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第106話 呪眼兵器《カースアームズ》

「なんだ、アレ(・・)は……」


 イーサンが槍を振るえば、エゼルミア陛下がばら撒いた弾幕の一部が切り取られた様に消滅。

 それどころか、どう見ても分不相応な膨大な力が奴の槍に纏わり付き、連続刺突でエゼルミア陛下を強襲する。


「それに、この気持ちの悪い感覚……」


 あのエゼルミア陛下が押されていることに驚くのは当然だが、何より異質――というか、“気持ち悪い”。まるで出来の悪い模造品(・・・)でも見せられているかのように――。


「セラフィーナさん!」

雑兵(ぞうひょう)に構っている場合ではありません。あちらに……」

「待てよ、セラティア! どうして俺たちと戦うんだよ!? 仲間じゃねぇのかよ!」

「先に行ってください。どうやら我々の(あずか)り知らぬところで、何かが起こっているらしい」

「うんって言いたいところだけど……どうやら、そういうわけにはいかないみたいだね」


 一方、街の中心部――俺たちの周りには、残された両勢力が集っていた。剣呑な雰囲気を全開にしてこちらを取り囲み、一触即発というか、既にこちらに向かって両サイドから駆け出している。


「テメェら! どきやがれ! そこのゲオルグをブチ殺せねぇだろうがよォ!」

「はァ!? この街を守って来た俺たちを追い出そうとしやがったゴミ虫が! 恩を仇で返したテメェらが悪いんだろうがよォ!」


 正しく迫り来る肉の壁。

 ただミュルク軍の口ぶりからして、レジスタンスや民衆と主張が食い違っている。であれば、真実(・・)を明らかにする為には、両サイドのトップ――つまりゲオルグとイーサン、双方の身柄が必要になるのは自明の理。

 成すべきことは一つだけ。


「次から次へと……本当に……」


 “慟哭の刃雫マリシャス・ティアーズ”――互いの(・・・)大隊が迫り来る左右に向け、黒翼を展開。

 漆黒の刃を無数に撃ち出し、両勢力を死なない程度に一掃する。


「あ、あ、ああっ……!? くそっ!? なんでこんなことをするんだ!?」

「貴方は自分の主観で物事を見過ぎ……いえ、今は邪魔です」

「へぶぅ、っ!?」


 二方向で巻き上がる破壊の波動。

 残るは末端のみ。

 セラは運良く無傷でいるジャックの顔面を蹴り飛ばして跳躍すると、戦域から離脱。激しい魔法が飛び交う主戦場へと降り立つ。


「“断罪の聖光エクスキューション・レイ”――!」


 その直後、地に足を付ける寸前に聖剣で虚空を刻めば、十字を刻む二重斬撃が飛翔。イーサンの全身を()き焦がした。


「――へっ! なんつー威力の魔法だよ。思わず過剰吸収(・・・・)でパンクしかけちまったじゃねぇか! おいッ!!」

「今ので無傷とは……」

「ええ、明らかにおかしい。どうにも遠距離主体では、分が悪いわね」


 だが黒煙の中から無傷のイーサンが姿を現す。

 奴が携えている槍には、その本体が壊れそうなほど膨大な力を纏わりついている


 魔法が効かない。

 魔法攻撃を受けたにもかかわらず、逆に力が高まっている。

 眼球の埋め込まれた槍。


 さっきから俺の全身を苛む違和感の正体が明らかになった瞬間だった。


「アイリス、この男と残りの雑魚は任せる。どうにもキナ臭くなってきたみたいだ」

「分かった。気を付けてね」


 黒翼を用いて飛翔。

 セラたちとイーサンの間へ割り込む様に突撃し、刺突と共に放たれた奴の攻撃を蒼穹の十字光で掻き消した。


「そっちの銀髪の嬢ちゃんはともかく、ようやく役者が揃ったなァ!」

「何を言っている?」

「わざわざ街から出さねぇようにしたんだ! さて、補充補充!」


 一方、イーサンは俺の乱入すら予想外とばかりに嬉々として切りかかって来る。

 最中に紡がれた補充という言葉――それは恐らく、奴自身の思惑が詰め込まれた物。


「やはり、この槍……“叛逆眼(カルネージ・リベルタ)”の力を……!」

「よく気付いたじゃねぇか! 俺様の“呪眼兵器(カースアームズ)”によォ!」


 “呪眼兵器(カースアームズ)”と呼ばれている槍と“デュランダル”が激突。互いに弾かれ合う。


「俺の狙いは、最初から魔眼だけよ! 実験や計画なんてのはどうでもいいが、この力は甘美で……魅力的、だからなァ!」

「魔眼を埋め込み、兵器に転用する。でも、その魔眼は……」

「あぁ、ちょっと術者をブチ殺して、眼だけを頂戴(ちょうだい)した。死体はその辺の山ン中にでも転がってんだろ! まあ、そこら中で殺しまくれるし、魔眼狩りとか言って勝手に手元に入って来るんだからウハウハだぜ!」

「やはり裏で糸を引いている者がいた。人々の不安を陽動するだけではないということね」


 エゼルミア陛下の顔から表情が消える。

 だが、イーサンはそんなことなどお構いなしどころか、むしろこちらの神経を逆撫でする様に口角をつり上げた。


「魔眼……コイツは最高の力だ! だがテメェらは、こんな力を持ったばかりに生まれた時点で世界から弾き出される。気味の悪いテメェらがぶち殺されれば、皆が喜ぶ! あー、可哀そうだ。だから、せめて有益に使ってやらねぇとな! えぇ、おいっ!」

「貴様……ッ!!」


 槍に埋め込まれた瞳では、蒼穹の十字光が輝いている。

 まるで見せつける様な奴の態度を受け、自分でも珍しく語気が荒くなっていくのを感じていた。


「同じ魔眼でも使用者次第で能力の大小が変わる。さて、テメェらのは、どれくらい使えるのかなぁ? 散々使って“叛逆眼(コイツ)”もそろそろガタが来てたところだし、さっさと死ぬか、俺に目を差し出せや! まあ、そっちのねーちゃんたちは、他にも愉しみ様がありそうだけどなァ!!」


 今はただ、怒りのままに刃を向ける。

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