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第177話 王の集い

 ――“葬黎殿”。


 世界の中心であるミズガルズ、四国同盟の本拠地であるアースガルズの中間地点へと移動した浮遊大陸には、残った国々の代表者たちが集結している。議題はもちろん、“ミストルティン”の所在と神々への対処について。


 ニザヴェッリル消失に対する憤り。

 神々と神獣種の真実に対する驚愕。

 俺たちや“神断の罪杯(カオス・グレイル)”の言葉が真実なのかという疑念。


 誰もが行き場のない感情を抱いているのが見て取れた。


 何より、世界がどんな風にできていて、自分たちがどんな存在なのか。

 もたらされた真実は、自分の根源的な存在理由や価値観を全て覆されたも同じ。

 むしろ衝撃を受けない理由がない。


 とはいえ、以前までの冷戦状態であれば交渉決裂どころか、すぐにでも刃を抜く者がいたことだろう。そうならなかったのは、大半の面々と面識があったからだろうし、そういう意味ではとりあえず及第点。

 まあ以前までの関係であれば、対話の卓に全ての国々が揃う事自体あり得なかっただろうというのは、ここだけの話だ――。


 しかし三体の神々と天に隠され続けて来た浮遊大陸。

 先の闘いは地上の全てに影響を与えていたようであり、例え信じられなくとも自分の目で認識してしまった以上、誰もが現実に向き合うしかない。

 というか、真夏の吹雪が収まっていない時点で、何かが起こっている――ということだけは誰もが認識しているようだった。

 故に現状――。

 穏やかとは言い難い空気ながらも、辛うじて“話し合い”の体裁(ていさい)は保たれていた。


「我ら全てがあの神々とやらの掌の上……にわかに信じ難いが、ひとまずそれは捨て置こう。まずは我が物顔で地上を見下ろし、神の真似事をして来た貴様らについてだ!」


 開口一番声を上げたのは、巨人族の王――オージーン・ウートガルザ。

 好戦的というか、誇り高いというか。

 ともかく、奴が来た時点でこういう展開になるだろうというのは、予想の範囲内だった。


「そうですね。神とやらについて懐疑的なのは、私たちも同じ。世界が危機的状況にあるというのなら、協力せざるを得ませんが……より身近な問題である動乱についても、お話を聞かせていただきたいところですが?」


 続いて声を上げたのは、ダークエルフの侍女騎士(メイドナイト)――――セシル・タールヴァ。

 オージーンほどではないが、目つきは鋭い。因みに皇帝兄妹については、彼女の両隣で借りてきた猫の様に縮こまっている。


「それに我が国に訪れた飢饉(ききん)とも、満更関係がないと言い切れぬようだしな。懐かしい顔も無関係とは言うまい……」

「僕たちがどう動くにせよ、まずは情報を開示してもらわないとねぇ。というか、我が国だけハブられてる感が……」


 アースガルズの現皇帝――アレクサンダー・レ・アースガルズも二人の言葉に硬い表情で頷き、性に奔放な愛の国――“ヴァナヘイム”の国家元首である、ヴィスル・ヴァナヘイムはどこか他人事で肩を竦めている。

 前者に関しては、あのアレクサンドリアンの父親。

 後者に関しては、これまでの世界情勢の中で一切静観を貫いてきた国ということもあって、俺たちも唯一面識がない。本人が言っている通りだろう。


 とはいえ、流石は国を統べる王たち。ここに至る流れで、色々と察していたのだろう。

 手を取り合って、一緒に戦おう――なんて、都合の良い展開に発展するわけもなかった。


「そうね、腹を割って話さなければ、誰も相手を信じられないわ」

「過去は過去、今は今……。ですが天上に立って、全てを思うままに操れるとは思わないことです。私たちにも話していないことがあるかもしれませんしね」


 それは事情を知り得るエルフの女王――エゼルミア・アルフヘイムとニヴルヘイムの皇帝――セラフィーナ・ニヴルヘイムも同様。

 俺たちも“神断の罪杯(カオス・グレイル)”を信用しきっているわけではないということだ。


 全ての視線が向くのは、“神断の罪杯(カオス・グレイル)”の参謀にして、元アースガルズ宰相、実質的にムスペルヘイムの女王扱いとなったアンブローン・フェイ。

 ある意味では、世界混沌の中心にいた人物。

 因みにアンブローンが色々と兼任している通り、オージーンも事実上ミズガルズの国家元首扱い。ここにいないニザッヴェリルに関しては、言うまでもない。

 これが全ての国々の代表――今の世界を統べる者たちだということ。


「あらあら、少々居心地が悪いですねぇ。感動の再会だというのに……」


 アイリスとニーズヘッグへの洗脳。

 宰相という国の上層部に名を連ねながらの亡命。

 更にはスパイだった挙句、世界の裏側で混乱を引き起こす者だったという事実。腹の中が黒い所の話じゃない。

 しかし当のアンブローンはどこ吹く風。すっとぼけた様に肩を竦めていた。


 その一方、集っているのは、王たちだけではない。


「――!」


 セラの膝の上にちょこんと座って、アンブローンを威嚇しているニーズヘッグを始め、王族近衛騎士であるアムラス。セラの後方に控えている俺とアイリス。

 そして――。


「ふん、ごちゃごちゃと騒がしい奴らだ」

「……一戦終えた後、眠い」


 “神断の罪杯(カオス・グレイル)”の構成員も円卓に腰かけることなく控えている。因みにフェリスは立ったままの状態で器用に舟をこいでいた。


 正しく今この場所が世界の中心。

 混迷する世界の行く末が決まろうとしていた。

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