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ギルトンの悲劇3



 ドルヴァエゴのキャンプ場で、ウェインから膨大な量のオリハルコンを貰ったエバンス。


 彼はさっそく、大好きな貴族令嬢のいるマゼラン王国へと馬車を走らせた。

 運ぶ鉱石が鉱石なだけに、エバンスは大勢の騎士団を引き連れてオリハルコンを守らせていた。


「ウェインさん、貴方は本当に何て素晴らしい人なんだ! 僕はあなたの恩を生涯忘れませんよ!」



 エバンスの馬車と騎士団の一行はすぐに国境を超え、マゼラン王国へと入国した。




◇◇◇




「エバンス殿っ!! 貴方は我国の救世主だ!!」

「い、いえ、そんな大袈裟な……」


 エバンスは今、マゼラン王国の謁見の間にいる。

 そこには国王を初め、大勢の家臣、そしてアンナ王女がエバンスを称えていた。



「まさか、こんな膨大な量のオリハルコンを献上してくれるとは!!」

「い、いえ、それがアンナ王女を想う僕の気持ちですから」

「アンナは素晴らしい人物に惚れられたものだっ!」

「こ、国王陛下、そ、それでは……!?」

「勿論、アンナは貴殿の元に嫁がせよう!」


 エバンスとアンナはマゼラン国王の言葉に歓喜した。

 謁見の間では、大勢の家臣や使用人から祝福の拍手がエバンスとアンナに送られる。


「よし、ではさっそく職人達にオリハルコンの加工をさせよう!」


 国王が手を二度叩くと、別の使用人が現れオリハルコンをどこかへと運んでいった。



「ん? 陛下はさっそく、オリハルコンで婚約指輪を作ってくれるのかな?」


 と思う、世界情勢に疎いエバンスだった。





◇◇◇




 それから1ヶ月後。


 その日帝国領ヴラントでは、ギルトンは兵士からの伝令を心待ちにしていた。


「ギルトン様! 敵襲ですっ! 敵はマゼラン王国です!!」


 ギルトンは敵襲の伝令を聞き、狡猾な笑みを浮かべた。

 彼のすぐ隣では、アデルも同じような笑みを浮かべている。


「くく、ふはははーっ! 待っていたぞこの時を! やはり大雨の日に攻めて来たか」

「読みが完全に当たったわね、ギルトン」

「ふふ、アデル、戦争とはここでやるものだよ!」


 ギルトンは自分の頭を指差し、高らかに笑うのだった。


 ギルトンは勝利を確信し、アデルに口付けをしようとする。

 が、アデルは嫌な予感がしてギルトンに尋ねた。


「ねえ、このパターンっていつも何か悪い事が起きない?」

「ふ、今度ばかりは平気さアデル。何と言っても今回は、重要地点の全てに最新式の銃を装備した銃撃隊が待ち伏せているんだからな! 大雨でも問題ないぞ!」

「流石ギルトンね!」

「ふはははーっ! どこかの田舎ザルとはここの出来が違うのだよ!」


 ギルトンは自分の頭を指差し、高らかに笑うのだった。


 そしてギルトンが、再びアデルに口付けをしようとした時だった。


「ギ、ギルトン様、大変ですっ!」

「……何だ、何事だ!?」

「わ、我が軍の銃撃隊は壊滅しました!!」

「……へ!?」

「騎士団長ボルト様も殺されました! 敵は領地内に次々に攻め込んで来ています!」

「……う、う、嘘……だろ!?」


 ギルトンは頭が真っ白になり、それ以上言葉が出ない。


 代わりにアデルが兵士に詰め寄り、問いただす。


「ど、ど、どういう事よ!? 最新式の銃なんでしょっ!? どうしてその銃撃部隊がすぐにやられるのよ!?」

「そ、それが、マゼラン兵の多くはオリハルコンの武器や防具を身に付けておりまして……」

「……オ、オ、オリハルコンですって!?」

「はいっ! そのオリハルコンの鎧は、銃弾すら跳ね返したとの事です!!」

「そ、そんなバカな……!? オリハルコンの鎧なんて皇帝陛下ただ1人しか持てないほどの希少な物でしょ!? どうしてそんな鎧をマゼラン兵が……!?」



 アデルがショックで膝を落とすと、さらに別の伝令の兵士が走って来た。


「ギルトン様、アデル様、マゼラン兵にこの城の正門をこじ開けられました!」

「な、な、な、何だとおおぉぉおおーっ!!!?」

「ここはもう危険です! すぐに裏門からお逃げくださいっ!!」


 伝令の内容を聞いたアデルは顔面蒼白になり、絶叫しながら部屋を走り出て行く。


「ま、ま、待てアデル! わ、私を置いて行くなああぁぁああーっ!!」


 ギルトンは、必死で逃げていくアデルを追いかけたのだった。



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