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第120話 覚醒ノ叛逆者

 白銀の極光が渦を巻きながら舞い上がる。

 更に蒼穹の光が全てを喰らい尽くす様に、渦の内側から輝きを増していく。


 異常な現象。

 だが、変化はそれだけではない。


「――」


 瞳から放たれていた蒼穹の十字光が刃の意匠を執る六芒星へと形を変えた。身体の奥底から湧き上がる黄金の光が、蒼穹と折り重なって一つとなる。

 それは二色の魔眼。

 魔眼が到達する進化形態。

 “禁忌魔眼・解放スペリオル・エクシード”――。


「その光は……」

「魔眼の力は術者の感情によって増幅される。たとえ、それがどんな感情だったのだとしても……」

「なるほど、死を前にした極限状況で新たな力を得たか……。まだ愉しませてくれるようだな、小僧!」


 人間は自分が理解できない現象を何よりも恐れる生き物だ。

 故に魔眼を持つ者は忌み嫌われ、一部の例外を除いて世界から排除されてしまう。結果、存在すらも歴史からも削除され、今や神話の伝承を(さかのぼ)らなければ、力の源流すら知ることができない有様だ。

 だがセシルとの会話と新たな領域へ至った現状を経て、分かったこともある。


 魔眼保持者も精神や肉体は、大多数の人間と何ら変わりない。周囲からの拒絶に苦しむのは当然だし、それに呼応して力が高まってしまえば、自らの魔眼を制御できずに暴走。要は筋力や知能、魔力量と同じく、年月を経て成長するはずの力が過剰増大して、術者のキャパシティを超えてしまうわけだ。

 そうして周囲を巻き込みながら破滅の一途を辿る。

 理解し得ぬ異質な力と暴走の危険性。普通の人間を害する災厄の象徴と称され、今日まで続いているのだろう。

 魔眼とは、本来人の身に余る力。人間が持つべき力ではないということ。


 現に俺自身、新たな力を制御できていないどころか、自分がどんな状態なのかすら定かじゃない。

 ただ一つだけ理解できているのは、ゼイン・クリュメノスの“無限眼インフィニット・フェニーチェ”が見せたように、単純に能力が増大しているということ。

 際限なく周囲から魔力を吸収してしまい、この短時間で暴発寸前となるまでに――。


「生憎と楽しんでいる余裕はなさそうだ。最初から全開で行く……!」

「ちぃっ!?」


 地を蹴り飛ばす。

 俺の姿が掻き消え、蒼金の聖剣と白銀の戦斧が激突する。


「先ほどまでとは段違いの出力だ。この我と競り合うとは!」

「これで押し切れないお前の方が化け物だけどな!」


 奴の言う通り、今度は弾かれることなく、刃同士が鍔是り合う。

 限界までの身体強化と黒翼の推進力を用いてですら、斬り合えなかったさっきまでとは雲泥の差。

 更に赫黒の魔剣を翻して、今度はこちらから仕掛けていく。


「“天柩穿つ叛逆の剣リベリオン・ヴルガータ”――!!」

「“巨人の裂撃(ティタン・ブラスト)”ぉ!!」


 黒戟閃、裂撃。

 “レーヴァテイン”による一閃と、奴の戦斧が再び交錯。

 先ほどの比ではない勢いで破壊の波動が広がっていくが、漆黒の一閃が大地を砕く。


「ほう、我が一撃を退けるとは……!」

「受け流されたか……!」


 “我、迷いを断ち穿つ牙(クルセイド・ファング)”――後方へと距離を取ったオージーンに肉薄し、今度は聖剣を用いて漆黒の逆戟を奔らせる。

 新たな剣戟は白銀の一閃で受け止められるが、またも奴を弾き、後方へと押し出していく。


「“慟哭の刃雫マリシャス・ティアーズ”――!」

「己で喰らった力を器用に操るものだ!」


 黒翼飛翔。

 大地を蹴って再び肉薄すると共に、漆黒の刃を翼から無数に打ち出す。


 超至近距離からの超速連続炸裂。

 爆炎の華が視界域を埋め尽くした。


 同じ技でありながら、出力も規模も別次元。

 その上、さっきまで俺に負担を強いていた吸収と放出を高次元で両立しながら、あのオージーンと互角以上に渡り合えている。

 これが“叛逆眼(カルネージ・リベルタ)”に秘められていた真の力。


「斬り裂く……ッ!」


 “混沌祓う聖魔の双戟アトミックカオス・インフェルノ”――力の炸裂の中を突っ切り、二振りの剣を振り抜いた。


「ぐっ……!?」


 オージーンの身体に紅の筋が奔る。

 それでも、まだ倒れない。


「……これほど長く、我の前で戦った者は貴様が初めてだ。しかし、力の代償は計り知れんようだな」


 急速な強化と大技の連発で優位に立っているのは事実。


 だが未だ仁王立ちの奴に対し、俺の負荷は強まるばかり。

 目からの出血は止まらず、攻撃されていないのに全身の傷が広がっていく。


 これは新たな力を理解もせず、全力で行使し続けている弊害――際限なく吸収し続ける力を放出することだけで手一杯な現状を示している。

 いつものように細かい制御など到底できるはずもなく、傷の治療なんて夢のまた夢だった。


「……代償の無い力なんて存在しない。少なくとも、何も出来ないより遥かに良いさ」


 現状を一言で表すのなら、時間がない。

 このまま守りに入られてしまえば、間違いなく自分の力によって、俺自身が吹き飛んでしまうだろう。

 さっきまでの荒々しい戦いも力が制御できていないだけではなく、短期決戦以外に勝機がない故のものだった。


「小僧、貴様……その瞳で何を見た?」

「人間の醜さと力強さを……」


 今回は翼を四散させて力のリソースの振り分けをする余裕などない。

 死神か、黒騎士か、堕天使か――人ならざる姿となり果てようとも、ただ全ての力を爆発させる。


「ふっ、ただの小僧ではないということか。貴様、名は?」

「ヴァン・ユグドラシル……」

「そうか、力の限り向かって来るがいい! ヴァン・ユグドラシル! 強き目をした戦士よ!」

「これで終焉(おわ)らせる」


 黒翼を黄金の光が縁取り、一回り巨大化した。

 溢れ出る力が大地を揺るがす。


「“破滅衝く黎明の剣(ロストエンジェル)”――ッ!」

「“巨人の剛天撃(ティタン・ブレイク)”――ッ!!」


 最後の一撃――再び互いの最大火力が激突する。

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