしすぎる護衛が付いている。なら、俺も外へ目を向けるべきだろう。

 とりあえず暴走しそうなシェーレのフォローでもするかと、部屋を後にしようとした時、突如皇女様に呼び止められる。


「ヴァン、会って欲しい人がいるのですが……今から構いませんか?」


 意を決したようなセラの口ぶり。

 彼女の瞳は、僅かな不安に揺れていた。

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