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第154話 新たな旅立ち

 フヴェルゲルミルでの大立ち回り――神獣種三体との決戦より、二週間。


 誰もが血眼になっての復興活動が実を結び、少しずつではあるがこの街は本当の姿を取り戻しつつあった。

 当然、エルフ、ダークエルフからの補給物資、人員の力が大きかったのは言うまでもない。因みに何故ここまでアースガルズの名が出てこないのかと言えば、ミズガルズ動乱とミュルクの一件然り、外を援助する余裕がないから。

 まあ一応、他の二ヵ国に比べれば微々たるものとはいえ、補給物資は送られては来ているし、アウズン将軍が相手なのだから信用しても良いだろう。アレクサンドリアンの時の様に攻め込んでくることはないはず。

 仮に来たとしても、当時より遥かに強くなった俺、セラ、アイリス、月華騎士団(ヴァーガルナイツ)。元鞘に収まったとはいえ、連中の最終兵器だったニーズヘッグ。

 そんな過剰戦力に加えて――。


「お風呂気持ち良かったわねぇ」

「全く、貴女たちという人は……」

「あらあら、背中を流し合うのも重要なことよ。裸の付き合いってね」


 バスタオル姿で大浴場から戻って来た三人の美女。

 セラとソフィア殿下、それと滞在しっぱなしであるエゼルミア陛下。


 何故アルフヘイムの王がまだニヴルヘイムに残っているのかと言えば、とある情報の提供と作戦行動を提言して来たから。

 ただニヴルヘイムは復興作業で首が回らなくなっていた為、エゼルミア陛下の案件に手が付けられなかった。その結果、滞在期間が延びているわけだ。


「――」


 因みに頭にタオルを乗せてホクホク顔のニーズヘッグは、そんな三人の後をついて回っていた。


 そして今、ようやくエゼルミア陛下が持ち込んだ最重要案件と向き合う時が来たというわけだった。


「……ニザヴェッリルの消滅と砂漠に住むモンスターが北上していること。その余波はアルフヘイム、ズヴァルトアルフヘイムでも観測しているわ」

「アースガルズからも同様の報告が上がって来ているし、何らかの異常が起こっているのは間違いないわねぇ」

「異常の発生地点は南の方角……統べるのは、炎の大国――“ムスペルヘイム”。神獣種か“神断の罪杯(カオス・グレイル)”なのかは分かりませんが、どちらかに関係している可能性は高いと考えるべきでしょう。捨て置く理由はない」

「そこで私がこの国まで出張って来たと言うわけね。散々迷惑をかけてくれた連中のアジトに乗り込む為に……」


 つい先日、相対した異常現象――神獣種の襲来と“神断の罪杯(カオス・グレイル)”による介入。

 エゼルミア陛下とアムラスの言葉は、俺たちが死闘を繰り広げている裏で色々と動いてくれていたことを示している。同時にエルフの王が動くに足り得る情報ということもあり、皆の表情が真剣さを帯びていく。


「具体策はあるのですか? はっきり言って、ニヴルヘイムでムスペルヘイムについての情報をほとんど持ち得ていませんが……」

「雄々しく、猛々しく潜入……! ってところかしらね」

「はぁ……」

「そんな顔しないで。この国よりは多少情報を持っているけど、流石に内部の詳しいところまでは把握してないのは同じってことよ」

「ふむ、なるほど……とはいえ、他に手段もなさそうですね。何らかの理由でニザヴェッリルが消滅した以上、政治的圧力を……というのも、危険でしょうし」


 導き出された結論は、あまりにも正面突破。スムーズ過ぎる議論には嘆息の余地すらない。

 まあ、正体不明の連中が暗躍していて、いつ自分の国が吹き飛んでもおかしくないという状況なのだから、スピーディーな進行は歓迎して然るべきなのだろう。

 現にニヴルヘイムも大きな被害を受けているのだから尚更だった。


「いつもと同じだな。周りは絶望塗れ。リスクを冒してでも進むしかない」

「そうですね。いくら大規模だったとはいえ、一度の襲撃でこの有様。二度三度と続けば、どの道滅亡は免れない。それならこちらから動くしかないでしょう」


 この危険な状況の中、再び国元を離れなければならない事態は、お世辞にも歓迎できるものじゃない。だが底知れない脅威に怯えながら暮らす日常だけを必死に守っていても、何の解決にもならない。

 故に旅の目的地は決まったも同然だった。

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