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第42話 疾風迅雷

「ヴァン!」

「ああ、いよいよ……だな」


 俺たちの攻撃により、大型砲塔を中心に地面が破砕を繰り返す。同時に敵軍の混乱は最高潮。戦線がズタズタになったところで、ニヴルヘイム軍の主戦力が雪崩(なだ)れ込んで来た。


「行くぜ、旦那ぁ! “壊劫すべし、剛天裂断(ブレイクアバドン)”――ッ!」


 グレイブの戦棍(メイス)が勢いよく振り下ろされ、敵軍左翼を力任せに割断する。


「味方に当てるなよ! 総員、放て!」

「了解です! “エアリアルシュート”――!」

「“マジックバレット”!」


 更に崖の上からは、コーデリアを始めとした遠距離部隊が魔法連弾を放って敵軍の死角から攻撃を加えていく。


「おーおー、やってるやんかぁ! そなら、ウチらも!」

「そうね、一暴れしましょうか」

「今回は自重も手加減も一切不要です! 第七小隊、皆自分の生存を第一に行動してください! 散開ッ!」


 今度は突撃兵として名を()せているという、シェーレたち第七小隊も出現。

 アイラは先端にドリルが付いた長槍。

 ルイザは投擲小剣(ダガーダーツ)を始めとする暗器の(たぐい)

 シェーレは身の丈ほどの大剣を振り回して敵軍深くへ切り込んでいく。

 無論、全員の武器がクリスクォーツ製であるのは言うまでもない。


「総員出遅れるな! 姫様が()く道を作るのだ!」

「そうだ、僕たちも! “ディバインスラッシュ”――ッ!」


 エース級の突進に加え、オーダー卿をトップとするリアンを含めた精鋭部隊も一気に攻勢に出る。いよいよ両軍の正面衝突。

 だが戦力差が圧倒的であるにもかかわらず、アースガルズ軍は劣勢に立たされていた。


 端的に理由を言ってしまえば、連中は焦っているから。

 魔導兵器の大量破壊を引き起こされた挙句、盤石(ばんじゃく)だったはずの陣形を()き乱されたのだから、無理もないだろう。

 何より、動揺は他者へ伝達する。結果、アースガルズ側にとって最大の武器である数の利が、逆に連中の足を引っ張る結果となっているわけだ。ここまでは計算通りであり、戦果は上々。

 ここから先が、俺たちの仕事。


「セラ!」

「ええ、此処(ここ)は皆に任せましょう」


 黒翼を引っ込めた俺は、最大加速で戦場を疾駆。追従するセラと共に戦域からの離脱を図る。


「ま、まて……ッ!」

「オラオラオラァ! 旦那の行く先を邪魔させねぇぜ!」

「今は信じて戦うのみ……ですね!」


 ここで最前衛を突破されれば、一直線に本陣へと到達されてしまう。戦闘の余波で、すっかりボロボロになった指揮官が俺たちを止めようと指示を出そうとするが、グレイブとシェーレに阻まれて不発。

 その間に戦域から離脱し、更に進軍していく。


「く、くそっ!」

「ここは通さん!」


 しかしそれでも(なお)、視認範囲全てに敵軍の大部隊が立ちはだかった。流石の数と言いたいところだが、連中の顔は更なる恐怖と混乱に染まっている。


「開幕早々、鼻っ面をへし折ったら、この様か……」

「性能に目を見張るものはありますが、どれもこれも火力偏重(へんちょう)鈍重(どんじゅう)な兵装ばかり。歩兵を突破して懐に飛び込んでしまえば、余りに(もろ)い」

「その歩兵も金と数に物を言わせた物量戦の経験しかないと来れば……!」

「く、来るなァ!? ま、待てっ、押し潰される!?」

「ひっ、助け……っ!?」


 一〇万を超える大軍勢相手に力任せに切り込んでくる馬鹿が二人。

 加えてこの密集状態では、歩兵同士ですら友軍誤射(フレンドリーファイア)に怯えてまともに戦えていない。確かに数は力だが、相手が烏合(うごう)(しゅう)であれば付け入る隙はあるということ。


活路(かつろ)を切り(ひら)きます!」


 抜剣、招来。

 セラは全身から魔力を加速装置として放出し、一気に先頭に躍り出て斬撃を放つ。視界が蒼銀で埋め尽くされ、敵軍が一気に()ぎ払われる。


「突破するッ!」


 飛翔、刃風。

 俺は背後からセラを横薙ぎに抱えると、下を向いた大型砲塔の砲身を踏み壊しながら、黒翼を生成して空へと舞い上がる。更に先ほど同様、黒翼から刃の嵐を撃ち放ち、眼下の敵を一掃。セラを抱えたまま空を翔け、一気に目前の敵本陣へと突入した。


「な……貴様ァ!?」


 そこにあったのは、これ見よがしに豪華な鎧に身を包んだ者たちの姿。

 知らぬ顔、知識として知っているだけの顔、そして俺と因縁がある者。

 皆が驚愕の表情を浮かべ、地に降り立った俺たちを見つめている。


「テメェは……本当に生きてやがったのか!?」

「仮にも実の子供に対して、散々な言い様だな。まあ、今更俺も貴方のことを親だと思うつもりもないが……」


 そんな中、ある種、俺の出現に最も衝撃を受けていたであろう実父――デロア・ユグドラシルの叫びが戦場に響いた。

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