第187話 不倒の戦士たち
緊迫した状況の中、神の極光が爆ぜる。
「“我、創造の神に在りて”――」
白の極光。
「“雷神怒涛”――!」
剛裂な雷。
「“虚無牙狼”――」
紫の巨狼弾。
「――ッ!?」
神撃激震。
猛烈な熱量を発し、津波の様に俺たちを吞み込んで襲い掛かる光が晴れた時、目の前に広がっていたのは想像を絶する光景だった。
「ちっ、これは……!?」
三分の一近く抉り取られている浮遊大陸。
“叛逆眼”の性質上、魔法が効きにくい俺を残して倒れ伏す面々。
事実上の全滅。
これが神々の真髄。
最早何人が犠牲になったのか分からない。一転して絶体絶命。
先の激突の際、皆が魔法を放っていたおかげで“葬黎殿”に大きな損傷がないことだけが、唯一の救いといったところか。
「ほう、まだ形を残しているとは、中々どうして……」
そんな俺の前には、無傷で佇む三体の神々。
“禁忌魔眼・解放”へと至った四つの魔眼。
神話の武器を携え、各国を代表する人外たちですら歯が立たない。
明暗分かれたという言葉がこれほど相応しい状況もないだろう。
「まあいい。遊びは終いじゃのぉ」
「遊び……だと!?」
だがあくまで自分たちは雲の上の存在であり、俺たちを見下す――いや、地上を生きる者全ての命を、価値観を、想いを踏み躙る連中の言葉は到底許せる物じゃない。
「まだ抗うか?」
「当然だ!」
両手の剣に蒼炎を灯し、漆黒の翼を翻す。
確かに吸収しきれなかった魔力で全身ガタガタではあるが、逆に言えば身体が吹き飛びかねない程の魔力を俺自身が有しているということでもある。
無茶は承知、無理も承知。
それでも――と、絶望的な状況を前に戦場を疾駆する。
「消し飛べッ!」
直後、後方より紅銀の斬撃が飛来。
傷を負ってこそいるが、致命傷を避けていたゼインも戦場を駆けていた。
まだ終わりはしない。
譲れない物は、こちらにもあるのだから。
「もう、動くのか……っ!?」
そんな最中、六色の光が再び渦を巻く。
猛烈な螺旋が神々へと飛翔する。
「ゼインッ!」
「俺に指図するな!」
その光景を目の当たりにした瞬間、直進していた俺とゼインはそれぞれ左右へと急転換。大出力の魔法を放って、三神を挟み込もうとしていく。
更にそんな最中、オージーンの斬撃が地を砕き、神々を強襲する。
「我を……嘗めるなァ!」
当然、三人ともこの魔法で勝負を決めるつもりはない――というか、決められるとは思っていない。
本命は“ミストルティン”であり、あくまで陽動。
次元を引き裂かんばかりの一撃が行動範囲を狭めた神々へと迫る。
「創造の神である儂ですら知らぬものがあるとは……興味はあるが許されんのぉ」
とはいえ、連中もただで済む相手ではない。トールとロキが俺たち三人の魔法を、中心のオーディンが“ミストルティン”への迎撃態勢に入る。
このままでは、あるいは――。
「そうそう容易く潜り抜けられると思わないことです!」
「お返し……!」
「傾きそうな勝敗の天秤、無理やり引き戻すしかないでしょう?」
瞬間、セラやフェリス、エゼルミア陛下を先頭に、倒れて復帰した者たちの援護が煌めく。
一斉掃射が神々へと襲い掛かった。
「巨人族の誇りに懸けて、これ以上の狼藉を許すなッ!!」
「妖精騎士団、姫様を援護せよ!」
「今が好機! こうなりゃ、撃ちまくるしかねぇぜ!」
「歴史が変わる。その一撃を……!」
「叩き込むしかないわよねぇ!」
更には巨人族、エルフとダークエルフ、各勢力の人間たち――生き残った者は、己の足で大地を踏みしめ、力の限り魔法を放ち続ける。
「ぬぅ、っ……」
またも一転攻勢。
たとえ一撃一撃が必殺足り得なくとも、この数を無碍には出来ない。その間に――。
「これでッ!」
人々の想いを乗せた螺旋の光が神々を強襲する。
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