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第31話 歪んだ正義

 アルバートが去って程なく、俺たちは既に馴染(なじ)み深くなり始めている水晶(クリスクォーツ)の遺跡へやって来ていた。(ちな)みにさっきからセラが腕に引っ付いたままだったりするが、その件における一悶着は割愛しよう。

 とにかく今考えなければならないのは、この切羽詰まった状況で俺が名指しされたことについて。


 以前よりも奥――より地下深くへと歩みながら、全ての真相を知るセラに疑問を投げかける。


「朝から色々(・・)騒がしかったけど、一体何の用で俺を呼び出したんだ?」

「それについては、今から説明しますが……あの男のことを何も聞かないのですか?」


 彼女らしからぬ歯切れの悪い返事。どこか申し訳なさそうに俺から視線を背ける。


「全く気にならないと言えば嘘になるが、訳アリなんだろ? それに必要な情報なら、さっきまでの間に伝えて来たはずだ。普段のセラなら、間違いなく」


 誰だって踏み込まれたくない自分だけの領域がある。

 実際俺もアースガルズの連中とのゴタゴタにセラたちを巻き込みたいとも、助けて欲しいとも思ったことはない。

 ユリオンたちにケジメを付けた時も感謝と申し訳なさはあったが、手を貸してくれて嬉しいとは微塵も思わなかった。たとえセラたちに国を護るという大義名分があるのだとしても。


「普通なら根掘り葉掘り聞いて来るものを……そういえば、貴方はそういう男性でしたね。おかげで少し頭が冷えました」


 すると、セラの表情が僅かに和らいだ。

 その直後、真剣な顔つきに戻るものの、さっきまでの硬さは抜けている。


「ですが、あの男には気を付けた方がいい」

「どういうことだ? 話を聞く限り、真っ当なことしか言ってなかったけど……」

「神の教えを説き、罪人に判決を下し、民の為に執政する。ある種、この国で最も信頼されているのがあの男です。文官としての能力は否定しようがない」

「聞けば聞くほど、非の打ち所がないな。ちょっと嫌味っぽい性格をしてる気はしないでもないが……」

「それでも基本的には問題のない人物だ。むしろ悪人という言葉が、これほど似合わない人間はいない。だが彼の場合、正義だから問題なのでしょう」

「正義……」

「ええ、彼は白。(けが)れなき白……。どうあっても他の色に染まることできない」

「つまり正道を力技(コネ採用)で捻じ曲げた俺が許せず、セラに真偽を確かめに来たわけか?」


 朝からの話を総括する限り、アルバートを含めてセラの騎士候補には多くの名が挙げられていたと予測できる。本来、人の信頼を得るのに優劣などつけようもないが、それでも俺の存在は、他の連中からすれば納得がいかないのだろう。

 つまりアルバート・ロエルは、災厄の魔眼(人ならざる力)が格式ある伝統と歴史を踏み荒らすことを許せず、セラの間違った選択を正したかったのだろう。

 ただ、それ以上の意図も感じられたような気がするが――。


「彼は正義の執行者以外になり得ない。たとえ、どんなことがあろうとも、魔眼を宿す貴方を認めることはないでしょう。あの男の正義は、鋭利で歪すぎる」


 状況次第では味方であろうとも、刃を向けられる可能性がある。セラは言外にそう伝えていた。

 神に捧げる高潔な正義――それもまた、諸刃の剣なのかもしれない。


「……」


 そこで俺たちの会話は途切れた。

 理由は二つ。


 一つ目の理由はアルバートについての話題が一区切りついたから。しかし、こちらは大した問題じゃない。

 真に問題となったのは、二つ目の理由――。


「なんだ、これは……!?」


 いつもの遺跡を抜け、最深部に辿り着いた俺たちの前に巨大な扉が(そび)え立っていたからだ。

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