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第5話 蒼銀との出会い

 照り付ける日差し。

 枯れ果てた荒野。


 目の前に広がる道をただ歩く。


「さて、これからどうするか……」


 俺が国外追放を言い渡されてから、既に一週間ほどが経過していた。


 生まれ故郷を追われ、たった一人の友人すらも失ったわけだが、不思議と喪失感はない。俺と勇者(アイリス)の関係が、そう遠くないうちに終焉を迎えると理解していたからだろう。要は早いか遅いかの問題。

 強いて言うなら、こんな形で終わるとは思わなかったというところか。


「このまま旅を続けるか、どこかに根を張って生きるか……どっちもどっちだな、これは……」


 実際問題、魔法を使えない俺が一般社会に溶け込むのは容易なことじゃない。他国の事情は分からないが、これまでの全てを一から繰り返すのかと思うと軽く辟易(へきえき)してしまう。でもこればかりは、どうしようもない。

 アイリスと再会したのが、アースガルズに留まり続けていた一番の理由ではあったが、背景にはそういう意図もあったということだ。

 そんな調子で今後の方針を考えながら歩いていると、視線の先に“非日常”と称するべき異常な光景が飛び込んで来る。


「あの噴煙……それに立ち昇る魔力の残滓(ざんし)……。これは闘いの光……?」


 近くの崖まで走り、黒い噴煙が立ち込めている場所へ目を凝らす。その先では、五〇人ほどの武装した兵士と、凄まじい威圧感を放つ一体のモンスターが激しい戦いを繰り広げている。

 いや、モンスターの中でも最上位に位置する“神獣種”によって、蹂躙されていると称した方が正しいか――。


「戦術が全く意味を成していない。神話の産物……あれが神獣種か。全滅も時間の問題だな」


 神獣種とは、ガイア大陸に伝わる神話に記された七二種の特異なモンスターの総称。しかし、御伽噺(おとぎばなし)の中だけの存在と語り継がれているだけであり、実在は定かではないというのが通説だった。

 でも目の前の怪物は、その神話に符合(ふごう)している。


 普通の魔獣では考えられないほどの巨大な体躯。

 見るからに獰猛そうな牙を覗かせる特徴的な三つ首。

 身体の後部から生える長い竜尾。


 正しく異形。一言で表すのなら、冥府の獄犬。


「圧倒的、だな……これでは……」


 巨大な体躯に見合わない俊敏な機動を前に、兵士たちの攻撃は(かす)りもしない。逆は一方的。これはもう兵士の力量や陣形がどうとか、そんな次元の話じゃない。

 神獣種――三つ首の獄犬は、荒野の戦場を地獄と変えている。多くの命が散っていく。その光景は凄惨という他ないだろう。兵士の先頭に立って戦っている蒼銀の女性が一人突出して戦っているが、戦力差は圧倒的だった。


魔力砲撃(ブレス)……!?」


 そんな時、三つの口に膨大な魔力が収束され、兵士たちに向けて撃ち放たれた。他のモンスターとは、威力が桁違い。このまま首を横に薙ぎ払われでもすれば、全滅は確実。脳裏に最悪の光景が過る。

 だが蒼銀の剣を構える女性が先頭に躍り出たかと思えば、巨大な斬撃を放って迎撃。二つの巨大な力が正面から激突した。

 爆轟が戦場を駆け巡る。距離の離れている俺にまで、衝撃が伝わって来るほどの凄まじさ。


「……って、こっちに飛んできてないか!?」


 力の奔流が相殺し合う。弾かれ合った余波が大地を(えぐ)り飛ばし、一番大きな波動が俺のいる崖の根元に飛来する。土台を(えぐ)り取られた崖は一瞬で崩壊し、俺の体は空中に投げ出された。


「ちぃ、っ!」


 その瞬間、咄嗟(とっさ)に地面を蹴り飛ばす。そのまま崩れ落ちる崖の破片(はへん)から別の破片へと飛び移りながら勢いを殺し、高度を落すと地面を滑るように着地する。

 だが降り立ったのは、戦場のど真ん中。突然空から降ってきた俺に無数の視線が注がれる。


 正面には、心臓を鷲掴(わしづ)みされんばかりの威圧感を放つ神獣種。

 周りには、茫然と目を丸くしている兵士たち。


 そして――。


「女……の子?」

「――確かに女の子と言われれば、違いはないのだろうが……。それより貴方は?」


 さっきまで軍の先頭を切って戦っていたあの女性――いや、少女も隣に降り立った俺を見て小首を傾げている。


 毛先が紅に彩られた、蒼銀の長髪。

 力強さと妖艶さを兼ね備えた鋭い琥珀色の瞳。

 鎧越しにでもはっきりと分かる女性らしい起伏に富んだ身体。


 そして、凄まじい業物(わざもの)であろう一振りの長剣。


 目の前に佇む蒼銀の少女は、この世のものとは思えない幻想的な美しさを放っている。視線が少女に吸い寄せられ、(まばた)きすら忘れてしまう。

 混沌の世界すらも置き去りにして――。


「――っ」


 互いの双眸(そうぼう)がぶつかり合う。

 戦場の中にありながら、金縛りにでもあったかのように動けない。この少女も同じだったのか、身動ぎ一つせずにこちらに視線を寄こしたまま固まっている。


「姫様ァ!!」

「――ッ!」


 視線を交錯させながら硬直していた俺たちだったが、兵士の叫びによって浮ついていた意識を現実に引き戻される。正面を見据えれば、神獣種は再び魔力砲撃(ブレス)の発射体勢に入っていた。


「アレは神話のモンスターが一柱。神獣種――“インフェルノケルベロス”。空から降って来た事情は分かりかねますが、貴方は全力で逃げなさい! ここは私が……って、一体何を――!?」

「悪いが話している余裕はなさそうだ」


 気を使ってくれた少女には悪いが、奴の視界に入った時点で逃げ場などない。なら成すべきことは一つだけ。俺は迎撃態勢に入った少女を置き去りにする形で一気に先行。圧倒的な威圧感を放つケルベロスに向かって、一直線に駆けていく。


「■、■■■■――!!!!」


 狂獣咆哮。

 そんな俺たちを嘲笑うように、ケルベロスの三つの口から凄まじい量の魔力が放出される。

 効果範囲内を焦土と変える地獄の灼炎。地形すら変えかねない魔力の奔流に向かって、真正面から(・・・・・)突っ込んだ(・・・・・)


 灼炎が光と化す。

 爆轟、悲鳴、衝撃――死の嵐が世界を包み込む。

 だが剣を盾に吹き荒ぶ魔力を防ぐ少女の眼前――放たれたケルベロスの魔力砲撃(ブレス)は、波動となって掻き消えた。


()じ曲げるでもなく、斬り裂くでもなく……あの魔力砲撃(ブレス)が、消失した?」


 蒼銀の少女は驚愕に目を見開いている。

 辺り一帯を焦土と変える地獄の灼炎と、着の身着のままの俺一人――まともにぶつかり合ったのなら勝敗は明らかだ。でも現実は前者が消失して、俺が無傷で立っている。

 それはあり得ない現象に他ならない。


「一体、何を……したのですか?」


 隣に駆け寄って来た蒼銀の少女は、俺の瞳を目の当たりにして息を呑んだ。まるで信じられない物でも見たかのように――。


「貴方の(ソレ)は……?」

「“叛逆眼(カルネージ・リベルタ)”――この身に宿った災厄を告げる魔眼(・・)


 俺の瞳に浮き上がっているのは、蒼穹の光を放つ十字の様な紋様。

 蒼銀の少女からすれば、さぞかし異様に映ることだろう。しかし魔眼(これ)も、聖剣や神獣種と同様に神話の時代から受け継がれし呪い(チカラ)


「――魔法を喰らって、自分の力に変える。これが俺の力だ」


 全ての魔法を喰らって己の力に還元する“魔法殺し”とでも言うべき反則的な能力。これが俺の魔眼――“叛逆眼(カルネージ・リベルタ)”。

 この魔眼こそ、俺が魔力を持たない原因であり、これまで屈強なモンスターとの戦いを生き抜いて来られた要因。


 漆黒の波動が、俺の全身から放たれる。

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