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第136話 骸の大地《Sacrifice》

「■、■■……!?」


 二つに分かれた赤褐色の肉体が漆黒に呑み込まれるように消失した。


「敵将討ち取ったり! いけぇい!」


 その瞬間、オーダー卿の指示で背後からの魔法が勢いを強め、残った敵を掃討していく。


「元気なオッサンだな。というか、敵将? いや、間違ってはいないが……」


 何体に弾幕を突破されたり、合間からブレスで強襲されたりと多少の被害は出たが、敵対勢力を全滅させたのは、それから一〇分と少し後のこと。余裕をもって戦力を残していたおかげか、死者ゼロでの事態収拾。最良の結果と言えるだろう。

 だが皆が一息付く傍ら、未だ戦場の空に一人佇む俺が抱いていたのは、歓喜や安堵の感情ではなかった。


 何故なら、そもそも南の地方に住むモンスターの群れが北上して来たこと自体については、何も解決していないから。


「あまり歓迎できる状態じゃない、か……」


 本来生物――いや、遺伝子の進化は、何千年、何万年単位で脈々と受け継がれながら進行するものであるはず。

 だからこそ、じゃあ今年からここに住もう――なんて、生体が激変することは考えにくいし、元の生息域から考えれば、いきなりニヴルヘイムまで北上して来るのはあり得ない。

 であれば、予測される原因は更に絞られて来る。


「屈強なモンスターを蹴散らすほどの要因……。自然災害の類か、もしくは……」


 この段階で詳細を知る術はないが、やはり心当たりは二つ。


 可能性が低い方としては、今口にしたような自然災害で生育環境が破壊されたというもの。

 しかし、ここまで生息地から離れた場所にモンスターが移動して来るほどの異変であれば、どこかから情報が入って来るはず。特に今は、外の情勢を最大限気にしているのだから尚更だ。

 そんな報告がないということは――。


「災害クラスのモンスターが現れたのか、それとも……」


 群れの連中はともかく、“スコルデリンジャー”、“ゼロンガーゴイル・フォルツァ”――共に上位種の中でも決して低いとは言えない脅威度を誇っている。少なくとも、そこらのモンスターに生育環境を破壊されるわけはない。

 つまり上位種を群れごと退けるに足り得る種族――神獣種が徘徊(はいかい)している可能性が高いということ。それほど期間を開けずにニヴルヘイム、カールにアンドラスが襲来したことと合わせて、間違いはないだろう。だがもう一つだけ、大きな懸念事項も存在している。

 何故なら、神獣種に匹敵しかねない力を持つ者たちに心当たりがあったから。


「“神断の罪杯(カオス・グレイル)”……」


 四国同盟の手の届かない南の地で、確実に何かが起こっている。

 いや、そもそも昨今のニヴルヘイムが苦しめられ、アースガルズが開戦の引き金にしたモンスター被害の増大の原因にも関係しているのかもしれない。

 俺たちの知りえぬ何かが――。


 今は自分が信ずる道を進むのみとはいえ、まだ何も終わっていないと改めて見せつけられたも同然。だからこそ、大規模な侵攻を防いで一息ついている月華騎士団(ヴァーガルナイツ)の下へと戻る気は欠片も湧いてこなかった。

 ただ、砕けて陥没している骸の大地を一人見下ろしながら、鮮血と肉片で汚れた惨劇の跡を目に焼き付けるのみ。

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