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第147話 ニヴルヘイムの力《Explosion Force》

「ちょっと、貴女!? 何をやっているのですか!?」

「ちぃっ!? 間に合えよぉッ!」


 シェーレとグレイブは上空から撒かれる毒液の前に立ちふさがり、各々の魔法で白の少女を守った。それでも困惑は隠し切れない。


「魔眼を使うと疲れる。ゼインや“叛逆眼(カルネージ・リベルタ)”の彼の様に能力を使いまくる方が滅茶苦茶……」

「そ、それは、もしかしたらそうなのかも知んねぇが、戦場のド真ん中だぞ!」

「……」

「寝ないでください!」


 一方、当の少女は今も戦場の真ん中で舟を漕いでいる。

 鼻提灯(はなちょうちん)が出来る前に止めたのは、シェーレのファインプレーなのかもしれないが、やはりこの少女には掴み所が無い。実力自体は申し分ないのと相まって、何とも肩の力が抜けてしまう光景だろう。

 だが白の少女が気怠そうに大きなあくびをしながら瞳の翡翠を瞬かせれば、助けに入った二人の表情が一変する。


「なんだこりゃあぁっ!?!?」

「力が、溢れて来る……!?」


 各々の魔力光に翡翠の光が織り交じり、猛烈に力を増していく。

 それはこれまでの二人では到底出し得ない出力であり、明らかに異常と言わざるを得ない。一つだけ明らかなのは、そこに“恤与眼(ギフレイン・ドグマ)”の力が働いているということ。


「後は頑張って、私は休憩……」


 そんな中、白の少女は建物の端にちょこんと腰を下ろして座り込んでしまった。マイペース極まりない行動ではあるが、力を増した二人はアイム相手に果敢に挑んでいく。


「何が起こってるのかは知らねぇが、今は行くぜぇっ!!」

「ええ、あの時と相手は違いますが……今度は戦力外になるわけにはいきませんので!」


 共に巨大な得物を用いての左右挟撃。

 それも素の力も魔法もさっきまでと別次元の領域に達しており、二対一とはいえ、アイムと切り結んでいた。

 白の少女の助力を得て、神獣種と戦いが成立する次元まで這い上がって来たというところか。


「自分の力を他者に付与したのか。いくら元々技量はあった二人が対象物だったとはいえ、ここまでとは……」


 白の少女が何をしたのかについては、“恤与眼(ギフレイン・ドグマ)”の能力から推察できる。

 とはいえ、頭で理解するのと目の前で起こっている現象のギャップには、計り知れないものがあった。


「ヘイ、そこのガール! ウチ等も二人みたいにやってくれへん!?」

「戦力不足は解消すべき。後、私とキャラが被っている様な……」

「出来れば私もお願いしたいのだけど?」

「無論、僕も……」


 激しい戦闘が繰り広げられる傍ら、コーデリアとリアン、第七小隊の残り二人が白の少女の下へと集っている。


 今戦っている二人の急速な変化。

 国の中心で大乱戦を繰り広げている現状。

 相手が複数の神獣種であることを思えば、連中の要求は尤もだろう。


 だがその要求が聞き届けられることはない。


「……魔眼を使うと疲れる。そんなに何人も無理」


 それは恐らく敵味方というしがらみではなく、“恤与眼(ギフレイン・ドグマ)”の限界値。

 魔眼は万能の力ではないということだ。

 しかし完璧・無敵ではなくとも、異常であることには変わりない。戦況は激しさを増していく。


「にゃろう! デカい図体して結構速いじゃねぇか!」

「■■――!!」


 良くも悪くも大味なグレイブが前線で暴れ、それをシェーレがサポートする――という、陣形(フォーメーション)は理に適っている。

 何せタイマンでは神獣種に敵わなくとも、連携によって地力の差を埋めていけるのだから。


「地中には逃しませんよ!」


 とはいえ、シェーレの本職はサポートではなく、突撃兵。

 隙を狙っては前に出て、強烈な一撃を確実に浴びせていく。


「■■■――!」


 一方、アイムも二叉槍(バイデント)の穂先に暴風のような魔力を纏わせて逆襲の応戦。更に周囲を溶解させる毒液を撒き散らしていた。

 流石に神獣種。一筋縄で倒せるはずもなく、むしろ戦力総量としては未だアイムの方が上回ってすらいる。

 だがニヴルヘイムの戦士も立ち止まらない。


「皇帝陛下の露払いと言えど、今は全力で戦うのみ!」

「ああ、もうあんな思いは御免だからな!」


 先ほどシェーレが言っていたように、この状況は連中のトラウマと近しいものがあるのだろう。

 その一方、ある意味ではリベンジの機会とも言えるはず。

 故に皆の闘いに秘められた思いは、国を守るだけではないということ。


「ともかく二人を援護します!」

「ああ、それしかあらへんなぁ!」


 雷の矢、長剣の斬撃、螺旋の槍、小剣の群れ――仲間たちの一斉掃射が押され始めた二人を援護、大技をぶち込む隙を作る。


「これはニヴルヘイムの戦士の闘い……か」


 俺もまた、アイムの毒液塊とアンドラスが従えている巨狼のブレスを纏めて叩き斬りながら反転、“投擲小剣(ダガーダーツ)”を放り投げる。

 ニヴルヘイムの象徴(クリスクォーツ)で創られた小剣(ダガー)を――。


「■■■■――!?」


 指の間で挟んで投擲した三本の小剣(ダガー)は漆黒を纏って加速。一斉掃射を阻もうとしたアイムの肘付近へと突き刺さり、二叉槍(バイデント)の動きを鈍らせる。

 その間、コーデリアたちの一斉掃射が炸裂して巨体がよろめき――。


「“壊劫すべし、剛天裂断(ブレイクアバドン)”――ッ!」

「“絶突咆哮スティンガー・スクリーム”――!」


 魔眼の力を得て別次元へと昇華した二重斬撃が神獣種の身体を斬り裂いた。

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