第195話 終焉を告げる叛逆
荒れ果てた神界――。
終焉血戦の再来を、この手で終わらせる。
「“災禍轟く滅獄の冥皇”――ッ!」
「“雷神怒涛”――ッ!」
紅銀の斬撃が雷を潜り抜けて、筋骨隆々な肉体を斬り裂く。
「“聖穹劃す裁きの皇断”――ッ」
「“虚無牙狼”――!」
蒼銀の斬撃が虚無の巨狼を割断し、飄々とした神を灼き尽くす。
流石の神々もこれは効いたようで、ここに来て明確に後退する様を見せた。
そうさせたのは、さっきまでよりも俺たちの攻撃が威力を増しているから。
急激な出力上昇について、その理由は単純。
まず“恤与眼”を中継地点に、ゼインは“無限眼”を強化し、セラは地力を跳ね上げている。
俺の場合、“天召眼”の力も加わっているのは、先ほどまでの通りだ。
だが、そこに“無銘眼”――最後の魔眼の力が付与されているのだから、単純に出力が上昇するのは当然だろう。
“無銘眼”の力は、相手の能力を模倣すること。
つまりは“自分”がない。
故に“無銘”――名前の無い魔眼。
“恤与眼”を経由する形で付与され、その力の恩恵は俺たちへと流れ込んでいる。
更に今のオーディンは、消えることのないアンブローンの思念――“悪轟眼”によって蝕まれ、もう一つの戦いを繰り広げている真っ最中。
ある種、全ての魔眼が神々へ牙を剥く形となった。
「この、人間風情がッ! 儂に楯突こうなど!」
「ようやく本音が出たな! 創造主様!」
疑似的な神光を纏って、斬撃を繰り出す。
オーディンは光の津波で防ごうとしていたが、剣の一閃で全てを引き裂いた。
神々が三人一塊で後手に回り始め、明らかに戦況が変わっている。
ここで一転攻勢、決着をつけるべく出力最大で特攻しようとした瞬間――俺たちへの力の供給が途絶えた。
「え……?」
「ちぃっ!?」
結果、無双状態から一転、セラは膝を付き、ゼインは巨剣を地面に刺してどうにか倒れるのを防ぐので精一杯。
背後を一瞥すれば、誰もが疲労困憊で指一本動かせすらしない光景が広がっていた。
つまりは制限時間内に決めきれなかったということ。
唯一にして、最後の勝機を逃したも同然だった。
「終わりだ、人間ッ! “我、殲滅の神に在りて”――!!」
誰もが動けない中、“グングニル”に神光が集う。
雷槌、虚無の巨狼も唸りを上げる。
絶体絶命――避けようのない絶望が、俺たちの未来へ喰らい尽くそうと光を放つ。
「――いや、これでいい。この一瞬さえあれば……!」
そんな最中、蒼金の光を瞬かせて黒翼で天を舞う。
他の皆は倒れても、俺にはまだ僅かばかりの時間が残されている。
“叛逆眼”の能力は、力を喰らって己に還元すること。
支援が解けて四散していく力、この戦いで散々周囲に撒き散らされた魔力残滓、他の魔眼の力である“俺への進化”と“模倣した神光”――。
その全てを喰らった上で、己の魔法すらも束ね――今、剣と成す。
「“破滅衝く黎明の絶剣”――ッ!」
闇炎剣衝。
極限まで収束した魔力を解き放ち、携えた剣を起点に俺自身が漆黒の彗星と化す。
同時に神々の光が解き放たれ、互いの最大火力が激突する。
「――ッ!」
世界が軋み、次元に歪が生まれるほどの勢いで力の波動が四散していく。
「いつまでやっている!? さっさと、終わらせてしまえッ!」
激突の最中、俺の攻撃が倍増した。
これは“無限眼”の能力。
そして漆黒が虹色を纏い、三つの神光すらも喰らいながら極光の奔流を割断する。
「これで……!」
爆轟、斬滅。
斬り抜けた俺の背後で、三体の神々が形状崩壊を起こし始めた。
「よもや、こんな……」
「おいおい、マジかよ」
何万年という気が遠くなるほど世界の頂点に君臨し、永き眠りから目覚めた神々が下等な人類によって討たれる。
それは多分、本来起こってはいけない叛逆。
だが神々はその命を燃やし尽くし、一人、また一人と姿を消していく。
最後に残ったのは、創造神――オーディン。
「忘れるな、人間よ。この時代、万物は儂が創ったもの。儂が創った時代。儂の支配を拒絶したということは、愚かな貴様らを止める者が消失したことを意味しておる」
「例え平和に程遠い愚かな世界でも、俺たちは自分の足で歩いていく。自分の行動には、自分で責任を取る。今はそれでいい」
「新たな可能性……。ふっ、貴様らの行く末が栄光か、破滅か……まあ、期待しておるわい」
だがオーディンもそう言い残すと、静かに姿を消した。
静寂が戦場を包み、もう闘いの光が飛び交うことはない。
再来の“終焉血戦”。
その結果、世界の行く末は人類の手に委ねられることになった。
最終決戦、完結。
本作も残すところ、あと2話となりました。
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