第186話 神の次元
三神との激しい戦いは続く。
だが拠点防衛――守る戦いは攻める戦いよりも負担が大きい。
ましてやこの連中の攻撃が直撃すれば、“葬黎殿”が甚大な被害を受けるのは自明の理。一撃たりとも気を抜くわけにはいかないし、“ミストルティン”を失えば勝機は無くなる。常に綱渡りの戦況ということもあって、誰もが険しい表情を浮かべて神々と相対していた。
「くっ!? 闘いの次元が違い過ぎる! 私たちに出来る事は……」
「お気持ちは痛いほど分かりますが、この陣容では……」
「皆の壁になることすら出来ないどころか、手を出す方がかえって足を引っ張っちまう! 神獣種の時は、まだやり様もあったのによォ!」
特にアムラス、シェーレ、グレイブ――準主戦力と呼ぶべき面々は、余波で消し飛んだ破片などを破砕しながら戦況を見守っている。いや、そうするしか出来ないというべきか。
「また突っ立ってるだけかよ!? ちくしょう!」
「以前とは違うということなのでしょう。再発射まで何もないと良いのですが……」
三人共、どの国に行っても王族直轄なり、王都騎士団の役職に就けるだけの力は持っている。才能も戦闘力も申し分ないと言わざるを得ない。
故にこの三人が援護すら出来ずに歯噛みするしかない現状が、どれほど異常なのか――考えるまでもないだろう。
「何という圧力!? 我ら誇り高い巨人族の武が……?」
「足元が崩れるぞ! このままではこちらもいつ吹き飛ぶことか……!?」
それ以下の連中に関しても同様の状況。
「うっく、ひぃぃ!? マイハニー!?」
「ちょっと、ヤバ過ぎるのではなくて!?」
特に各国の争乱に巻き込まれなかった為、物資支給の際には存在感を発揮していたが、ヴァナヘイムに関しては完全に戦力外。嵐の様な激しさ――なんて言葉が陳腐に思えてしまう戦闘の中では、すっかり影が薄くなってしまっていた。
「英雄たちが夢の跡。新たな神話が紡がれようとしている。たとえ、痛みを伴ってでも……」
そんな最中、黒の侍女騎士こと、セシルが本格参戦。戦場は更なる混乱を見せ始める。
「この人たちの魔力は無尽蔵なの!?」
「そう褒めるでない。こんなものは朝飯前じゃ」
「そういう話じゃないのだけどね……くっ!?」
現状、戦場は三分割。
俺とアイリス、フレイヤがオーディンを――。
「良く動く、そして勇猛果敢だな」
「黙れ! 亡霊がッ!」
「どこまでも見下してくれる!」
「二人とも前に出過ぎです!」
ゼインとオージーン、セシルはトールを――。
「随分物騒な酒池肉林だなァ? まあどうでもいいけど」
「のらりくらりと……ッ!」
「また同感……」
「流石に厄介ねっ!」
セラとフェリス、エゼルミア陛下がロキに相対し、激しい戦闘を繰り広げている。
「――!」
因みに巨体故、細やかな連携が取れないニーズヘッグは後方で固定砲台に徹し、皆を援護してくれていた。
「しかし、このままでは……!?」
それでも神の砲撃を吸収している俺を含め、皆の表情は芳しい物ではない。理由は単純。このままでは、いずれ押し切られるのが目に見えているから。
大陸有数の使い手がこれだけ揃っていながら、完全に赤子扱い。今はどうにか抑え込めているが、この連中が本気になったとすれば――。
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