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第189話 天空神殿、墜つ

「ぐ、っ……ぉっ!?」


 人類と神々の極光が激突し合う中、突如としてオーディンが放つ光が四散する。


「何が起こっている!?」

「おいおい……」


 更に奴の身体に鋭利な四重円の紋様が浮かび上がり、苦しみ始めた。

 世界が滅びてもケロッとしていそうなオーディンの苦悶を受け、トールやロキを含めた誰もが目を見開く。


「アレが“悪轟眼(イビル・アマルガム)”の力だというのですか?」

「確か司る能力は、物質の解析と改変。全てを知り、全てを変える力。自分の力が上がるのではなく、他者を創り変えてしまう力だ。戦闘力は低いが、魔眼の中で最も忌み嫌われた力……」

「それって……」

「彼女は創造神(オーディン)に取りつき、その全てを解析しているのでしょうね。世界の全てを知りたい……これが彼女の真の目的……?」


 戦況を考慮しない独断先行。

 俺たちの闘いは揺動であり、絶好のタイミングで打ち込んだ“ミストルティン”ですらも足止めでしかない。全てはオーディンに隙を作り、この状況を作り出す為の――。


「貴殿は一度退がれ!」

「しゃぁねぇな、二人で押し返すしか……」


 その最中、オーディンは魔眼の紋様を全身に浮かべながら苦しみ続けるのみ。

 トールとロキが一歩前に出て光の押し合いを引き受ける形となった。


詮索(せんさく)は後だ! 総員、押し込めッ!」


 アンブローンにどんな思惑があれ、今が好機。

 この場の全員で一斉掃射を繰り出し、迎撃中の二神を強襲する。


「ちぃ、っ!? 貴様らっ!?」

「にゃろうっ!?」


 流石の神々も無抵抗の状態で魔法を叩き込まれているのだから、迎撃に注力できるはずもない。

 六色の光と二つの神光による拮抗が崩れ、神々は光の螺旋に呑み込まれていく。

 次元が軋み、破壊の波動で空間が歪む。


「なんて激突なの!?」

「いや、それよりもっとヤバい状況になってるみたいだな」


 六色で形作られた螺旋の槍。

 神光をねじ破って連中に直撃したのは確実だったが、それはそれとして可及的速やかに対処しなければならない事態が発生していた。


「この浮遊大陸が沈む、か……」

「緊急事態……」


 ゼインとフェリスが呟いたのを皮切りに、ガクンっという浮遊感に襲われる。同時に神界の空が上へと流れ始めた。

 いや、正確には俺たちが大陸ごと落ちているという方が正しいわけだが。


「あのババア、ホントに動力源まで使い切ってくれたわけね!」

「他の浮上装置は!?」

「残ってたらとっくに作動してるでしょうよ! 流石にこの勢いで下に墜ちたら全滅よね!」


 全てを賭けた捨て身の一撃。

 戦況を分かつ破壊力を有してこそいたものの、浮遊大陸と“ミストルティン”の機能停止という計り知れない代償を支払うこととなった。


「飛べる者は大陸から離れろ! 他の者は下に魔法を照射して、墜落の衝撃を弱めるのだ!」


 とはいえ、流石は大陸有数の戦士たち。

 危機的な状況ではあるが、オージーンの指示よりも早く動き始めていた。


「行きますよ、ニーズヘッグ!」

「――!」


 ニーズヘッグの背に乗って大陸下部に回り込んだセラは、“グラム”の剣先を上に向けて蒼銀の光を注ぎ始める。

 同時に放たれた白灼も含め、落下の勢いを弱めるクッションとしているわけだ。押し返すことはできなくとも、この方法であれば――。


「この圧迫感!?」

「流石の私でも肝が冷えるわねぇ」


 セラと同じく、ニーズヘッグの背に乗っているアイリスとエゼルミア陛下もそれぞれ大陸下部に向けて魔力の波を放出する。


「独断専行……」

「ちっ……!?」


 それは“禁忌魔眼・解放スペリオル・エクシード”の魔力出力で強引に浮かんだフェリスとゼインも同様――。


「ここで押し留めるッ!」


 俺もまた、切っ先を向けた両剣から魔力を注ぎ込み、皆と同様に墜落緩和の支えとしていく。


「総員、撃てェ!」

「ぐちゃぐちゃの肉塊になりたくないのならね!」


 そして、残る空戦能力を持たない面々は大陸の端に立ち、勢いを弱める為に下へと向けて魔法を照射し続ける。


「こなくそォ!」

「止まってください!」

「“エアリアルシュート”――!」

「エルフ両軍! 統合術式で出力を引き上げてくださいね!」

「ああ、今はいがみ合っている場合じゃない!」


 グレイブ、シェーレ、コーデリア、セシルとアムラス――顔馴染みがオージーンとフレイヤに続く形で指示を下し、額に汗を浮かべながらも、上からのクッションを更に盤石なものとしていく。

 その一方、俺たちの背に神界の地面が迫ってきており――。


「セラ! ゼイン、フェリス!」

「分かっています! ニーズヘッグ!」

「俺に指図するな!」

「了解……」


 空戦戦力は大陸落下の射線軸上より退避。

 互いの大地を食い破り合いながら、浮遊大陸が着地(・・)する。

 そう、墜落ではなく着地。


 上下からの支えにより、墜落から下降と呼べる状態まで勢いを抑え込めていたが故の結果。本来なら神殿ごと砕け散っていてもおかしくない状態から持ち直したとなれば、肩から力が抜けるというものだろう。


「と、止まった!?」

「旦那たちは無事ですかい!?」


 無論、例外はない。

 誰もが歓喜に包まれ、程度の差はありながらも表情を軟化させた。

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