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第170話 再びの激突

 ゼイン・クリュメノス――現状知り得る限り、大陸最強クラスの一角。

 そして“無限眼インフィニット・フェニーチェ”の使い手。


「外が騒がしいと思って出て来てみれば、随分と忙しないものだ」

「出迎えが物騒だったからな」

「ふん、まあいい。相まみえるのが早まっただけだ」


 戦場を包み込むのは、神獣種すら超えかねない圧倒的な戦慄。

 他の皆も険しい表情を浮かべている。


「む、貴様、何をやっている?」

「コミュニケーション?」

「――!」


 いや、正確には、じゃれ合っている一人と一体を除いて――ではあったが。


「あの珍妙な生物は貴様の連れか? ヴァン・ユグドラシル」

「珍妙なのはお互い様だ。結局、そっちの小さいのも何が目的でウチに潜り込んだのか分かってないしな」


 ハイレベルなお馬さんごっこというか、灯台ごっこというか。

 ともかく頭にへばり付いたニーズヘッグの重みでフラフラと揺らめくフェリスと抜き身の刃の様なゼインは、少々対照的過ぎる。


「まあいい。どの道、成すべきことは変わらん。貴様らが国元に帰ることは叶わないのだから」

「帰り道の心配は、後ろの物騒な兵器を壊してから考えるさ。大方の見当は付いてるけどな」


 状況から察するに、此処は恐らくムスペルヘイムの上空。

 俺たちは別の世界の飛ばされたわけではなく、あの光によって空に浮遊する大陸へと転移させられたのだろう。


 太陽の位置取りと雲の形は宮殿に訪れる前と何ら変わっていない。

 それにここが異空間なのであれば、“ミストルティン”に関して射程や射角ではなく、発射精度自体に不安があって然るべき。連中の言い様からして、他国と物理的な距離があってのことだろうと予測が立つ。


 つまり俺たちが踏みしめているのは巨大な浮遊大陸であり、その上に“葬黎殿”という天空神殿が(そび)える二重構造だということだ。

 転移装置が大国の玉座というのだから、普通ではまず辿り着けない領域。他の国々を天頂から見下ろすともなれば、歴史の影で暗躍してきたこの連中にはピッタリの根城といったところか。

 そしてムスペルヘイムという国自体、連中の根城となる傀儡(かいらい)国家であるということ。

 普通の日常を送っている市民には申し訳ないが、今は戦う以外に道はない。


「これだけの力を持ちながら、何故こんな物を守る?」

「今は必要なのだ。気に食わないがな」


 同時に切り込んで刃を交錯。

 鍔是る中、蒼金と紅銀の光が瞬き煌めく。


 “禁忌魔眼・解放スペリオル・エクシード”――俺に合わせてか、奴も魔眼を開放している。


 虚無と無限。

 際限なく吸収する力と際限なく発生する力が相反し合い、凄まじい力の波動が大陸を震わせる。


「本当に必要なのか? 世界を、生きる人々を……全て滅ぼす力が!」

「下界など、どうなっても構わん。我らの目的は、そんな矮小(わいしょう)なものではない!」

「そこまでして果たしたい目的……俺たちに一体何を求めている!?」

「真実を知りたくば、“終焉血戦(ラグナロク)”……その本質を理解することだ!」


 剣が薙がれ、紅蓮の暴流が放たれる。

 黒翼より刃を飛翔させる。


 再びの激突。更に斬撃を交錯させていく。


「太古の戦争……そんなものは、とうに終わっているはずだ!」

「笑止、まだ終わってなどいない。この腐った世界を作り出した、天地創造の戦争は……! 俺たちは生かされているだけだ。世界に、狂った調律者たちによって……!」

「狂った調律者……神獣種……その上にいるのは……!?」


 振り向き様の一閃を受け止められ、暴君の刃が薙ぎ払われる。

 飛翔して躱せば、掌から放たれる紅蓮の砲撃。

 瞬間吸収して叛逆の刃を翻すが、漆黒の斬撃が空を切る。


「“神”……!」


 獄炎と蒼炎――破壊を司る炎が激突する。


「この腐った世界(システム)を生み出した神々は、確かに彼の戦争で大きく数を減らした。だが、その全てが死んだわけではない。今も眠りに就いて、この世界に自らの秩序を蔓延(はびこ)らせている!」

「その尖兵(せんぺい)が神獣種……!?」


 点と点が急速に繋がり、一つの線となっていく。

 だが一番重要な部分が解せない。


「何故、それほどまでに固執する!? 今此処に在る世界は……!」

「ある一定の栄華を超えれば、神の獣によって間引かれる。人間もモンスターも、何もかも……」

「まさか……!?」


 脳裏に過るのは、カールやニヴルヘイムでの一件。

 まるで地震や噴火の様に、何の脈絡もなく襲い来た神獣種とフェリスの言葉。


「この世界は神々の思うままに淘汰、調整され、管理下に置かれている! 奴らが天に立つ限り、世界に安寧などない!」

「……ッ!? 人口が増え過ぎれば、一掃される。技術や魔法の進歩も何もかも……。俺たち全てが操り人形ということか!」

「そうだ! そもそも“終焉血戦(ラグナロク)”とは、この世界の保有権をかけて繰り広げられた神々の争い。結果として、世界全土が灰燼と化し、死に体となった神々も永い眠りに就いた。だが、その眠りは終わりを迎えようとしている」

「休戦状態での眠り……それが終わるのだとすれば……」

「“終焉血戦(ラグナロク)”が今世に蘇る! そして、真っ先に首を飛ばされるのは、理を超えて神を殺せる力を持った俺たちだということだ!」


 奴が言っていることが本当なら、“ミストルティン”どころの騒ぎじゃない。

 このままでは生殺与奪とも称せる支配権を他者()に明け渡すこととなり、世界が滅ぶ。俺たちは、その瀬戸際にいるのかもしれない。

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