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第165話 復活の『A』

「それにしても皇帝の騎士ってのは、随分と色んな所に来るものなのねぇ。でも皆揃って、こんな資料(ゴミ)の山に……って、あら!? 宝石(ジュエリー)!? それに金塊(ゴールド)!? アタシはヴァンの彼女なんだから、ちょっとぐらい貰ってもいいわよねぇ!?」


 とんでもない勢いで頭を殴りつけられるような言葉の嵐。

 更にアメリアはずけずけと資料室に入って来たかと思えば、中を物色。端の一角を占めている小さな宝物庫から勝手に指輪やらブレスレットやらネックレスやら――とにかく煌びやかな装飾品を片っ端から身に着け始めた。

 目を輝かせながら窃盗を働いている光景は、肝が据わり過ぎているセラやエゼルミア陛下ですら、目を丸くしてしまう程度には異常――というより、常識が欠けていると言わざるを得ないものだった。

 元々世界一の大国でそれなりに裕福なエリート騎士をやっていたところから寄生虫(ヒモ)女子、大名婦人未遂、超貧困である現状と上がり下がり凄まじい日々を送って来たとのこと。なんかもう色々と感覚がぶっ壊れてしまっているんだろう。いや、元々頭はおかしいのか。


 まあ、それはそれとして聞き逃せない単語があったわけだが、今は追求する時間などない。

 何故なら、アメリア(馬鹿)の大声を聞きつけ、宮殿内の衛兵たちが集まって来てしまっているから。しかも最悪なのは、一つしかない出入口でそんな騒ぎが起こっていることであり――。


「貴様、こんなところで何をやっている!?」

「イヤ! ちょっとどこ触ってんのよ!」

「黙れ! 我らはオバ専ではない! そこの者たちもボサっとしていないで、我らに協力を……」


 これだけ複雑な事情が絡み合う状況の中、全てハズレとも言える立ち振る舞いを我が物顔でしている辺り、最早才能の域に達している。

 とにかく、このまま兵士としてやり過ごすのは無理。アメリアと兵士四人、全員の口を塞ごうとした瞬間、事態は最悪どころじゃない状況へと発展する。


「な、誰に向かってェぇッ!! あそこにいるのはねぇ! ニヴルヘイムの皇帝と騎士なのよ! そしてアタシはその騎士の伴侶! 不敬罪で全員打ち首にしてやろうかしら!?」

「何ィ!? ニヴルヘイムの皇帝がこんなところにいるはずが……!?」

「いや、蒼銀の髪をした美女……それにエルフのお姉さん、だとォ!?」

「ちょっと!? ここにいるのが一番の美女でしょうが!!」


 認識阻害魔法とは書いて字の如く、視界情報の認識を阻害しているだけ。

 本当に姿形が変わっているわけじゃないし、相手に違和感を覚えられたら効き目が弱くなる。ましてや“ニヴルヘイムの皇帝・騎士”なんて固有名詞を出されたのだから、違和感どころの話ではなく、完全に俺たちの正体がバレてしまった。

 この間、僅か一瞬の出来事。


「あーあ、もう滅茶苦茶だよぉ……」

「なんなんだ、あの女は……」


 多少なりとも面識のあるアイリスはともかく、ザ・紳士とも称するべきアムラスのこんな雑な口調を聞くのは初めて。


「――」


 何より、バッグから少しだけ顔を覗かせているニーズヘッグの表情は、これまで見たことがないものだった。一言で表すなら、苦虫を嚙み潰したようというか、ゴミを見るようというか――。


 しかも、不審者侵入発見から始まり、アメリアの無駄に若くて甲高い声、更にニヴルヘイムだのエルフだのという固有名詞を五人の大人が大声で叫び合っているのだから、宮殿中に反響してしまうのも当然。

 口を塞ぐとか被害を小さくするとか以前の問題。つまりアメリアが一言叫んだあの時点で完全に手遅れというわけだ。


「ヴァンもそこの連中もさっさとこの馬鹿たちを……って、ちょっとぉ!?」

「な、貴様らぁ!?」


 瞬間、エゼルミア陛下が加減をした薄い魔力の塊を放てば、アメリア以下数名が思い切り吹き飛んで壁に激突して昏倒。その間に資料室を脱出して、王の間へと走り抜ける。

 何故こんな強行突破を選択したのかと言えば、衛兵が俺たちの存在を認識した瞬間、宮殿の中心から強大な力が端々へと拡散していったのを感じ取ったから。


 それは神獣種にも匹敵しかねない凄まじいまでの力の奔流であり、“叛逆眼(カルネージ・リベルタ)”が共鳴(・・)する感覚も内包していた。

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