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第192話 結集する力

「これが、魔眼の力か……面妖な物よな」

「ふん……」


 オージーンとゼインに関しては、俺の黒翼と同様、魔眼の力で生成された手甲やアーマープレートがその身に宿っている。

 後者に関しては、元々使っていた物が更に洗練されたというべきか。


「ともかく、今は戦うのみ……!」


 対するセラは、先ほどまでと同じで“恤与眼(ギフレイン・ドグマ)”の光を薄く纏っている以外、外見的な変化はない。

 ただ“グラム”が纏う魔力は、これまでとは別次元。凄まじい熱気を放っている。


叡智(えいち)の化身である儂の創造を(ことごと)く上回るとは……だがそれは、儂らが望んだ進化の形ではないのぉ」

「お前たちにとっては下等な猿でも、俺たちはこうして今を生きている。救う価値などなくとも、完璧には程遠くとも……譲れない想い(もの)は、こちらにもある!」


 これが俺たちの“終焉血戦(ラグナロク)”。

 神話を乗り越え、未来を紡ぐ資格があるのかを決する最終決戦。


 エゴでもいい、賛同など得られなくとも構わない。

 俺が、俺の意志で戦う。

 ただそれだけなのだから――。


「“混沌祓う聖魔の双戟アトミックカオス・インフェルノ”――!」


 聖魔双閃。

 “グングニル”の刃を受け止める。

 そして、押し返す。


「ぬぉ、この力!?」

「お前たちの様に気高くもなければ、絶対の神聖さもない。それでも負ける道理は……ない!」


 この身に流れ込んで来るのは、力を貸してくれている皆の想い。


 未成熟で浅ましくて、醜い――俺がこの目で見続けて来た欲望。

 一方、どこか暖かくて尊い感情も流れ込んで来る。

 この二面性こそ、人間やエルフ、巨人族がヒトとして生きている証明。

 逃れることのできない運命(さだめ)


 神々の力と比べれば取るに足らないし、醜悪極まりないが、全てを束ねれば――。


「人間風情が大した力だな!」

「黙れっ! 世界を見下ろすのは、この俺なのだからなッ!」


 “天上統べる帝王の裂断(カイザー・スクリーム)”――紅蓮の斬撃が逆巻いて、天を()き上げる。


「王は、この我だッ! 地上を統べるのは、我ら巨人族こそが相応しい!」


 “巨人の裂撃(ティタン・ブラスト)”――剛裂な斬撃が天を舞う。


 互いに連携など微塵も考えていないのが丸分かりではあるが、凄まじい出力と個々の実力が全てを凌駕する。武神とされるトールを相手にしても、拮抗以上の戦果となって表れていた。


「貴方たちは、どうしてそんなに傲慢に……!」

「そんなに睨まれると困っちまうぜ」


 “暁闇燦めく明星(グロリアス・シュテル)”――大刀と化した“グラム”が虚無の巨狼を正面から斬り伏せる。


 今の俺たちであれば、神の領域にも手が届く。

 いや、届かせる為に一歩踏み出し、紅蓮と蒼銀の大刀が神々の肉体を斬り裂いた。


 先ほどオーディンに浴びせた一撃と合わせ、ようやくの決定打。

 ここに来て神々が後方へ退く。

 それは連中が起こした初めての回避行動であり、明確に戦局が変わったことを意味している。

 ここから一転攻勢、流れを手繰り寄せられたと思ったのだが――。


「神光滅破……」


 追撃するべく駆け出した俺たちの目前で三色の光が瞬く。

 これが神々の底力。

 人智を超えた究極の一撃。


「“我、殲滅の神に在りて(ゴッド・ヘヴン)”――!」


 次元を引き裂かんばかりの猛烈な光。

 回避は不可能、ならば――。


「“蒼剡纏う叛逆の翼フェニックス・ノヴァ・リベリオン”――ッ!」

「“災禍轟く滅獄の冥皇ディザスター・ハーディス”――ッ!!」

「“聖穹劃す裁きの皇断セイクリッド・レガリア”――ッッ!」

「“巨人の剛天撃(ティタン・ブレイク)”――ッ!!」


 蒼炎の不死鳥、大地の憤怒、聖断絶閃、純粋な剛力の炸裂――。

 目を合わせる事もなく、四つの斬撃を同時に放つ。


「――ッ!」


 破壊、交錯。

 暴力的なまでの波動が破壊の嵐となって神界を激震させる。


 だが、ここまで来ても(なお)、神々の攻撃を押し返すことが出来ない。

 それこそ、まるで世界全てを相手に押し合いを繰り広げているのかと思わされるほどの絶望感――。


「魔眼を持つ貴様らが倒れたら全て終わりぞ! 踏ん張らんかァ!!」

「分かっている! この俺に指図するな!」


 一歩踏み出し、攻撃の負荷を一手に引き受け始めたオージーンの身体から鮮血が舞う。


「貴方も一度力を蓄えてください!」

「セラ!?」


 それは同じように一歩踏み出したセラも同様。


 このままでは全滅は必至。

 つまりこの撃ち合い自分たちが引き受け、俺とゼインをから離脱させる。その上で揺動を引き受けている間に一撃叩き込め――ということなのだろう。


 しかし、四人がかりでギリギリ拮抗しているところから二人が抜ければ、残された者がどうなるのか。そんなことは考えるまでもない。


 セラを失う以外に勝算はない。その事実が俺の肩に重く圧し掛かる。

 それを示す様に、こちらの攻撃が押し返され始める。


「行けぃっ!」

「ヴァン!」


 正しい選択肢は明白。

 それでも――。


「これは……」


 選択の間際、俺が纏っている翠紅の上から紫蒼の光が発色する。

 そして、この身は新たな進化(・・)を迎えた。

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