サイドストーリー : ~ モブ視点 その1&その2
前話:塚見 真実(※1)の、話の中に出てくるモブ視点です。
前話では(※☆)と(※★)の表記時に、それぞれ居た人達の話になっています。
ちょっとヲタクな人達なので、その辺の表現が苦手な方は飛ばしてください。
飛ばしてもストーリーの進行上問題ありません。
~・~・~(モブ視点→※☆)~・~・~
渡辺「はあああ~~朝から良いもん見たぁ……」
オフィスに入ってきたのはパンツスーツをバシッと着こなしたちょっと美人めのアラサー女性、渡辺。
自身のデスクにさっき買ってきたコンビニのカフェラテを置く。
山田「センパイ、おはようございます。どうしたんですか?ニヤニヤして」
渡辺「聞いてくれる?山田!あたしさ、K線で通勤してるんだけど」
山田「知ってます」
渡辺「今朝、電車内でエルフと猫と姫がイチャイチャしてた」
山田は飲みかけていたエナジードリンクを口から少しこぼした。
山田「ゲフッ……は?何言ってんすか。社畜極めすぎて遂に幻覚見るようになりました?」
眉間にシワを寄せる山田。それは気持ち悪い物を見る目ではなく、渡辺を心配しているようだ。
渡辺「K線て某高校の生徒も乗るんだけど、ちょっと前から女子専用車両にすっごい綺麗な女子高生の子が乗るようになって!」
山田「へえ?」
渡辺「いつも真面目です~って感じの眼鏡におさげ髪の地味な格好なんだけどさ、もう色素が!薄くて!髪も茶色っぽいし、肌も真っ白だし、目も色が薄くてガラス玉みたいでさ」
山田「はぁ、センパイ鼻息荒いっすよ」
山田の目が、今度こそ気持ち悪い物を見る目になる。
渡辺「そんで背が高くて、折れそうなほど細いのよ。手足も首も長いし小顔で、ファンタジーのエルフみたいなの!あの子ハーフなのかな~?!」
山田「ガン見してんじゃないですか。センパイ、捕まりますよ」
渡辺「女同士だからセーフ!で、その子といっつも一緒にいる子がまた可愛くて!ちょっと化粧濃くてギャル系だけど黒猫みたいなのよ。お胸も結構あるし」
山田「胸見てる時点でアウトっすよ」
渡辺「うるさい!セーフったらセーフ!で、猫ちゃんがエルフを壁ドンして、エルフが真っ赤になって……うぁぁぁ、可愛いぃ……思い出しちゃったぁ」
山田「あ、壊れた」
感極まる様子の渡辺にドン引きの山田。
渡辺「そんでね、そこに姫が乗り込んできて、エルフの三つ編みをほどいてイチャイチャするわけなのよ!」
山田「なるほどわからん。姫?」
渡辺「長い黒髪でね!モデルか芸能人かよってくらい可愛いのよ。あぁ、あの髪を縦ロールにしてあげたい……」
山田「それじゃ姫っていうより、悪役令嬢っすね」
渡辺「うん、何の落ち度もないのに婚約破棄されて、最終的に百合ハピエン迎える純粋系悪役令嬢主人公だね。あれは」
山田「なんでそこに百合をぶっ混むんですか。話が破綻してません?」
渡辺「だって百合だよ?現実に咲き乱れる百合の園を見たんだよ、あたしは!」
頭痛がするのか頭を押さえてため息をつく山田。
山田「はいはい。もう結構語ったでしょ。そろそろ仕事始めないと、また残業っすよ」
渡辺「えー……」
山田「えーじゃなくて。自分、仕事できる所しかセンパイに価値無いと思ってるんで」(ツンッ)
渡辺「おー、何気に凄いディスられたね~w。まあ、百合のお陰で今日はめちゃくちゃ癒されたから頑張れる!」
山田「その意気です!頑張って定時退社して飲みに行きましょ!」(デレッ)
渡辺「いや、行かんけど」
既にモニターに向かっていた渡辺は、山田が思いのほかガックリとしていたのを知らない。
~・~・~(モブ視点→※★)~・~・~
田中「ぐはっ、尊っ!!今日も百合成分有難うございます!!」
佐藤「お~塚見嬢がまた真っ赤になってるぞ。流石は千早様と小笠原嬢」
鈴木「あのエルフみたいな白い肌がピンクに染まって涙目でプルプルしてるの、色気がヤバいよなぁ…」
1年2組の教室の隅で三人の男子が、女子のグループをチラチラと見ながら囁きあっている。
田中「あ、白馬め、また塚見さんに絡もうとしてる。男が百合の聖域に割り込むなよ!」
佐藤「大丈夫。また千早様が罵って追い返してくれてる。……いいなぁ俺も罵られたい……」
鈴木「あいつ、ちょっとイケメンで那紗姫の幼馴染だからって、くそう羨ましい……」
田中「おい、お前ら忘れたのか、我ら三人衆の誓い」
佐藤「ああ、そうだったな。推しはあくまでも推し」
鈴木「我らは尊い彼女らをそっと見守る存在。リア充を羨んだり妬んではならぬ」
田中「……同士よ!お前らこそ永遠の友だ!」
佐藤・鈴木「ああ!!」
三人はガシッと肩を組み合うのだった。
続きます。
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