第155話 灼熱の洗礼
例の如く、変装用の外套を着こんで国元を離れた俺たち。
現在進行形で大陸を南下、砂漠地帯に突入しているわけだが――。
「あづいぃ……っ!」
「ちょっと、貴女!? いつまでヴァンにしがみ付いているのですか!?」
ニヴルヘイムを発って既に二週間近く経過した今、大きな問題自体は起こっていないものの、超熱帯という他ない気候には誰もが表情を歪めていた。
「だって暑いんだもの」
「それは私とて同じです! 引っ付いたら更に悪化するだけでしょう!?」
先遣隊として同行しているメンバーは、俺とセラ、アイリスとエゼルミア陛下、それとアムラス。その上、ニーズヘッグを加えた面々。言ってしまえば、四国同盟の最高戦力。
何故、前回は国元に残して来たニーズヘッグまで共に歩んでいるのかと言えば、敵の本拠地かもしれない場所へと乗り込むに当たって、セラの安全を少しでも守るためという理由から。
更に先の神獣種の襲来と“混沌の罪杯”の介入――はっきり言って、次同じことがあれば、俺たちが残っていてもニヴルヘイムは破滅する。
それならニヴルヘイムの守りを手薄にしてでも、事態を動かす方に力を入れようと提言したのは、セラの姉であるソフィア殿下。
前回の闘いを含め、今まではセラたちを前面に押し立てて国を守って来たのだから、次は国民にも重責を負ってもらうとのこと。これは賭け。犠牲失くして勝利はない――と出発前夜に残したソフィア殿下の言葉は記憶に新しい。グレイブやシェーレたちも同様に俺たちを送り出してくれた。
つまりこれまでの日々の中で同じ覚悟を抱いていたということだ。あの状況の国から離れることに気が進まないのは当然だったが、そんな覚悟を示されては、残った連中を信じるしかない。
故に現状、だったはずなのだが――。
「しかし本当に暑すぎるわねぇ」
「全く、本当に全く……」
「正直、何とかの背比べというか、どっちもどっちっていうか……」
「陛下……」
「――!」
ぐでーっと、もたれかかって来るエゼルミア陛下と、何故か逆サイドから同じことをしてくるセラの真似をしてか、ニーズヘッグも俺の頭の上で伸びている。アイリスたちの呆れたような視線も、中々のダメージだ。
まあこんな感じで色々とキャラが濃くはあるが、死闘の旅を乗り越えた面々とあって連帯感がないわけじゃない。緊張してガチガチになるぐらいなら、これぐらい肝が据わっている方がいいのだろうというのは、俺も同感ではあるものの――。
「暑い……」
両腕に広がる暴力的な感触とは別に、拭えない汗の不快感が消えることはなかった。
「ホントにね。これなら裸でいる方がマシよ」
「いえ、せめて水着にすべきでしょう」
それは両サイドの二人も同じだったんだろう。片手で気怠そうに得物を振るうと、進行方向から強襲してきたスコルイーターの群れが凄まじい勢いで蹴散らされていく。
静も動もない駄々っ子の様な攻撃で一般兵士が辟易する相手が消滅していく様は、何とも言えない哀愁を感じさせる光景だった。
「論点はそこじゃないと思うんだけどなァ……」
「そちらの皇女も思考回路が麻痺しきっているようですね」
「北国育ちだ。無理もない」
だが直後、本当に女性陣が水着姿を披露することになるとは、この時は誰もが予想だにしていなかった。
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