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第141話 降り注ぐ黒星《Trident Star》

「この揺れは、一体……!?」

「自然の物じゃないことだけは確かだろうな」


 穏やかな食事中、突如発生した激しい振動に襲われる。

 だがこれはただの地震などではない。上からの飛来物が大地を、都市全体を揺るがすほどの衝撃を与えたが故の――。


「ということは……!」

「敵襲と見て間違いないだろうな」


 第七小隊の二人の顔面に皿が直撃したり、ニーズヘッグが楽しみにとっておいた洋菓子に顔面から突っ込んでいる傍ら、俺とシェーレは騎士団施設の外へと疾駆する。

 視線の先に広がる光景は、これ以上ない程に最悪なものだった。


アレ(・・)は……!?」


 黒大狼に(またが)って天を駆けるのは、巨躯持つ漆黒の鳥獣騎士。

 正しく、ニヴルヘイムにとっては因縁とも称せる相手であり、伝承によって語り継がれた神獣種の一柱。


「その姿を忘れるわけもない。よもやこうして相まみえることになろうとは……!」


 アンドラス――かつてニヴルヘイムに甚大な被害を与え、セラと刃を交えたとされる相手。

 見慣れぬシェーレの激情。

 かつて聖剣(グラム)によって、袈裟(けさ)に刻まれたであろう巨大な胸の傷が全てを物語っていた。


「しかし、上空(うえ)から直接突っ込んで来られては、城壁も何もあったもんじゃない。これでは一般市民が……」


 神獣種との遭遇というだけでも最悪。

 それに加えて、此処(ここ)は首都のど真ん中。

 有事のマニュアルどうこう以前に、市民の避難すらままならない。

 正しく突発的に現れた奴は、生ける自然災害。モンスターというより、地震とか、噴火とかそういう類を相手にする覚悟でいかなければならないということ。


「なんでモンスターが、街ん中に!?」

「うそ、化け物!? いやあああぁぁ――ッッ!?!?」

「ちっ、暴動は予想通りとはいえ……」

「あっちもこっちも問題ばかりですね……!!」


 住民たちが悲鳴を上げると共に、天頂より漆黒の三叉槍(トライデント)が振り抜かれた。

 瞬間、迫り来るのは、巨大な刺突斬撃。

 愚かで無力な人間は、天からの裁き(イカヅチ)を絶望の表情を浮かべながら眺める事しか出来ない。


「■■……」

「……っ、ユグドラシル卿!?」


 だが瞳に蒼穹を煌めかせながら突貫。

 一撃を無効化して黒翼で舞い上がり、漆黒の鳥獣騎士と相対する。


「ともかく街から引き離す。このままではどうにも……」


 現状、街は最大級の混乱に包まれている。

 中でも最大の弊害は、逃げ惑う人々が肉の壁となって、皆が身動きを取れなくなっていること。さっきから気にしている市民の避難は勿論、月華騎士団(ヴァーガルナイツ)の連携も分断される。だからこそ、最悪の状況。


 突破口は奴を街から押し出す事――と、刃を構えたものの、半ばで思わず言葉を途切れさせてしまう。


「全く、団体さんでお越しとは……」


 何故なら、招かれざる客が大量に飛来して来る光景を皆より先に見てしまったから。


 狼に跨り、それに合わせた人間サイズの鳥獣騎士。

 正しくアンドラスの配下というか、奴が従えている連中なのだろう。


 表情が険しくなるのが自分でも分かった。


 何にせよ、状況が悪すぎる。

 一刻も早く、連中が到達する前にアンドラスを押し出したいところだったが――。


「何の目的かは知らんが、厄介だな!」

「■、■■……!」


 無茶は必至。三叉槍(トライデント)と双剣を交錯させ合いながら、激しい空中戦へと突入した。


 とはいえ、流石に神獣種、出力も凄まじければ、隙も見当たらない。不利な空中戦では、地上へ到達させないのが手一杯だ。

 何より、奴の部隊規模が分からない以上、自爆の危険がある切り札を発動するのも得策ではない――と、破壊の波動を散らしながら刃を交えていた時、直下より巨大な物体が迫り来た。


「ど、おおおりゃあああぁ――ぁぁっっ!!!!」

「グレイ……」

「此処で会ったが百年目だぜェ!!」


 その物体とは、高台から飛び出して来たグレイブ・ハーナル。

 クリスクォーツの大剣に魔力を纏わせ、一気に振り抜いた。


「■、■■……!」

「ぬおぉっ!?」


 豪快な一撃は三叉槍(トライデント)の柄を叩き、アンドラスをよろめかせた。

 しかし凄まじい一撃ではあるものの、やはり踏ん張りが利かない空中。押し返される形で打ち落とされていく。


「騎士団も立ち直ったか。とはいえ……」


 住民の避難と迎撃準備。

 完全ではないが、既に騎士団も動き始めているのは朗報だろう。


 だが人の波が流動し始めたが故の懸念事項も存在している。


「攻撃を下に逸らさずに神獣種と戦う……か。無茶な注文だな」


 現状、唯一の空中戦力である俺が攻撃を避ければ、無防備な上からの炸裂で下の連中が消し飛ぶ。それも辺りへの被害を気にしながら戦える相手なのかと言われれば、当然ノーだ。

 いつでもどこでも、こんな戦いばかりだと内心で苦笑せざるを得ない。


「■、■■■!」

「ちっ!」


 そんな状況で刃を交えていく最中、またも視界の端に予想外過ぎる物体が映り込む。

 高台の上に乗ったアサレアが戦闘用の杖を構えている姿が――。

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