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第117話 疾風迅雷

「いくら物理主体とはいえ……」

「なんだァ? お前は!」


 このまま流れを持っていかれたら、間違いなく押し切られる。とにかく先頭部隊を叩いて、出鼻を(くじ)く以外に道はない。

 今回は友軍誤射(フレンドリーファイア)も歓迎とばかりにエルフたちの魔力弾を吸収しながら、自らの力を高めて崖を疾駆。勢いのままに跳躍すると、手前の巨人が構える盾を蹴り飛ばす。


「ぬおぅっ!?」


 すると崖登り中の巨人は大きく体勢を崩し、下にいた二人を巻き込みながら転げ落ちていく。


「ほう、まさか我ら相手に正面から突っ込んでくる馬鹿がいるとはッ!」

「馬鹿じゃなきゃ、戦争なんてできないさ。仕掛けて来たのはお前たちだけどな!」

「ぬかせぇっ!!」


 巨剣――なんてレベルじゃない大きさの剣で()がれるが、岸壁を蹴り飛ばした勢いで横へ避ける。だが、そこを狙って別の巨人に棍棒(メイス)を振り下ろされた。


「ちっ!?」


 瞬間、黒翼を生成して空中で緊急横回転(バレルロール)

 回転の勢いをつけて、棍棒(メイス)持つ巨人の盾に漆黒を纏わせた足刀蹴りを叩き込めば、再び巨体が転落していく。


「おっと、こりゃ面白い小僧だねぇ!」

「へぇアタシらと遊ぼうじゃないか!」


 だが今度は二人の女巨人が左右から迫って来る。

 女性に囲まれて嬉しくない状況なんて――意外と心当たりがあったりもするが、鋼鉄の塊で両サイドから挟み込まれるのは流石に初めてだ。勿論、黙って受け入れるわけもなく、逆手で引き抜いた“デュランダル”に漆黒を纏わせて迎撃行動に入る。


 どれだけ攻撃を避けようが、次々と現れる肉の壁。

 一度間合いに入ってしまえば、逃げ場はない。

 それは純粋な質量の暴力。更に各々の動きまでも卓越しているとあって、厄介極まりない。だから近づかずに戦おうとしていたわけだが――。


「“断罪の聖光エクスキューション・レイ”――!」


 直後、女巨人は飛来した蒼銀の斬撃を防御して体勢を崩し、破片と化した盾に目を見開きながら転げ落ちていく。


「ヴァン、私たちも……!」


 更に飛来するのは黄金の斬撃。

 俺たちとは逆側の崖を崩して、巨人の進軍を抑え込んでいる。


「固定砲台に徹していては、彼らの動きは追いきれない。ヴァンの様に被弾覚悟とはいきませんが、今は……!」


 そうして我らが女皇帝と勇者が戦場に参戦。岸壁を飛び移る様に移動しながら、突出しかけている巨人を次々と蹴落としていく。


「分かった。背後はエルフたちに任せよう。今は目の前の敵を掃討する」


 味方の攻撃にすら気を配らなければならないとあって、この戦場は危険極まりない。

 それでも今は、這い上がろうとしてくる連中を片っ端から叩き落す以外に勝機はないだろう。

 故に足の速い俺たち三人が敵を攪乱(かくらん)して、遠距離からの決め手はエゼルミア陛下に任せる。巨人連中が消耗してくれば、今は無効化状態に近い色とりどりの魔力弾も真価を発揮し始めるはず。

 そのまま持久戦からの兵糧不足に追い込み、最小限の犠牲で防衛成功といきたいところだが――。


「――これは巨人とエルフの戦争。よもや、部外者が紛れ込んでいるとはな。しかし、我が同胞を破ったのも頷ける勇士だ」

「な、に……ッ!?」


 低く響く声音。

 直後、渓谷を戦慄が駆け抜けた。

 その膨大な殺気の前では、味方である巨人族すら震え上がってしまっている。


「オージーン・ウートガルザ。大陸最強の戦士……」


 銀の戦斧が翻ると共に、俺たちの背後から紅桔梗の砲撃が放たれた。


 剛裂一閃。

 進化砲来。


 戦場に現れた王を強襲する進化砲撃は、猛々しい一撃によって斬り払われる。


「――ほう、そちらも王自らの出陣とは……エルフなど軟弱だと思っていたが、存外侮れぬものよな」


 三メートル半ば程の体躯。

 俺たちから見れば、間違いなく巨人。でも単純な大きさだけなら、他の巨人族と比べても特別大きいとは言えない。それこそ、奴よりも巨大な女性巨人すら何人も見受けられる。

 だが、その威圧感は別次元。

 ただ其処(そこ)に佇んでいるというだけで、戦場の全てを支配してしまっている。


「全体指揮のエゼルミア陛下を敵将に()かり切りにはさせられないか……しかし、連中の進軍を食い止めようにも……く、っ!?」


 手数が足りないことを苦々しく思いながら、高度を上げながら黒翼を広げる。

 “慟哭の刃雫マリシャス・ティアーズ”――漆黒の刃を無数に撃ち出し、巨人族の勢いを弱めることに成功するが、オージーンが放った銀の斬撃とエゼルミア陛下の紅桔梗の砲撃が激突。俺の目前で爆炎の華を咲かせた。

 舞い散った余剰魔力は“叛逆眼(カルネージ・リベルタ)”で吸収して力に変えるも、オージーンの予想外の射程距離に内心舌打ちを漏らす。


「ヴァン!?」

「奴を放っておけば、戦線は総崩れ……どうにもスルーってわけにはいかなそうだ」


 適当な投擲とさっきの斬撃を連発されるだけで、この渓谷の地形が変わる。瓦礫の中で正面対決―――なんて状況になれば、こちらに勝ち目はない。

 王の定石(セオリー)通り、ギリギリまで後ろに引っ込んでくれていたらと思わざるを得ないが、こうなってしまえば、こちらから仕掛ける以外に道はないと即断。

 黒翼による推進力を最大にして、唖然とする巨人たちの包囲網を一気に突き破る。

 刃を向けた先にいるのは当然――。


「“天柩穿つ叛逆の剣リベリオン・ヴルガータ”――!」

「“巨人の裂撃(ティタン・ブラスト)”ぉッ!!」


 黒閃、裂撃。

 “レーヴァテイン”による一閃と、奴の白銀の斬撃が交錯。

 破壊の波動が大地を揺るがした。

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